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2005.09.25

ユトリロ展

173ユトリロという画家は小さいときから美術の本で知ってるが、これまで日本で開かれた展覧会に出くわさなかった。有名な画家なのに意外といえば意外。

作品そのものもさほど見てない。ポンピドーにある代表作、“コタン小路”、“ラパン・アジル”や大原、ひろしま、国立西洋美術館に飾られてる作品くらいしか記憶に無い。だから、ユトリロの絵、イコール、白を基調としたモンマルトルの家並というイメージができあがって、この画家の作品に限ってはヴァリエーションが極めて少ない。

こんなユトリロ観を広げてくれそうな回顧展が日本橋高島屋で開かれるというので
開幕を楽しみにしていた。今年はユトリロの没後50年で、節目の年に内外の美術館や
個人蔵の作品が初期から晩年まで80点あまり集まっている。日本にあるので注目を
惹くのは八木コレクションの7点。いい絵なので知る人ぞ知る有名なコレクターなの
だろうが、ユトリロに縁がないため、コレクター話は全くわからない。

ユトリロの人生はおおよそ頭に入っている。母親のシュバンヌ・バラドンはルノワール
やロートレックのモデルをつとめた伝説の女性。恋多き母親の私生児として生まれ
たユトリロは母親からほったらかしにされ、小さいころから寂しく孤独な生活を送らざる
をえなかった。これを癒すため15歳のときから酒に溺れ、17歳でもうアルコール
中毒になっていたという。本当の父親のことなど知る由もなかったろうが、母親自身
が特定できないのだからなんとも哀れ。ルノワールの血も混じってるのではと勝手
に想像している。

1908~1914年頃に描かれた“白の時代”の作品に孤独なユトリロの精神状態が
一番出ている。ユトリロの白は、家の壁の漆喰で遊んでた小さい頃の記憶の表れ。
よく通った酒場を描いた右の“ラパン・アジル”(1912)でも漆喰のマチエールをだす
ため白の表現を色々工夫している。ユトリロはこのラパン・アジルを350枚も描い
たという。ポンピドーにも同じ構図のものがある。酒場の中はシャンソンが歌われ騒々
しかっただろうが、ドアを閉じたお店と周りの小路はユトリロの心情を反映してか
ひっそりとしている。

これが色彩の時代(1915~1935)では一転して、“ムーランの大聖堂”や“ヴェル
ブリーの郵便局”のように輪郭線がすっきりし、空の青や屋根の赤が輝くような作品
に変ってくる。アル中のユトリロはどこへいったのか?とちょっと戸惑うほどである。
これがまたすごく魅力的な絵だから驚く。売れっ子画家になって母親や義理の父親
に管理されて、描かされたのだろうか。

ユトリロの絵を色々見れて、満足感一杯の展覧会であった。会期は10/10まで。

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コメント

こんばんは。
僕も観ましたがアルコール中毒で外に出られないとは思えないしっかりした絵ですよね。
空の青、木々の緑ー結婚した幸福感とも関係あるのかな。
ユトリロの信仰とかパネル展示されていたのも面白かったですね。

投稿: oki | 2005.10.08 00:41

to okiさん
色彩の時代にユトリロが描いた作品は明るい画風で魅力的ですね。
ですが、ユトリロの絵というと孤独な生活の中から生まれた寂寥感の
漂う白の時代の絵でしょうね。

油絵をやってる友人に、アル中のユトリロが鮮やかな色彩でしゃきっとし
た絵を描けるのか?と尋ねると、描けるんじゃないのと言ってました。
絵を描かないので、このあたりの技のことは分かりませんが、アル中
でも結婚した奥さんとの幸せな生活や母親、奥さんの叱咤激励も
制作の一助となったのでしょうか。それともアル中が直ったのでしょうか?
ちょっとconcernしたいテーマです。

投稿: いづつや | 2005.10.08 18:27

「没後50年 モーリス・ユトリロ展」を観た!
トラックバックさせていただきます。
よろしくお願いします。

投稿: tonton1234 | 2005.10.13 18:07

to tonton1234さん
はじめまして。書き込み、TB有難うございます。日本で開かれた
ユトリロ展をはじめてみました。高い満足が得られました。これからも
よろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2005.10.13 20:48

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酔い、惑い、描き、祈った。日本で最も人気のある画家のひとり、詩情あふれるパリの風景を描いたモーリス・ユトリロ。今年は、ユトリロの没後50年に当たります。本展では、特に評価の高い「白の時代」の作品を中心に、国内外から集められた初期から晩年までの作品80数点を展観... [続きを読む]

受信: 2005.10.13 18:05

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