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2005.09.27

青木繁・海の幸展

469_2東京駅八重洲口の近くにあるブリジストン美術館で、今、特別展示されてる青木繁の“海の幸”をみてきた。

特別展示はこの絵が制作されて100年が経つのを記念してのもので、所有する久留米の石橋美術館とブリジストン美から他の代表作と合わせて20点が出ている。

03年、東近美が主催した回顧展ではじめて“海の幸”にお目にかかったが、
時間の関係で、じっくりと観ることが出来ず、消化不良の感を持ち続けてきたので、
この展示を楽しみにしていた。絵はやはりある程度、時間をかけてみるものだ
というのがよくわかった。前回、気がつかなかったことがいくつかあった。
この絵は薄塗りで描かれており、下描きの黒い線がみえる。このため、これで完成
した絵なの?と思ってしまう。あまり見かけない横長の絵で、天地一杯に、捕った
魚を担ぎ、左の方向に行進する裸の漁師たちが描かれている。

よくみると絵の焦点は、志村けんのバカ殿のように顔を白化粧したのではと思わせ
る真ん中の男(青木繁)と、そのすぐ後ろの列でこちらをみている顔立ちの整った女
(恋人の福田たね)、そして2人の間にある大きなサメにある。特に女の視線に
力がある。ここがこの絵の一番の見所ではなかろうか。青木繁はこれを仕上げた
1904年から2年後に、もとの男性を西洋の女性を思わせるたねに描き直している。

これに比べれば、一番前で辛そうに獲物を背負って行進している2人は後ろの
8人の赤みがかった肌色とは違い、下描きにちょっと着色した薄い茶色がのってるだけ
である。また、最後尾からの3人は色があり、逞しくは感じられるものの、体の線や
顔ははっきりと描かれてない。漁師にとってはアドレナリンが沢山出そうな大漁の
場面を、あえて全員を写実的に描かず、濃淡をつけている。このほうが遠い古代世界
の原始的なエネルギーをより強く表してるような気がする。

他の作品では古事記から題材をとった名作、“大穴牟知命”(おおなむちのみこと)、
“わだつみのいろこの宮”(拙ブログ7/19)が印象に残る。展示されてる作品は
少ないが、見終わって、こんなにいい気分になれる展覧会はなかなか無い。ブリジス
トン美術館に感謝。展示は10/10まで。

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コメント

遅ればせながら観てきました。なかなか良かったので、できればもう一度見にいくつもりです。レポートは↓
http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/JA05.htm#051008

投稿: とら | 2005.10.09 19:13

to とらさん
03年、東近美の大回顧展ではじっくり見れなかったので、今回の
展示は有難かったです。西洋画のギリシャ神話を題材にした絵や、
キリストの宗教画のようなものを、古事記や古代世界に思いを馳せて
作品にした青木繁はやはり天才ですね。

薄描きで、下絵の線を残した未完成のようにした意図がわからない
のですが、この線が気にならないのが不思議です。日本美術史に残る
名画ですね。

投稿: いづつや | 2005.10.09 19:42

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