岸田劉生展
笠間日動美術館には近代日本画のいい絵があると思って、入館したが、これは大きな間違いだった。どうやら頭のなかで情報が混線したようだ。
ここは西洋絵画、彫刻、日本人の描いた洋画を展示するところだった。アメリカの現代アートもある。美術館全体の管理、手入れがちょっと悪い感じがする。
こういう常設の美術館は作品を一度見たら、よほどの企画展でもない限り、何度も行かない。来館者が多くないので、管理の経費を削ってるのだろう。でも、展示されてる作品は質が高い。
例えば、カンディンスキーの“活気ある休息”という作品は、日本でみた中では一
番いい。色といい、構図といい、笠間の地にこれほど心を打つカンディンスキーがあっ
たのかとちょっと興奮した。レオナール・フジタが4点ある。ひろしま美術館並みの
フジタコレクションにもびっくりした。おなじみの“闘猫”にしばし足が止まる。
また、レジェ、ミロ、マックス・エルンスト、サム・フランシスも目を楽しませてくれる。
野外に飾られてる彫刻群も一通り揃ってる。ヘンリー・ムーア、オシップ・ザッ
キン、マリノ・マリーニ、カルダー、デュビュッフェ、ジャコモ・マンズー。日本人が
描いた洋画で嬉しかったのは絹谷幸二に出会えたこと。いつか、この画家の
絵をまとめて見たいと願ってるのだが、なかなか回顧展にお目にかかれない。
これはカンディンスキーと共に大収穫の作品。図録に載ってなく、絵葉書もなかっ
たので目に焼きつけてきた。
ここで、現在、“岸田劉生展”を開催している。チラシにのってる麗子像はまだ見た
ことなかったので、期待して会場をまわった。右の“麗子立像”は神奈川県立
近代美術館の所蔵だが、他はみんなここが持ってる作品。家に帰ってから分か
ったのだが、00年、山口県の徳山市(現周南市)であった回顧展の多くがこの
美術館から出品されていた。ここが東近美とともに岸田劉生のコレクション
で有名な美術館であったことを忘れていた。劉生のデス・マスクも飾ってある。
広島にいるとき、幸運にも岸田劉生との縁が深くなった。徳山の回顧展に続き、
03年にはふくやま美術館で大規模な“麗子展”があり、東博にある代表作、“麗子
微笑”や東近美の“麗子五歳之像”など日本中から集まった麗子像を鑑賞した。
“麗子微笑”は日本人が描いた洋画で一番好きな絵。心を浄化し、和ましてくれ
るこの絵を見る度に、こんな素晴らしい絵を残してくれた岸田劉生に感謝の気持
ちで一杯になる。
麗子展以来、麗子像に執着しており、残りの作品を追っかけている。今年はいい年
で、京近美の“麗子弾絃図”、泉屋博古館の“二人麗子図”に出会い、今回、ここ
で神奈川県近美の“麗子立像”をみることができた。そろそろ済みマークがつきそう。
なお、この展覧会は12/11まで開催されている。また、東近美・平常展の特集
コーナーに岸田劉生の作品が展示されている(12/18まで)。
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