« 堂本印象の襖絵 | トップページ | シュヴァンクマイエル展 »

2005.10.30

川端龍子の屏風絵

204今年開催される日本画の展覧会で、村上華岳、小林古径とともに注目していた“川端龍子展”が、29日から江戸東京博物館ではじまった。

1月、エミール・ガレ展を見にはじめてこの博物館へ足を運んだとき、建物の大きさに驚いたが、地下の展示場に飾ってある川端龍子の絵も他の画家のものとは比べものにならないほどデカイ。

大田区にある龍子記念館を訪ね、大きな絵に目が慣れてくると、龍子の作品
に限って言えば、普通サイズの絵ではなにか物足りず、大作でないと龍子の絵
を見た気がしなくなる。その点、この展覧会は申し分ない。龍子記念館や山種美など
から出品された大画面の絵が何点も所狭しと並べられている。絵を一部のパトロン
や美術愛好家が部屋で鑑賞するために制作するのでなく、一般の人が展示会場
で見て楽しめるようにしようという新しい考え(これを会場芸術主義という)から描かれ
た大きな絵が、このくらいあると圧倒される。また、出展作の質も1997年にあった
大回顧展と同じくらい高いので、次第に気分がハイになっていく。

中でも惹きつけられるのは“龍安泉石”、“鳴門”、“潮騒”、右の“草の実”、“新樹の
曲”、“南飛図”、“源義経(ジンギスカン)”、“霊泉由来”。前回の展覧会では展示
替えで見れなかった“鳴門”はお目当ての作品。所蔵する山種美でも大作なので、
なかなか展示の機会が無い。ようやく見れた。拙ブログ9/7に載せた“潮騒”と
よく似た作品で、海の深い青といくつも発生した渦のまわりにできる白い波頭が目に
とびこんでくる。躍動感あふれる渦潮の流れに合わせるように左端に一羽の海鳥が飛
んでいる。龍子は実際に鳴門の渦潮を見て、そのイメージをもとに描いたのではない
が、ダイナミックな渦潮の様子を見事に表現している。

“草の実”も是非見たかった絵。昨年の琳派展にでた東近美の“草炎”と構図は
ほとんど同じ。紺地に金泥で細部まで丹念に描かれた様々の秋草が浮かび上がって
いる。江戸琳派、酒井抱一の“夏秋草図屏風”にみる装飾美とはまた異なる、能の
幽艶な世界を感じさせる作品である。この画家の想像力の豊かさと筆力は尋常で
はない。

それをよく表しているのが“南飛図”。群雁の飛ぶ光景をその真上から見て、描いて
いる。この視点は普通の人にはなかなか思いつかない。最初、この絵を見たとき、意表
をつく構図に声がでなかった。龍子の頭の中で、視点と構図がぐるぐる回ってるの
だろう。この絵をチラシに使ったのは来場者を集めるのに効果的だと思う。川端龍子
を知らない人でも、これをみて興味を抱く人がきっといるはず。

なお、会期は12/11まで。このあと、二箇所を巡回する。06/1/2~2/19:茨城県
天心記念五浦美術館、4/11~5/21:滋賀県立近代美術館。東京に出品され
ない作品が五浦美にでてくるので、来年、また出かける予定にしている。

|

« 堂本印象の襖絵 | トップページ | シュヴァンクマイエル展 »

コメント

今日行ってきました、「会場芸術」の世界をたんのうできますね。
僕には彼の南洋諸島への旅行が面白かったです。
横山大観へのオマージュ「逆説 生々流転」にも南洋の記憶が反映されていますが、彼にとってかなり重いものだったのではと。

投稿: oki | 2005.11.04 23:41

to okiさん
川端龍子が南方旅行の思い出を描いた、“椰子の薄火”がとても気に
入りました。ゴーギャンが描くタヒチの人々とは画風が異なりますが、
二人の絵心は変らないなと考えながら見てました。台風の絵、
“逆転 正々流転”もいいですね。こんな絵を思いつくのですから、
発想の幅が広いです。

龍子記念館でも今、いい大作がでてます。“真如親王”に感動しました。
図録では青を拾っていませんが、実物の海の青が凄いです。色彩の
輝きに惚れ惚れしました。作品は5点しかありませんが、江戸東京博
の龍子展に負けない名品が揃ってます。ご参考までに。

龍子展の図録が秀逸ですね。実物の色をこんなに拾ってる図録は久ぶり
です。ですから、頻繁に頁をめくって、感動を再生してます。初日に
図録が間に合わないという醜態を演じましたが、いい出来上がりで館の悪い
イメージが帳消しになりました。

投稿: いづつや | 2005.11.05 17:53

こんばんは。
私もチラシにつられて?!
行ってきたうちのひとりです。
効果的な作品ですね。
この屏風たてておがみたいものです。

投稿: Tak | 2005.12.05 23:04

to Takさん
龍子展、初日(10/29)に出かけたのですが、この美術館はなんと
図録がまだ出来てないという醜態を演じてくれました。3日後に手に
入れましたが、長いこと展覧会に行ってますが、こんなことはじめてです。

また、図録のなかの“南飛図”の写真が間違ってまして、訂正した別刷り
のものを貼ってました。チラシ、両国駅の前にある看板も最初は間違った
のが堂々と出てたんです。11/29にまた行った時は看板は直ってましたが。

呆れ果てましたが、これを帳消しにするいいことがありました。
今回の図録がよく色を再現していて絶品なんです。これまでのベスト
と言っていいくらいの出来なので、鑑賞後は毎日、これを眺めてました。

龍子の大作を定期的にみるのは美術鑑賞の一つになってきました。
この画家は最初洋画から出発しましたので、画才に幅があります。
何でも描けちゃうところが凄いです。琳派風のきっちりした絵も描くし、
潮騒のように輪郭をざあーととって臨場感あふれる作品に仕上げること
もできます。この画家に惚れちゃいました。“草の実”は幻夢的な絵ですね。
気に入ってます。

投稿: いづつや | 2005.12.06 13:15

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 川端龍子の屏風絵:

» 「川端龍子展」 [弐代目・青い日記帳]
江戸東京博物館で開催中の 「生誕120年 川端龍子」展に行って来ました。 告白します。川端龍子のことを「りゅうし」でなく「たつこ」とよんで 勝手に女性画家さん[:女:]だと思っていた頃がありました。[:たらーっ:] 女の方にしては随分大胆な絵を描くんだなーーと、ひとり感心していました。 こういう思い込みって結構あります。実は。。。悪い癖です。 ほどなくして龍子が「りゅうし」で男性だと分かったときは 自分の絵を観る目がいかにいい加減なものか白日の下に晒された思いでした... [続きを読む]

受信: 2005.12.05 23:02

« 堂本印象の襖絵 | トップページ | シュヴァンクマイエル展 »