イサム・ノグチ展
東京都現代美術館には過去2回行ったことがあるが、地下鉄を降りてから随分歩くのでアクセスの悪い美術館というイメージが強い。
今回は歩くのを少なくしようと半蔵門線の清澄白河駅で下車してみた。案内どおり9分で美術館についた。それでも、日本画専門館の山種美術館同様、アクセスの悪さはぬぐえない。
しかし、ここで開かれる企画展はそんなわずらわしさを吹き飛ばしてくれる素晴
らしい作品をもってくることがよくある。8年前にあった“ポンピドー・コレクション展”
は満足度200%だったし、昨年の“ピカソ展”も充実していた。今回は期待の
“イサム・ノグチ展”。
これまで、イサム・ノグチの作品をみたのはごくわずかしかないので、若いころ
から晩年までの46点をみれるのは貴重な機会。理想をいえばこの倍くらい見たか
ったが。。イサム・ノグチのことは、8月中旬ころ放映されたTV番組、“美の巨人
たち”と新日曜美術館で大略知る程度なので(拙ブログ8/14)、今回の作品は
どれも刺激的だった。
知ってる作家との連想でいえば、まず最初の黄金の彫刻はブランクーシを思い出す。
パリに留学していたとき、イサム・ノグチはブランクーシの彫刻に触発されたようだ。
象牙色の作品“母と子”は2月、葉山の神奈川県立近代美術館でみたハンス・ア
ルプの柔らかさと似ている。真ん中あたりのコーナーにあった薄いブロンズ板の
パーツを組み合わせてつくった“グレゴリー”やおりがみのように薄板を切ったり
曲げたりした“中国袖”をみてると、アレキサンダー・カルダーの金属片や針金で
できたモビール作品が頭をよぎる。
一番見たかったのが広い展示空間に展示されてる右の大きな石の彫刻“エナジー・
ヴォイド”。黒光りする花崗岩の四角い輪は何か魂が宿ってる感じで、無言の存在感
がある。四国香川県の牟礼にあるイサム・ノグチ庭園美術館にある門外不出の
代表作が出品された。有難い展示である。彫刻家というのは年をとるにつれてスケ
ールの大きな作品を制作しようという衝動が内から湧き上がるのか、この“エナジー・
ヴォイド”はいいだこの頭に似た花崗岩の作品“オリジン”や“この場所”と比べると
かなりデカイ。イサム・ノグチが大きな野外彫刻をまだほかにつくってるのなら是非
みてみたい。
会場前の広場には、17年の歳月をかけて今年7月に完成した札幌のモエレ沼公園に
ある2つの遊具“オクテトラ”、“プレイ・スカルプチュア”が置いてある。多くの入場者
をモエレ沼公園にも誘うという憎い演出。イサム・ノグチは日本人だなと思わせる
作品が入り口入ってすぐのところに出てくる。竹と和紙でつくられた大きなぼんぼり、
“2mのあかり”。イサム・ノグチの芸術をたっぷり楽しめる展覧会であった。
なお、展示は11/27まで。
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コメント
こんばんは。
この展覧会はとてもよかったと思います。
特にエナジー・ヴォイドは圧倒的でした。
私はこの夏、モエレ沼公園にも行ったの
ですが、とても気持ちよい空間でした。
TBさせていただきます。
投稿: lysander | 2005.09.24 23:31
to lysanderさん
札幌のモエレ沼公園に行かれたとは羨ましいですね。美の巨人たち
でイサム・ノグチのことを詳しく知り、今回の展覧会を楽しみにしてました。
最初に大きなぼんぼりが出てきたので、やはりこの人の体には日本人の
血が流れてるのだなと親しみを覚えました。エナジー・ヴォイドが良かっ
たですね。横浜美術館にある海蛇のような作品がこれまで一番印象
に残ってるのですが、この大きな石の彫刻もすごくインパクトがあります。
もっともっとイサム・ノグチの作品をみたくなりました。
投稿: いづつや | 2005.09.25 15:34
いづつやさんこんばんは。
「エナジー・ヴオイド」は札幌では美術館の池の上に置かれたそうで、そのほうが雰囲気でますね。
僕は現代美術館の殺風景なアトリウムにぽつんと置かれてるのがさびしかったです。
イサムノグチは近代美術館の二階の展示室で明かりの特集展示ありましたが、いづつやさんは御覧になられましたか?
