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2005.09.26

李禹煥展

174昨年、東近美であった琳派展に毛色の変わった現代絵画がでていた。それは李禹煥(リ・ウファン)が描いた“線より”。

白地の背景から頭の先が左右に曲がった幼虫をイメージする青い線が垂直に浮かび上がっていた。生理的にはあまり好きになれない形であったが、強く印象に残っている。

これと同じ名前の絵をその後、ここの平常展でみた。先がとんがった縦の青い
線が下の方に何本も描かれていたが、このほうが美的にはすっきりしている。
り・ウファンという韓国人アーティストの作品を見たのはこの二つしかなく、
作家の経歴を書き物で読んだこともないのに、現在、横浜美術館で開催中の
李禹煥展には出かけてみようと思った。動機はサブタイトルの“余白の芸術展”に
惹かれたのと、この作家は大物の匂いがしたから。

事前に想定した絵画のイメージは“線より”の色の違ったヴァリエーションとか別の
タイプのものだが、全然違っていた。作品は21点しかない。平成3年から今年にかけ
て制作されたものだから、リ・ウファンの最新作といってよい。“線より”は1977、
1980年に描かれているので四半世紀前のもの。右の“照応”は03年の作品。
3つに区切られた白地に、筆跡が残る灰色の植木鉢のような形をしたものが3つ
描かれているだけである。筆の方向は真ん中が垂直、左右の2つは水平
になっている。

21ある作品のうち、平成3、4年の作品はフォルムが鋲とか「」になっているが、他の
は鉢の数と筆の運び方に違いがあるだけで基本的には同じ絵。余白はたっぷりある。
“線より”では筆に岩絵具を含ませて線を引いているので、これらの灰色も岩絵具
で彩色したのかもしれない。リ・ウファンは現在69歳。こんな年寄りだったの?
50代後半のアーティストと思っていた。

歳を重ねるにつれ、画風が枯れてきて、対象の造形はよりシンプルになり、余白を
一杯とるようになったのだろうか。作者という主体と対象の対立をなくすという難しい
テーマに取り組み、余白の絵画を創造してきたリ・ウファンという画家は70歳近くに
なり、さらに独自の画風を突き進んでいる。大きな芸術家であることは間違い無い。

絵の他に自然石と鉄板を組み合わせた彫刻が美術館の前の広場と中の展示スペース
にある。自然(石)と産業(鉄板)の関係を表現している。各作品における石と鉄板の
位置関係から何を読みとるかは見る人の感性の問題。現代アートの場合、数ではなく、
一つ々の作品の意味を根源的にとらえることが大事だが、素人にはこれがなかな
か難しい。なお、展示は12/23まで。

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コメント

こんばんは。
感想をTBさせていただきました。

>作品は21点しかない

そうですよね。
それこそ「何だこれは?」のように見てしまえば、
10分もかからない展覧会だったように思います。
私が出向いた日も、足早に立ち去る方が、少しですが見受けられました。

>作者という主体と対象の対立をなくす

本当に難しいですよね。
しかし李は一貫してそれを求めている。
その一応の答えが、今回の展覧会なのでしょうね。

投稿: はろるど | 2005.10.02 00:19

to はろるどさん
おはようございます。現代アートの絵画というのは一つの形、点、
とか円、四角を画面一杯に繰り返すタイプ(クサマなど)、幾何学的
な構成に彩色するタイプ(ステラなど)、アクションペインテイング(ポロ
ックなど)、コラージュタイプ(ジャスパー・ジョーンズなど)、ポップ・アート
(ウォーホール、リキテンシュタインなど)、そのほかに分けられますが、
リ・ウファンの作品は繰り返し型ですね。

ですから、25年くらい前の“線より”のヴァリエーションがでてくるものと
想定してたのです。今回のは、対象の繰り返しは繰り返しですが、せいぜい
4回くらいで終わりですね。まさに余白の芸術になってます。
こうなると、はろるどさんが書かれてるようにインスタレーションに工夫が
いりますね。おもいきって、作品の数を絞って、大きな展示空間でみ
せた方がよかったかもしれません。われわれ東洋人は水墨画を知って
ますから、余白の美や間の空気には敏感ですので。

投稿: いづつや | 2005.10.02 08:30

こんばんは。

やっと観て来ました。
展示してあったシリーズが
行き着いた到着点かと
思いきや、李は出発点だといいます。

これからが益々楽しみです。

投稿: Tak | 2005.12.14 22:11

to Takさん
新日曜美術館がリ・ウファンを特集してくれたので、このアーティスト
がこれまでめざしてきたことへの理解が進みました。実は、東近美に
あるような絵が色違いで何点もあるかと、そちらの美しさを求めて出向いた
のですが、最新作は逆にフォルムは限りなくシンプルでしたね。

余白がたっぷりある抽象絵画をみてると精神が浄化されるような気
がします。世界のリ・ウファンがこれからどんな作品を見せてくれるのか、
期待したいです。

投稿: いづつや | 2005.12.15 10:06

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