« 伊藤若冲の鸚鵡図 | トップページ | 円山応挙の雲龍図 »

2005.11.17

北斎展 HOKUSAI

217東博で開催中の北斎展のチラシを観ると横文字、HOKUSAIがアイキャッチとして使われている。

昨年、東近美であった琳派展でもRIMPAを前面に出していた。日本に居る外国人にも来てもらおうという狙いからであろうが、この二つには人気の点で大きな差がある。

混雑する展覧会には慣れているが、外人がこんなに大勢いる展覧会ははじめ
の経験。後ろではフランス語をしゃべる若い女性がいると思えば、隣ではドイツ語
が飛び交っている。さらには、日本人通訳が英語で作品を説明している光景を
何箇所でもみる。1999年、米国の雑誌“ライフ”が行った“この1000年間
で、もっとも重要な業績を残した世界の人物はだれか?”というアンケートに、
日本人では葛飾北斎がただ一人ランクインしたというので当時、話題になった。

だが、美術を少しかじってる外国人なら、浮世絵が印象派に大きな影響を与えた
ということは知ってるだろうが、普通の人にHOKUSAIがそれほどポピュラーと
いうのは正直言ってピントこなかった。今回、この会場にいる一般の外国人の多
さを見て、納得した。われわれ日本人がピカソやルノワール、ゴッホ、モネに
親しんでいるように、アメリカ人、フランス人もHOKUSAIが好きなのである。

日本人も外人もしっかり作品を見ているので、列がなかなか前に進まない。
初日の10/25に行ったときは、一時間もあればざっと見れるだろうと気楽な気持ち
で入場したら、もうびっちり混んでいた。そして、3期がはじまった11/8に再度、
足を運んだ時は、混雑度は更に増し、初回、充分観れなかったので丁寧にみた
こともあるが、全点観終わるのに3時間かかった。

北斎の大回顧展は2度目。1993年、東武美術館が主催した北斎展でも若い頃
から90歳の晩年までの作品が沢山出品された。所蔵する美術館は異なるケース
はあるが、作品は今回と80%くらい同じものが出ていた。この時の関心は富嶽
三十六景などの代表的な版画にあり、肉筆画のほうはさらっと観た感じだったので、
今回はだんだん良さがわかってきた肉筆画の名品に狙いを定めてじっくりみた。

一番みたかったのは1、2期にでた“潮干狩図”(重文)。近景、中景に潮干狩りを
する子供、髪に白い手ぬぐいを巻いて忙しく働く女たちを描いている。遠くにいる人物
をかなり小さく描き、遠近感のある広い空間をつくっている。海に浮かぶ舟の先に
は白い富士が見える。期待通りの傑作。歌麿の風景画プラス美人画と同じ感動を
味わった。肉筆画で非常に驚いた作品が右の“鯉図”(展示は12/4まで)。

河の水の流れがかなりシュールに表現されている。マグリッドや円山応挙の“鯉の滝
のぼり”(拙ブログ5/14)と感じが似ている。よくみると、左の鯉は水草の間を泳いでいるが、右の鯉では向こう側に水草がある。使われてる色は水草の緑、鯉の目の藍以外は墨の濃淡だけ。河をデフォルメし、水面に頭を出したり、またもぐったりする鯉と亀の動きを見事に描いている。隣にいた若い女性が“すごいねー”と興奮していたが、心の中で200%同調していた。

版画の見所はやはり富嶽三十六景。1995年、名古屋であったメトロポリタン美
浮世絵名品展にでてた“神奈川沖浪裏”(展示は3期まで、11/13で終了)にまた会
えた。これは図録の表紙にも使われており、画面状態の点で、世界で一二を争う
名品と言われている。北斎の画業を世界中から集めた質の高い作品でレビューでき
るまたとない機会。会期が終わるまで北斎に集中したい。最後の6期(11/29~
12/4)だけに出品されるMOA所蔵の“二美人図”(重文)をみたいので、もう一回
上野に出かけるつもり。

|

« 伊藤若冲の鸚鵡図 | トップページ | 円山応挙の雲龍図 »

コメント

昔からシッカリ観ているんですね・・
私は今回北斎をみて、今まで浮世絵に関心持たなかったこと後悔しています
こんな凄いもの日本人が発信しているのに知らなかったとは・・

「潮干狩図」印象的でした 笊の中の貝まで描き込んでいるのに、
ただ細かい丁寧と言う絵にならないのに驚きました 
あと「鵜飼図」に惹かれました 川の風や水の匂いを感じるの

今週また行くので、鯉図しっかり見てきます(^^)

投稿: えみ丸 | 2005.11.19 10:26

toえみ丸さん
北斎展は質、数、これまでで最高の回顧展でしょう。93年のときも
凄かったですが、今回はギメとかメトロポリタン、ボストンから初摺り
の名品がでてますから、これをじっくり観たら北斎はもう卒業しても
いいくらいです。代表作で残ってる大物は小布施にある天井画くらい
でしょうか。

鵜飼図は熱海のMOAが持ってる肉筆画ですが、魚を追っかける鵜の
スピード感に驚きますね。ここが所蔵してる“二美人図”(重文)は
全作品で一番展示期間が短いです。着物の柄、色彩が鮮やかだと
思います。開幕前から、狙いの作品は“潮干狩図”と“二美人図”に決
めてました。もうすぐ二美人図にも会えます。

鯉図と滝に鯉、游亀の3点は同じ調子の絵ですね。勝手にシュール
な絵と思ってるのです。マグリッドに似たような絵があるのですが、
マグリッドが応挙や北斎の絵を本かなんかで観たのかもしれないとも
推察してます。なんの証拠もありませんが。

