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2005.10.25

マティスの金魚

199開催を待ち望んでいたプーシキン美術館展を見てきた。今年、日本で開催される西洋画の展覧会では、デュシャン展、ゴッホ展とならぶビッグイベントである。

初日の状況をみると、かなり混んでいたので、これは大変なことになりそうだと、週末は避けて、上野の東京都美術館に足を運んだ。10時に入館したのがやはり正解だった。見終わって出るころには、沢山の人がチケットを買い
求めていた。このシチューキン・モロゾフコレクションの質が高いことを皆、知って
おり、会期中、相当数の来場者があるのではなかろうか。

ロシア・モスクワにあるプーシキン美術館所蔵の作品を1990年、Bunkamuraで
あった展覧会で一度見た。実は今回の出品作中9点がこのときもでていた。チラシ
などに載ってるピカソの“アルルカンと女友達”やゴッホの“刑務所の中庭”はよく
覚えているので、本展の狙いは初めからルノワール、ゴーギャン、マティスに
決めていた。果たしてそれらがどのくらいのものか。この思いを胸に秘めながら、
開幕までの時を過ごしたといっても過言ではない。印象派、マティス、ピカソのコレ
クションではバーンズ、コートールドとならぶシチューキン・モロゾフが所蔵してたも
のだから、当然、観る側の期待値は高くなる。

入っていきなり、ルノワールの“ムーラン・ド・ラ・ギャレットの庭で”にご対面。オルセー
にある“ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会”と比べると登場する人物は少ないが、
同じ調子の絵で、ルノワールの一級品に間違いない。チラシから受ける印象は
ちょっとタッチが粗いのかなと思っていたが、立姿の女性が着ている青い縦縞入りの
ピンクの衣装が輝いている。その隣にある“黒い服の娘たち”も素晴らしい作品。
娘の顔の輪郭はフィリップス・コレクションの傑作、“舟遊びの昼食”ほどすっき
りしてないが、印象派らしい“ムーラン・ド・ラ・ギャレットの庭で”に比べると、白い顔や
手は綺麗に見える。この絵は初期の印象派の作風と“舟遊びの昼食”の丁度、中間
あたりの感じがする。

あまり期待してなかったモネの2点に驚いた。連作の中でも、最上位にランクされる
“ジヴェルニーの積みわら”、“白い睡蓮”である。久しぶりにモネの光の魔術を見た。
チラシを見て、これは是非見てみたいと思ったのがゴーギャンの“彼女の名はヴァイル
マティといった”。エルミタージュ美術館で“果実を持つ女”という惚れ惚れするゴー
ギャンの傑作に出会い、シチューキンの眼力に敬服していたので、今回でてくる作品
にも期待していた。この絵は期待値をはるかに上回る名画。タバコを左手にもって
るタヒチ女の肌の褐色と、髪と敷物の青、楽園を思わせる周辺のピンク、葉の黄色が
見事に配色され、平面的な絵画空間をつくっている。これほど色彩が輝いている
ゴーギャンの絵を見たことがない。

このゴーギャンの絵と右のマティス作、“金魚”に一番感動した。“金魚”は大作。
縦140cm、横98cmある。真ん中の鉢の中にいる4匹の金魚だけが濃い赤で彩色さ
れている。ここに焦点を集めようとしたのか、鉢の下のテーブルとかまわりの花の紫
や緑は薄塗りである。だから、余計に真ん中に描かれた、思い切って口をあけたり、
こちらをむいてる金魚の生命力を感じてしまう。忘れられない絵である。

他にはドニの“ポリュフェモス”やマルケの“オンフルール港”が目を楽しませてくれた。
そして、2度目のゴッホの“刑務所の中庭”、ピカソの“アルルカンと女友達”にも
また感動した。質の高いシチューキン・モロゾフコレクションを日本で鑑賞できる幸せを
噛み締めながら美術館を後にした。満足度200% なお、会期は12/18まで。

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コメント

私は美術館展よりも個人のxx展の方が好きなのですが
いづつやさんのレポ読むと行きたくなりますね~
モネの積みわら好きです
マチスも好きなので金魚の本物見たくなりました

投稿: えみ丸 | 2005.10.26 22:15

いづつやさん、こんばんは。
本当に充実の展覧会でしたね!私もエルミタージュでシチューキン・コレクションに興味を持ったのですが、なるほどと唸ってしまいました。お目当てマティスも素晴らしいかったですが、ドガとゴーギャンに参ってしまいました。ゴーギャンの「彼女の名はヴァイルマティといった」の色彩の美しさには魅了されますね!

