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2005.11.14

国宝 源氏物語絵巻

214土曜日、名古屋の徳川美術館にでかけ、源氏物語絵巻(国宝)を見てきた。その興奮がまだ冷めやらない。

徳川美では、開館70周年を記念し、10年ぶりに現存する絵巻全点を一堂に公開している(11/12~12/4)。今回は、6年前からスタートした絵巻の科学調査にもとづいて制作された手描きによる復元模写もあわせて展示している。この模写が素晴らしく、言葉にならないくらい感動する。

現在、絵巻は小説、“源氏物語”、54帖のうち19帖しか残ってない。もとは巻物
だったが、絵と詞書に分けられ、額に入れられて保存されている。主に徳川美
術館と東京の五島美術館が所蔵。過去、徳川美の3点、五島美の4点の7点し
かお目にかかってない。五島美は毎年一回、4点全部公開しているが、徳川美の
場合、節目の年でない限り、3点くらいしかでてこない。だから、全点観られるの
を首を長くして待っていたが、やっとその願いが叶えられた。

絵巻物は平安貴族文化の華であるが、源氏物語絵巻はその王朝絵巻の最高傑作。
12世紀前半に描かれたと言われ、よく知られるように、顔は引目鉤鼻(ひきめかぎ
はな)で、屋敷は屋根や壁の一部を取り払った、吹き抜け屋台で表現されている。
現存する絵巻は、物語が光から闇へと大きく転調する第二部(若菜~幻)、第三部
(匂宮~夢浮橋)に集中している。

登場する姫君や女房、男性貴族の面貌は、一線のように引かれた目、くの字状の鼻、
小さな口を特徴とする引目鉤鼻で表現されてるので、みな同じに見えるが、専門家に
よると、光源氏や女房の複雑な心情を表すため、目の線、髪の描き方に変化を
加えているという。だが、素人が褪色により元の色が無くなったり、顔の輪郭線が
薄れている原画からそれを読み取るのは難しい。顔や手の白がよく残ってるのは
3点しかない。また、一部残ってる装束の紋様、几帳の意匠、庭に咲いてる草花から
想像力を働かせて王朝世界をイメージするのはかなりシンドイ。色で興味深かった
のは、女房の装束に使われた柑子色(こうじいろ、やや黄みのオレンジ色)が割合
多く見られたこと。

絵巻を一通りみて、それが物語のどの箇所にあたり、どんな構図、色彩で描かれて
いたかを記憶にとどめ、次の展示コーナーに進むと、日本画の修復を手がけてる
画家が仕上げた復元模写が待っている。どれも素晴らしい出来栄えで、直前にみた
原画が900年の歳月を経て、当時の色彩を取り戻した華麗な彩色絵巻は変っている。
右は復元された“柏木三”。光源氏が心中の苦悩を隠して、実の子でない薫を胸に
抱き、薫の将来を思って歌を詠むところ。原画では源氏の着衣は褪色してくす
んだ紫色のように見えるが、X線写真を分析した結果、白地に銀の紋様をあしらった
直衣だった。女房の黒髪、装束の赤、深い群青も鮮やか。衣装や几帳の華麗な
紋様、御簾のつくりが平安王朝の世界にいざなってくれる。

展示替えで9点しか見れなかったが、蛍光X線、赤外線写真などの最新のデジタル
技術を駆使して、肉眼では分からなかった元の紋様、色を再現した作品をみれるなん
て、これほど幸せなことはない。源氏物語の復元模写プロジェクトに関わられた多
くの方々のご努力に対し、感謝するとともに、高い分析技術とその情報を絵巻に
結実させた画家の卓越した腕に拍手々。なお、この復元模写は、五島美術館でも
来年、2/18~3/26に公開される。

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コメント

いづつやさんは、いつも私の観たいもの観ているんですね
私は源氏物語絵巻のことは分からないのですが、
源氏物語が好きなので絵にしたモノは観たいです
源氏物語好きはこんな記事書いているの(^^;
http://star.ap.teacup.com/aoisora/306.html

投稿: えみ丸 | 2005.11.15 10:34

全く美しい色彩ですね。
溜息物です

投稿: seedsbook | 2005.11.15 15:24

to えみ丸さん
源氏物語絵巻全点を見る機会はそうないので名古屋まで出向きました。
勿論、原画を見れて、感慨深かったのですが、科学調査で明らかになった
紋様や元の色を忠実に再現した模写に魅了されました。今回ほど日本画
に接していて良かったと思ったことはありません。時間が経つのも忘れ
て鑑賞しました。

この復元模写は五島美術館で来年、2/18~3/26、公開されますよ。
展示替えで見られなかった絵も出てきますので、今からわくわくします。

投稿: いづつや | 2005.11.15 19:50

to seedsbookさん
この展覧会に復元模写がでてくるのは前日まで知りませんでした。
このプロジェクトをNHKの番組で知り、関心が深かったのですが、実際に
その復元模写と対面し、大変感動しました。12世紀前半、こんな
美しい絵巻が日本に存在してたんですね。

華麗な色彩、衣装や調度品の精緻な紋様、もう素晴らしいです。まさに
平安貴族文化を実感できます。海外でもこれを公開したら、日本美術ファン
に喜ばれるのではないでしょうか。来年、2月、東京にやってきます。

投稿: いづつや | 2005.11.15 20:20

東洋美術ファンには絶対に受けるでしょう。
ケルンの東洋美術館あたりで企画があるといいんですが。。。。

来年の2月に東京ですか。。。いつまでやっているんでしょうね?
私が来年日本に行く予定は5月中旬なので、間に合わないのでしょうね。。。

投稿: seedsbook | 2005.11.16 02:22

to seedsbookさん
復元模写の色合い、精緻な描写をみてますと、seedsbookさんもお気に
入りのランブール兄弟作の優雅な写本画、“ベリー公のいとも豪華なる
時禱書”を連想します。復元模写の絵巻は来年、2/18~3/26、
東京の五島美術館に巡回します。

投稿: いづつや | 2005.11.16 12:19

こんばんは.

いづつやさんは行かれるのではないかと思っていました.

模写も良さそうですね.オリジナルと一緒にまとめて見ることができる機会は貴重かもしれません.

明日から出張で岡山に行きます.帰りに名古屋で1泊して徳川美術館に寄ってきます.(記事を拝見して見たくなりました!)

投稿: おけはざま | 2005.11.17 00:15

to おけはざまさん
源氏物語絵巻は大事な宝なので、普段はなかなか出てきませんね。
徳川美術館のは2点か3点しか出なかったように記憶してます。開館70
周年というので、盟友五島美術館の4点もあわせて観れるのですから、
絶好の機会です。10年先は長いです。原画、復元模写共々お楽し
み下さい。

投稿: いづつや | 2005.11.17 17:54

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