投稿: いづつや | 2005.11.19 19:17

仕事で東京に行く予定があり、最終日に滑り込めそうですが、おそらく激混みなんでしょうね。じっくり見えるかどうか・・・それでも行く価値はあるでしょうか?ちょっと迷っています。

投稿: リセ | 2005.11.19 22:02

いづつやさん、こんばんは。

いやはや、この北斎展、凄まじい充実度を誇っていましたよね。
私はこれだけまとまって見たのが初めてだったのですが、
ともかくひたすら圧倒されました。
浮世絵も刷りの良いものがあり、
特に前期に出ていたメトの神奈川浪には驚かされましたが、
晩年の肉筆画もスゴかったですよね。
混んでいたのも納得です。

投稿: はろるど | 2005.11.19 22:34

to リセさん
北斎展には行きたいけど、あの混雑だと見たいものがしっかり見れな
いのではというのが、りせさんの心の内でしょうか。もし、行かれるなら
効率的な回り方をお教えいたします。

作戦のまず一は、北斎の制作時期で1から4期までのコーナーは後に
して、5期の為一期、6期の卍期からみはじめる。北斎の版画はは
ずせませんし、やはり5期がハイライトです。富嶽三十六景、滝廻り、
名橋、千絵の海、琉球、魚、花鳥、百物語、貝合、馬尽など(No.431の
花鳥画賛歌合はボストン美から初出の作品)。6期は肉筆画が多い
です。ここも見所一杯。

5、6期のコーナーあたりにくると皆、見るのに疲れて、少し列があいてきま
すから、そこをさっと並んで見られるといいと思います。1~4期までは列の
スピードは遅いですから時間を食います(初日の経験で)。

作戦の二。混んでる1~4期の作品についてですが、ご参考に、
私の好みですが、会期の1、2、3に見て気に入ったもので6、にも出品さ
れてるもの、および4、5、6の期待作品を挙げときます。My北斎なので、
これにこだわらずに、時間を有効に使って鑑賞して下さいね。

No.3、22、24、35~44、48、67、68、71、72、74、116、117、
118、122、127、136、140、151、159、160(重文)、170、174,
175、182、201、202、209、217、226~240(北斎漫画)、242、
248、249。

この北斎展を見たらもう北斎通になれます。浮世絵コレクションで名の
通った国内と海外の美術館から超一級の作品が集まっており、北斎の
代表作のほとんどをカバーしてますから。見る側の体力で通になれる
かが決まります。頑張って楽しんで下さい。

投稿: いづつや | 2005.11.20 11:58

to はろるどさん
この北斎展、東博の威信をかけてHOKUSAIコレクションで定評のあるギメ、
メトロポリタン、ボストン、シカゴ、ベルリンなどから質のいい作品を
集めてきてます。版画、肉筆の代表作のほとんどが出ているのではな
いでしょうか。これで北斎は済みにするつもりで気合を入れてみてます。

版画では、メトロポリタンやギメの所蔵する超一級の富嶽三十六景の
神奈川沖浪裏や凱風快晴がありますし、シリーズものが揃ってるの
が有難いところです。過去一部をみる機会がありましたが、全部は
なかなか観れません。例えば、千絵の海、琉球八景、百物語、元禄
歌仙貝合、馬尽、花鳥など。

肉筆画では、肉筆では有名な国内のMOAや氏家コレクション(鎌倉国宝館、
年一回公開)、大英博物館などから代表作の大半が並んでいます。中には
これも出てきたのというのもあります。03年の大日蓮展(東博)にでてた
“七面大明神応現図”やなかなか出品されない三の丸尚蔵館の“西瓜図”です。
とにかく、これはという作品は全部持ってきているという感じです。

大混雑で観るのに体力が要りますが、名品を前にすると足の疲れも吹っ飛び
ます。29日、MOAの“二美人図”に会いにいきます。

投稿: いづつや | 2005.11.20 18:50

いづつやさんこんばんは。
夜間開館利用で本日見てきました。
いづつやさんは三時間ですか、僕は二時間で観終えました。
「本邦初公開」のカラスの絵やらカタログでしか確認できなかった作品が登場するなどなかなかですよね。
僕は展示144の古ぼけた傷みの激しい大きな絵馬と、展示124の光琳を思わせる梅が珍しかったです。
あと拙ブログへリンクありがとうございます、近日中にこちらからもリンクさせていただきますね。

投稿: oki | 2005.11.25 23:51

to okiさん
こんばんは。夜間開館は少しすいてるようですね。今回は本邦初公開
というのがいくつもありますね。東博はかなり気合が入ってます。
絵馬はちょっと状態が悪いですが、魅力的な絵ですね。梅の絵は
大英博物館の所蔵です。品があります。今回、分かったのですが、
シュールなのはギメとか大英博物館など海外の美術館が所蔵してます。
目の付け所がいいです。ギメの鯉の絵なんか驚きます。

投稿: いづつや | 2005.11.26 22:37

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 北斎展 HOKUSAI:

» 「北斎展」 東京国立博物館 11/3 [はろるど・わーど]
東京国立博物館(台東区上野公園) 「北斎展」 10/25〜12/4 もはやこれ以上望むことが許されないほど、質量共に極めて充実した、葛飾北斎(1760-1849)の大回顧展です。展示作品の数は、会期全体を通すと計500点。メトロポリタン美術館やアムステルダム国立美術館など、欧米からも多数集められた品々は見応え満点です。まさに「史上最強の北斎展」と呼んで良いでしょう。 会場は非常に混雑していて、作品の前に立つのもままならないほどでした。一点一点... [続きを読む]

受信: 2005.11.19 22:35

« 伊藤若冲の鸚鵡図 | トップページ | 円山応挙の雲龍図 »