投稿: oki | 2005.09.30 00:19
あそうそう、帰りにタクシーで東京駅にいったら10分でついちゃいました。
バスだと30分かかるんですよね。
府中市美術館、練馬区立美術館、世田谷美術館みんなアクセスしづらいところにありますよねー。
投稿: oki | 2005.09.30 00:21
to okiさん
エナジー・ヴォイドは札幌では池の上にあったのですか。MOTの場合、
中庭のほうが中よりは良かったかもしれませんね。チラシにある
イサム・ノグチが手をかけていたのは決まってます。大きな彫刻で
すから、やはり野外で見るのが本来の姿でしょうね。
2階のぼんぼり観ました。日本人イサム・ノグチに親しみを感じました。こんな紙
と竹の世界にも通じ、大きな花崗岩の彫刻もつくる。作域の広い作家ですね。
投稿: いづつや | 2005.09.30 18:12
to okiさん
MOTから東京駅までタクシーにのると10分ですか。これは近いですね。
いいこと聞きました。次回は試してみます。
アクセスしづらい美術館にあげられた府中市美術館に今日、はじめて
行きました。緑が多い公園なので歩きましたが、くたびれました。
これで展示内容が×だったら疲れがどっとでるところだったですが、
ホイットニー美術館展はGoodでした。
投稿: いづつや | 2005.09.30 18:21
私もイサム・ノグチ展観てきました
雨の中駅から遠い美術館という印象でした、前はバスで行きました
>多くの入場者をモエレ沼公園にも誘うという憎い演出・・
ホントそうですよね、モエレ沼に行かせるために企画したのかと思うほどです
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投稿: えみ丸 | 2005.10.07 19:20
to えみ丸さん
イサム・ノグチの大きさがだんだん分かってきました。この彫刻家は
てっきりアメリカ人とばかり思ってたものですから、ぼんぼりの作品に
出会ったときはすごく嬉しくなりました。日本の美の真髄を知ってます。
実は3日から北海道を旅行してたのですが、札幌を高速道路で通
りぬけるとき、モエレ沼公園のプレイマウンテンが遠くに見えました。
次回来るときはここを是非とも訪問したいですね。
投稿: いづつや | 2005.10.07 23:03
こんばんは。
エナジーは本当に圧倒的な存在感でしたよね。
体が痺れました。
>角い輪は何か魂が宿ってる感じで、無言の存在感
そうですね。
その魂が見る者を強く惹き付けるようで…。
ずっと見ていても飽きないと思います。
投稿: はろるど | 2005.10.11 00:44
to はろるどさん
イサム・ノグチ展では、倍の作品が出てれば申し分なかったのですが。
旅行と一緒で、どこか観たりなかったら、次の展覧会にも足を運ぶ
気になりますから、このくらいが丁度よかったかもしれません。
これから、付き合いが長くなりそうです。
エナジー・ヴォイドをぐるぐる回ってみる余裕がなかったのですが、これを
どうやって造ったのかな?と技法の事ばかり考えてました。キャプションに
スウェーデン産花崗岩とあったので、これを輸入し、牟礼に運んで
つくったのですかね?
よく、彫刻は除去という作業によって生まれ、絵画は付加により生まれ
ると言われますが、イサム・ノグチがやってる抽象彫刻ではこの
黒光する花崗岩(地球の一部)を削り、魂の宿る作品にしたのでしょうか。
真正面から向かい合うと、ちょっと後ずさりしますね。凄い作品です。
投稿: いづつや | 2005.10.11 18:34