« 松井康成展 | トップページ | 佐伯祐三展 »

2005.10.21

板谷波山のアールヌーボー

195茨城県陶芸美術館で松井康成展を鑑賞したあと、平常展にも回ってみた。すると、驚いたことに板谷波山の作品がなんと16点も飾ってあった。

一箇所でこんなに多くの板谷波山の陶芸を見たのは、01年、出光美術館・門司館であった“板谷波山展”以来。

大正から昭和にかけて活躍した陶芸家、板谷波山の生まれたところが、茨城の下館なので、県が誇る偉大な芸術家の
名品を、笠間焼の土地にある陶芸専門館が沢山所蔵していても不思議ではない。
笠間にある寺の住職を30歳の頃からつとめ、境内に窯をもっていた松井康成と
ともに、板谷波山の作品には広いスペースが割かれている。

板谷独特の、あのもやのような淡い光沢をした葆光彩磁(ほこうさいじ)の作品
も3点ある。これらをみてるうちに門司で、パステルカラー調の色彩の柔らかい
作品に接したとき味わった感動がリフレインされた。16点のうち、ハッとする意匠の
ものがあった。それは、はじめてみる草花のデザインを特徴とするアールヌーボー
に想を得て作陶した花瓶。板谷波山は若い頃、こんな斬新なデザインの作品を手
がけていたとは知らなかった。

ひとつの関心がいろいろ飛び跳ね、また別の情報とつながることがある。この板谷
とアールヌーボーとの関連を知ったことが、現在、東近美・工芸館で開催中の“日本
のアール・ヌーボー展”(11/27まで)を見る動機付けになった。この展覧会のこ
とは知っていたが、出かけようという気がまったくなかったのに、笠間にあった板谷
波山のアールヌーボー風の作品が思わぬ連鎖を生み、別のヴァリエーションに引き
会わせてくれた。笠間稲荷に参拝したのがよかったのかもしれない。

花瓶が6点でている。どれも斬新な意匠で、吸い込まれるような魅力がある。たまね
ぎの形をしたもの、コバルトブルーが鮮やかな地に尾っぽのやけに長い金魚や
笹が描かれたもの、右の葆光彩磁のチューリップ文が特に目を惹く。波山は大正
初期、いろいろ試行錯誤を重ねた結果、もやがかかったような半透明の光沢と淡く
高雅な色彩を生み出す釉薬をつくりだすことに成功する。この釉薬は葆光釉と
名づけられた。葆光とは光を包み隠すという意味。

釉下彩の葆光彩磁が世にでて、板谷の評価は一気に高まった。そして、これまで
職人技とみられていた陶芸が板谷波山により芸術品にまで高められた。その
葆光彩磁の最高傑作と言われる作品、“葆光彩磁珍花文花瓶”(重文)が今、所有
する泉屋博古館・分館で開かれている“近代日本画展”(拙ブログ10/1)にでて
いる(11/6まで)。松井康成の作品を見ることができ、、板谷波山についても
理解が深まった。得るものの多かった笠間美術巡りドライブであった。

|

« 松井康成展 | トップページ | 佐伯祐三展 »

コメント

こんばんは。

波山は私も出光美術館の展覧会に行って、そ
の美しい色合いに感激した記憶があります。

先日、加守田章二展にも行ったのですが、陶
磁器といっても様々な表現の仕方があるので
すね...

# この夏、東京都庭園美術館で観た八木
# 一夫展でも驚いたのですが...

投稿: lysander | 2005.10.22 00:36

to lysanderさん
こんにちは。今年はビッグネームの陶芸家の当たり年で、喜んでいます。
作家の名前なんてどうでもいいんだという、民芸派の河井寛次郎や
濱田庄司のような陶芸家もおれば、やきもの師にはなりたくなくて、
世界の陶芸界で認められるような芸術品をめざし、世界に類をみない
葆光彩磁を生み出した板谷波山もいます。

日本画と同様、伝統的な色絵や青磁があったり、現代感覚の斬新な
かたちや色彩をみせる作品があったりで、奥が深く、面白いです。
今は、若手の新進作家の陶芸にも関心を寄せています。これらはもう現代
アートですね。でも、絵画よりはずっと作品に入っていけます。食わず
嫌いにあまりならないのが不思議です。

投稿: いづつや | 2005.10.22 14:57

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 板谷波山のアールヌーボー:

« 松井康成展 | トップページ | 佐伯祐三展 »