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2005.10.11

歌麿の娘日時計・巳ノ刻

269今月の25日から、東博で期待の“北斎展”がはじまるが、浮世絵師のビッグネーム、北斎、写楽、広重、春信、国芳の回顧展はこれまで見逃さず、観てきた。

だが、歌麿だけは大きな展覧会に出くわさなかった。その理由が先頃訪問した千葉市美術館でわかった。ここが10年前、開館記念で大規模な歌麿展を開催していたのである。

そのときの図録をぱらぱらめくると、大英博物館などから画集に必ず掲載されてる代表作などがずらっとでていた。これくらいのものをやると、歌麿展は当分、間隔があくのが普通だろう。この頃、東京を仕事で離れていたので、時の巡り合わせが悪かったと自分を慰めるほかない。

で、今はせっせと東博の浮世絵コーナーに通い、出品される歌麿の美人画を楽し
んでいる。ここが歌麿の浮世絵をどの位所蔵しているのかわからないが、毎回、
3、4点、質のいい絵が出てくる。昨年、4月には代表作の一つ、“婦人相学十躰 
浮気之相”(重文)を見たし、つい最近は、3枚続きの素晴らしい美人画プラス風景画
にも出会った。

今は、長年追い求めていた右の“娘日時計 巳の刻”(重文)が展示されている。
表慶館の“伊万里、京焼展”を観た後、はやる気持ちを抑えて、浮世絵コーナーに急い
だ。“娘日時計”シリーズは、江戸の女の日常生活を二時間(一刻)毎に描いたもの。
現在、辰ノ刻(午前8時)、巳ノ刻(10時)、午ノ刻、未ノ刻、申ノ刻(午後4時)の5点の
存在が確認されている。今年はこのシリーズに縁があり、新春、太田記念館で
“辰ノ刻”と“午ノ刻”を見た。

娘日時計の見所は輪郭線が無い女の顔。もともと、浮世絵版画は線を主体と
した絵画表現であるが、歌麿は女の柔らかい肉感を出そうと、こんな実験をしている。
この“巳ノ刻”では顔、唇の墨線だけでなく、鼻の線まで消している。他の美人画
には見られないこの描き方がみたくて、この絵に執着してきた。消えた墨の線は、
空摺りにして、白い紙の地を浮かび上がらせている。

浮世絵に親しむようになって間もない頃は、歌麿の美人画はいつもお同じ顔だなあと
思っていた。その後、いろんなタイプの美人画をじっくり見てみると、歌麿が女性の感情
や肉体的な特徴を表現しようといろいろ工夫しているのが分かってきた。歌麿のその
表現力の高さを見せつけられたのが、昨年訪れた松江のティファニー庭園美術館に
飾ってあった“歌撰恋之部・物思恋”。眉をそった既婚女性が昔の恋を思う、もの憂い
心理状態を見事に表現していた。この凄さは図録ではわからない。

喜多川歌麿とのつきあいはまだまだ終わらない。そのうちどこかの美術館がまた大
回顧展を企画してくれるだろうから、楽しみに待っていよう。なお、この絵の展示は
10/30まで。

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