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2005.11.02

六道絵

207先週の新日曜美術館で現在、京都国立博物館で開催されている“最澄と天台の国宝展”(10/8~11/20)を紹介していた。

京都行きはここの平常展に展示される知恩院所蔵の“阿弥陀二十五菩薩来迎図”(国宝)を観ることが主目的で、企画展の方はお目当ての美術品、2,3点だけをしっかり見ようという腹づもりだった。この展覧会は来年、3/28~5/7、東博でも見られるので、今回は軽く目を
慣らす程度で済まし、沢山でている作品の数々はそのときじっくり鑑賞しようという
のが2ヶ月前考えたトータルプランだった。

ただ、一点気になることがあって、10月中に訪問しておきたかった。理由は右の
“六道絵”(ろくどうえ)の展示が10月で終了するため。六道絵(国宝)は全部で
15幅あり、一堂に展示するのは32年ぶりのことらしい。過去、一部の地獄絵を
見たことはあるが、全部を見る機会はこれを逃すともうずっと先になる。日本美術
の展覧会では別の会場に巡回する際、展示内容が変ることがよくある。確認し
てないが、東博で六道絵が同じ期間そして全部展示されるかどうかわからない。
期間は短くても構わないが、全点でないときは悔いが残る。これを所蔵しているの
は滋賀の聖衆来迎寺なので、京博だけの特別出品ということも充分考えられる。
で、2週間前に出かけ、保険をかけておいた。

六道絵は六道(地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人、天)を輪廻転生し、苦悩や悲惨、
恐怖を存分に味わってる人間たちの姿を描いた絵。源信(げんしん)が著した“往生
要集”(985年)の中で描写されてる六道の情景を人々がイメージし易いように
ビジュアル化したものである。源信の唱えた分かりやすいキャッチフレーズ、“厭離
穢土、欣求浄土(おんりえど、ごんぐじょうど)。地獄を避け、浄土へ行こう”を実現
するため、極楽との対極にある地獄の実相を見せることで救済をはかろうとした。

浄土を渇望させるには地獄は怖ければ怖いほうがいい。地獄の番人、鬼にのこぎ
りで体を真っ二つに切られたり(黒縄地獄)、口を無理やり開けさせられて、火で
焼かれた丸い鉄の玉を入れられたり(阿鼻地獄)、する残酷なシーンが緻密に描か
れている。絵とはいえあまり長くはみていられないのが右の“人道不浄相”(部分)。
野辺に捨てられた美しい女性の腐乱した死体がカラスや犬、狼らに食いちぎられ、
その下には骨がある。凄惨な光景である。上のほうにも死体が転がっている。
現世のはかなさをあらわすのにこれ以上の絵はない。

赤い炎が何箇所にも描かれ、罪人が鬼から様々な拷問を受けているお馴染みの
地獄絵が一番のお目当てなので、細かいところまで見ようとするのだが、暗い色調
とガラスケースの向こうにあるため、なかなか輪郭がつかめない。東博では単眼鏡
を買って見る事に決めた。この絵はもう一回じっくりみようと思う。

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コメント

こんばんは.

秋の旅行で京博・奈良博にいってきました.

六道絵は単眼鏡で眺めました.細密に描かれた残酷な様子に見入ってしまいました.怖いもの見たさってありますよね.

罪人(衆生)の中には卑屈な表情の男もいたりして,妙にリアルでした.地獄コワイです.

投稿: おけはざま | 2005.11.03 00:05

成る程、恐ければ恐いほどに良いわけですね。
ヨーロッパの中世宗教絵画、祭壇画にも地獄の絵が沢山ありますが、恐いのにどこか、ユーモラスなところも多いように思えます。
そのあたりの事まだ、あまり良く調べていないのですが。。。少し掘り下げると面白いでしょうね。
しかし、六道絵はいかにも恐そうです。

投稿: seedsbook | 2005.11.03 04:22

to おけはざまさん
秋の京都、奈良で美術鑑賞三昧とは羨ましいですね。京博の“最澄と
天台の国宝展”はビッグな企画展でしたね。一連の寺・宗教シリーズも
これで最後でしょうか。建仁寺、空海と高野山、建長寺、日蓮、南禅寺、
そして最澄と天台。

仏画や彫刻、工芸品の国宝クラスが沢山でてきますので、見逃せま
せん。今回は目慣らしといってもきっちりみましたが、関心は六道絵
と不動明王像(黄不動)の2点でした。ともに大満足でした。それと根津
美術館所蔵の曼荼羅図が素晴らしかったですね。これまで曼荼羅図を
何点も見てきましたが、一番感動した曼荼羅かもしれません。

六道絵の地獄絵は予想以上に怖くて迫力がありましたね。今回ほど
単眼鏡が必要と感じたことはありません。おけはざまさんは用意がいい
ですね。この差は大きいです。阿鼻地獄など炎が燃えさかってる地獄絵を
隅から隅まで見てやろうと、眼をかっと開いたのですが、細部をとらえ
きれません。卑屈な表情をした男までとても追っかけられませんでし
た。東博で単眼鏡を手に挑戦します。

怖いもの見たさがあるばっかりにこの地獄絵が出てくるのを
ひたすら待ってました。15幅全部、東京でみられるかわからないので
ここで押さえておきました。日本美術はおけはざまさんも経験があると
思いますが、展示の機会が少ないですから、金と時間がかかるのは
仕方がないですね。

投稿: いづつや | 2005.11.03 18:01

to seedsbookさん
西洋画における天国と地獄の絵、マニエリスム、グロテスク紋様、ボス
やアンチンボルドの絵などにはすごく関心があります。ギリシャ神話が
好きなので怪物たちには目が慣れてるのと、ミケランジェロが描い
た“最後の審判”、ダンテの“神曲”の影響が大きいと思います。

同じように日本の地獄絵にも興味があります。ボスの“快楽の園”が
描かれたのは16世紀はじめですが、地獄絵はそれより400年くらい
まえの鎌倉時代のものですから、日本の怖い絵には長い伝統があります。

国宝の地獄絵はほとんど見たのですが、“六道絵”が最後に残ってました。
炎が立ち上がるなか、鬼からいじめられてる罪人の悲鳴が聞こえ
てきそうです。人道不浄相も怖い絵です。美人でも死んでしまえば
亡骸は野辺に捨てられ、犬やカラスに食われてしまうのですから、
はかないものです。上には体が倍くらいに膨れた死体が転がってます。
長くは直視できない絵です。

投稿: いづつや | 2005.11.03 19:58

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