俵屋宗達の鹿図
MOA美術館の現在の展示は豪華3点セット。近代日本画と歌川広重の東海道五十三次と琳派作品(すべて所蔵品で,会期は12/24まで)。
11/27に出かけたときは近代日本美術展だけが頭にあり、前日チェックしたHPに琳派作品と東海道五十三次のことが掲載されてなかったので、館に入って、いきなり、尾形光琳や俵屋宗達の絵画、尾形乾山の陶器に会い、びっくりした。前菜が主食になった感じで、夢中に
なって観た。
宗達の立派な掛け軸が6点ある。大きな琳派展でもないかぎり、宗達の作品
をまとめてみる機会はそうないのに、ここでは“どうぞ観て下さい。今回はこんな
作品です”とばかりに飾ってある。描かれてるのは兎、烏、鷺、鴨、軍鶏、そし
て古代中国の武将。墨の濃淡とたらし込みで鳥を生き生きと描いている。鴨図は
逸翁美術館でみたのと同様、頭の部分は黒い。
本阿弥光悦との合作、右の“鹿下絵新古今集和歌巻断簡”も心に残る名作。
これは本阿弥光悦が書を、宗達が絵を描いた作品では人気の高いもの。鹿ば
かり金銀泥で描かれた下絵の上に、“新古今和歌集”から選ばれた秋の歌28
首が散らし書きされている。余白をたっぷりとり、3匹の鹿が宗達画の特徴で
ある円弧をつかって描れている。拙ブログ3/30で取り上げた平家納経・見返し
の鹿と較べると、こちらは輪郭線だけで表現されてるが、その姿態や動作は
似ている。そして、下絵と見事に調和した光悦の装飾的な書が美しい。
この作品はもとは全長22メートルの巻物だったが、第二次大戦後に分断され、
後半部分をシアトル美術館が所蔵し、前半をMOAや五島美などが分蔵している。
シアトル美所蔵品は1994年、名古屋であった琳派展で鑑賞し、大変感動した
覚えがある。宗達の絵と光悦の書が美しく響きあった巻物で一番魅力的なのが、
昨年の琳派展(東近美)にも出品された京博所蔵の“鶴下絵三十六歌仙和
歌巻”(重文)。鶴の群れが海上を飛翔する場面が心を打つ。
会場には尾形光琳の名品、“佐野渡図”、“三布袋図”、“富士流水図”や乾山の
陶器の代表作、“色絵若松椿図枡鉢”、“銹絵染付梅花散文蓋物”もある。ここ
の琳派コレクションは一体どのくらいあるのだろう?毎回、違った作品が飾られ
ており、底知れない。ますますここへ通いたくなった。
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