ということで、トラックバックさせていただきました。拙ブログでは触れませんでしたが、もちろん、ゴッホもピカソも良かったです♪

投稿: June | 2005.10.27 01:51

マティスの金魚の絵は大好きで、又見たいなあと思っていました。
今ちょうど近くでマティス展が始まったところで、金魚に会えないものか?と思っていましたが、残念ながら日本にいるのですね。。。

投稿: seedsbook | 2005.10.27 22:46

to えみ丸さん
シチューキン・モロゾフコレクションで、事前の期待以上だったのが
マティスの金魚とゴーギャンのヴァイルマティ・ティ・オア。逆に期待して
なかったのに本物は一級品だったのが、ルノワールの2点とモネの2点。
これに加え、画集に必ず載ってるゴッホの刑務所の中庭、ピカソの
アルルカンと女友達。このコレクションは質が高いです。

積みわら、白い睡蓮はモネ好きにはもうたまらない作品です。
どうかお楽しみ下さい。

投稿: いづつや | 2005.10.28 10:03

to Juneさん
エルミタージュでシチューキンコレクションのマティス、ゴーギャンの
作品に驚きましたから、金魚、ヴァイルマティ・ティ・オアを観るのが楽しみ
でした。期待以上の傑作で感動しました。西洋画でも日本画でも
カラリストの絵をとくに追っかけていますので、この2点の美しさは
一生忘れないでしょう。

これらとルノワールの黒い服の娘たち、モネの白い睡蓮、そして、ピカソの
アルルカンの女友達がMyベスト5です。順位はありません。もう一回、会期の
中間あたりに出かけようと思ってます。

投稿: いづつや | 2005.10.28 16:26

to seedsbookさん
こんばんは。昔、ビデオ収録したマティス番組にこの金魚がでてきて、
いつか本物を見てみたいと願ってましたら、モスクワではなく日本で
実現しました。日本では40年ぶりの公開のようです。

金魚の赤がすごく濃いのに対し、まわりの緑は薄塗りで処理され
てるんです。チラシではこういう描き方はわかりません。今回の図録
は普通の規格とは違う大きいサイズなので収納に苦労するのですが、
表紙に金魚を使ってくれてますので、いつも横に置いて眺めてます。
可愛い金魚を前に心が晴れます。

投稿: いづつや | 2005.10.28 17:13

早速行かれたんですね。私も早々行ってきました。マティスの金魚は思ったより、はるかに大きい作品でした。真っ赤で元気な金魚ももちろんですが、周りの塗り斑、塗り残し、掻いたような部分が、またまたマティスらしくてよかったです。土日は松山のLさんに案内していただいて、玉川近代美術館やセキ美術館に行ってきます。いづつやさんが「ピカソとマティス」の本を紹介してくださったあたりから、Lさんとお友だちになることができました。ありがとうございます。

投稿: Yuko | 2005.11.03 19:37

こんばんは。
「金魚」を際立たせるために
マティスはあれこれしかけを施しているのが
絵の前に立ってよく分かりました。

モネの積みわらは大原にある作品と
ちょっと雰囲気が違いましたね。
好きな作品に出会えると
それだけで嬉しくなってしまいます。

投稿: Tak | 2005.11.03 22:18

to Yukoさん
主催者に名を連ねてる朝日新聞が10/30、“金魚”大研究と
いう記事をのせてました。マティスはこの絵を描くにあたりいろい
ろ技術的な工夫をしてるようですね。白い地色を残して、色を引き立た
せたり、金魚鉢の水面に赤い影を描き、立体感を出したり。金魚の濃い赤
以外の部分がどうして薄塗りや塗り残しになってるのか、よく分かり
ませんでしたが、この解説で納得がいきました。大きな図録でハンドル
しにくいのですが、横において毎日、表紙の金魚をながめてます。

松山旅行を楽しんでください。セキ美術館はいい作品を所蔵してるようで
すね。お二人のはずむ会話が目に浮かびます。

投稿: いづつや | 2005.11.04 13:45

to Takさん
日本も美術大国ですね。バーンズ、コートールド、そして今回シチュ
ーキン・モロゾフコレクションがやってきました。印象派、およびマティス、
ピカソの傑作を日本に居ながらにして鑑賞できるのですから、こんな
幸せなことはありません。

金魚の赤は濃さが周りのうすい色に較べて際立ってましたね。水面の影ま
で真っ赤です。一度NYで金魚が入ったマティスの絵をみましたが、印象で
は雲泥の差があります。大きくて、見ごたえがあります。

モネの期待値は低かったのですが、2点とも白が輝き、光を目一杯表現し
てましたね。積みわらは大原のと比べ、光が当たってるところと影の部分
とのコントラストがよりシャープですね。一つかふたつくらいの積みわらが
描かれた連作のほうが数は多いと思いますが、このタイプでは秀作
のひとつではないでしょうか。混雑覚悟で、もう一回行くつもりです。

投稿: いづつや | 2005.11.04 14:22

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