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2005.10.20

松井康成展

194今年は大物陶芸家との相性がいい。いつか、その作品をまとめてみたいと思っていた加守田章二の回顧展が東京ステーションギャラリーであったし、青磁の中島宏展にもつい最近、偶然出会った。

そして、2年前、突然亡くなって多くの愛好家を悲しませた松井康成の大回顧展を鑑賞することができた。笠間市にある茨城県陶芸美術館で現在、開館5周年記念として松井康成の作品を200点
あまり展示している。車で2時間あまりかかったが、出品作は遠くまで来た甲斐が
あったと心から喜ばずにはいられない素晴らしいものばかりであった。

これまで、この天才陶芸家の壷はわずかしか見てないのだが、講談社が03年
に刊行した“人間国宝の陶芸名品集”を頻繁に取り出して、松井康成の作品
にため息をつく日がよくあった。何が惹きつけるかというと、まず、まるいかたちが
美しい。その表面にはどういう細工をしてできるのか、亀裂があり、ひびが入っ
ている。小さい頃、粘土遊びをしたとき、乾燥するとつくった物にひびが入り、
何かの拍子で崩れてしまうことがあった。普通、亀裂やひびは粗悪で脆いという
イメージがあるが、この陶芸家は土にできるひびを逆に、観る者が心地よく感じる
文様に変えてしまった。

中国の唐や宋の時代からある練上(ねりあげ)という技法を洗練させ、松井流練上
を完成させた。この技で、昭和生まれで最初の人間国宝に66歳のとき、認定
されている。練上というのは複数の土を練り合わせ、意識的に縞模様をつくりだす
技法。右の“練上嘯裂文大壷・風船”は一番魅せられた壷。ピンクと白、薄い青の
粘土板を交互に積み上げて縞模様をつくっている。じっとみてるとまるい風船にみえ
てくる。

この作品は空にふわふわ飛んでる風船をイメージさせるが、ほかの大壷は太陽系
を周る惑星を連想させるものが多い。よく天体図鑑に載ってる土星を取り囲む
リングの色や天王星や海王星などをすぐ思いつく感じである。松井もこの宇宙がめざ
してるまるい形をつくりたかったと語っている。また、最近、被害が続出している
ススメバチの大きな巣に似た表面がごつごつした壷もある。

会場では、初期から晩年までつくり続けた練上のいくつものバリエーションが見られる。
壮年のころの模様は、先が縦に細かく割れて短冊のようにゆらゆら揺れる海草の
ような文様が器体一面に表現されていたが、晩年の玻璃光壷では、雪の結晶、
梅の花といった見慣れた文様になってくる。このあたりにくると、気品のある上質の
陶芸品をみるようで気持ちが晴れやかになる。

念願だった松井康成の名品を見ることができ、帰路のクルマのなかではいつに無く
ハイになっていた。会期は11/6まで。この展覧会は、笠間の後、次の美術館を
巡回する。11/12~12/18:長野県信濃美術館、06/9/9~10/22:兵庫陶芸
美術館、07/2/6~2/12:日本橋三越。

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