« 北斎展 その二 | トップページ | 久隅守景の賀茂競馬 »

2005.12.02

歌川広重の東海道五十三次

231MOA美術館の平常展に、現在、歌川広重の“東海道五十三次”が展示されている。今は前期(12/10まで)の26点で11日から展示替えし、残りの26点がでてくる(24日まで)。

浮世絵の鑑賞を始めた頃、まず揃えたのがMOAから出版された葛飾北斎の“富嶽三十六景”と歌川広重の“東海道五十三次”の図録。今でも、東博のミュージアムショップで売っている。折に触れ、本棚から引っ張り出し、眺めている。

だが、本物をはじめて見たのは他の展覧会で、MOA所蔵には縁がなかった。
今回、やっとここの“東海道五十三次”と対面した。図録ではでてこない微妙な色合
いや細かい筆線を一点々目をかっと開いてみた。MOA自慢の浮世絵版画だけ
あって、いままで観た“東海道五十三次”とは違い、画面状態は極上。海や川、
空の青や山、松の緑、家々の屋根に使われた朱などが鮮やかにでている。

特に色で魅了されたのが“鞠子”の宿の早春の風景。旅人がこれから越えていく
峠の空が薄いピンクで染まっている。しみじみとした情趣が感じられ、肩の力が自然
とぬけてくる。広重の描く山河は日本人の生理感覚にあっている。当時、この東海
道シリーズの人気が沸騰したのは、旅人がすっと絵のなかに入っていけたからで
あろう。広重がすべての宿駅の様子を時間の推移まで入れて、知っていたわけで
はない。描かれた風景画は、朝廷へ駿馬を献上する幕府の行列に加わり、東海道
を京都へと旅したとき、心にやきついた心象風景も加味して構成したものであろう。

だから、ハットする大胆な構図がでてくるのもある。例えば、右の“箱根”。実際の
箱根の山よりはるかに峻険。山越えは東海道の難所のひとつと言われ、旅人にとっ
て辛い厳しい行程だった。この現実感がふくらみ、傾斜のきつい山になったのであろ
うか。この絵には構図の面白さがあるが、それと同じくらいびっくりするのが色使い。
真ん中にある大きな山の海側の絶壁は鮮やかな緑を中心に茶色、青、黄色がモザ
イクのように彩色されており、抽象絵画で味わうような色彩の美しさがある。

北斎の“富嶽三十六景・金谷ノ不二”で様式化された装飾的な波を楽しんだが、
広重の“東海道五十三次・箱根”ではモダンな色彩表現をみた。こういう絵をみると、
二人はやはり凄い浮世絵師だなと思う。

|

« 北斎展 その二 | トップページ | 久隅守景の賀茂競馬 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 歌川広重の東海道五十三次:

« 北斎展 その二 | トップページ | 久隅守景の賀茂競馬 »