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2005.08.08

江戸物小説

139江戸時代の人情話、捕り物帖をテーマにした小説を定期的に読んでいる。好きな作家と作品をあげると。。

北原亜以子の“慶次郎縁側日記”(新潮社)、佐藤雅美の“物書同心居眠り紋蔵”、“半次捕物控”、“啓順”(以上、講談社)、“八州廻り桑山十兵衛”、“縮尻鏡三郎”(以上、文芸春秋)。

いずれもシリーズ化し、慶次郎縁側日記と物書同心居眠り紋蔵はNHKの番組
にもなった。単行本になるのは年に1冊のペース。いくつもシリーズがあるので、
1年でストックすると4,5冊にはなる。本を読むときはいくつかあるカテゴリー
をローテーションしながら、まとめて集中的に読破することにしている。今は二人の
作家の小説を楽しんでるところ。

北原亜以子の慶次郎縁側日記はもう9作になる。“やさしい男”とか“赤まんま”とい
った名前のついたショート話が一冊にまとめてある。主人公は現代の刑事にあた
る同心を昔やっていて、今は隠居の身の森口慶次郎や嫌われ者の十手持ち、蝮の
吉次。北原亜以子は新潮社の編集担当から、中年の男性がふと涙を流すようなものを
書いてくださいと頼まれたそうだ。

直木賞を受賞したこの女流作家の文章は本当に力がある。日々の生活に汲々としてる
江戸の庶民が止むに止まれず犯した盗みや、ダメ男が何度でも懲りずにする浮気
などがほろっとする文章で綴られている。昔の勧善懲悪スタイルの江戸物ではなくて、
超ワルがでてきたり、吉次のような鼻つまみものの十手持ちが、ちょっと人に優しく
することもある。

江戸時代には文字文化が発達し、武家社会の規則、犯罪歴、藩の出来事、商売など
に関する資料や文献はあるところにはどっさりあるという。よく、これらの資料を2000
万円くらいで古本屋などで購入すると本が書けると言われる。江戸時代のことは
今のところ北原、佐藤、そして高橋克彦の本で教えてもらうことにしている。

理解が進んだのは十手持ちや同心の仕事、犯罪とその量刑、死罪、島流し、江戸
所ばらいなど。一番面白いのは当時の十手持ちは町の嫌われ者であったこと。
お上からの給料は少なく、大半は町人を強請って生計を立てていたという。今でも
TVでやっている“銭形平次”のような善人の十手持ちは200%いなかった。読め
ば読むほど、岡っ引のワルさ加減がわかる。

例えば、ある呉服屋で何か盗まれたとしても、金額がそう大きくないときは、店の
主人は何事もなかったことにするという。なぜかというと、事件になると面倒なことがお
こるから。奉行所へ呼び出された時は、町役人が付き添うことになっており、後でこの
付き添い人には日当を払い、料理屋で食事を振舞うことが習慣になっていた。盗まれ
た金額よりこっちの出費のほうが大きいので、何もなかったことにしたほうが被害が
少ないのである。

ご丁寧にもこの盗みの案件を奉行所に持ち込むか、無しにするかという下交渉を被
害者は岡っ引と茶屋でする。その際、盗まれた家の者は十手持ちになにがしか
お金を握らせて、盗みがなかったことにしてもらう。これを引き合いを抜くという。小額
とはいえお金を盗まれた上、岡っ引にまたお金をせびられる。踏んだり蹴ったりで
ある。この引き合いを抜く交渉で得た金で岡っ引は飲んだり食ったりしていた。
町の者に嫌われるはず。

右のイラストは今の交番をもっと大きくしたような自身番屋の一角。小者が岡っ引。
同心もいろいろ袖の下を通されて事件をうやむやにすることがあったようだ。
賄賂に弱い役人は江戸の昔から変わらない。

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受信: 2006.05.31 10:58

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