« MOAの京都日本画名品展 | トップページ | 横浜美術館ベスト・コレクション »

2005.08.06

アカデミア美術館のティントレット

137昨日放映された世界美術館紀行にヴェネツィアにあるアカデミア美術館が登場した。5年くらい前、はじめてここを訪れた。

事前に得た情報では、この美術館にはジョルジョーネの代表作“嵐”、ヴェネツィア派絵画の巨匠、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼの作品が揃っていることで絵画愛好家の間では人気が高い。

ルネサンスの町、フィレンツェやカソリック総本山のローマにあるダヴィンチ、
ミケランジェロ、ラファエロらの画風とは一味違う、色彩豊かな絵画が東西貿易
で富を築いたヴェネツィアで花開いた。ヴェネツイアにはフランドルの北方
美術が流れ込み、油彩画が盛んになった。これでフレスコ画では出せない
鮮やかな色彩をもつ絵画が人々の注目を集めるようになる。この町にあるサン
タ・マリア・ディ・フラーリ教会の祭壇画にティツィアーノが描いた“聖母被昇天”
(1516年)の華麗な色彩が今も忘れられない。美しい聖母や下にいる使途、
そして天の聖父が着ている衣装の深紅が目にしみる。ティツィアーノの絵は
構図よりは色彩に魅了されることが多い。

ティントレットの作品をアカデミア美術館とサン・ロッコ同信会で鑑賞し、凄く
感動した。アカデミアにある右の“奴隷を救う聖マルコ”(1548年)は、よくある
宗教画とは何か違っている。それは聖マルコの描き方。奴隷を助けるために
空から現れた聖マルコは短縮法で描かれ、足を上にして、浮遊している。
ティントレットはこの独創的な構図により、主人から死刑を宣告された敬虔な
キリスト教徒である奴隷を聖マルコが突然現れ、救出する奇跡の場面を表現
した。30歳のとき制作したこの出世作以降、野口さんではないが宇宙遊泳
をしているような聖母やプット、アテナなどがよく描かれるようになる。

宙を浮遊する聖マルコをみて思い出す日本画がある。菅原道真の悲劇の物語
を絵巻にした“北野天神縁起絵巻”(13世紀前半)の巻六では、道真のたたり
で宮殿に落雷があり、火の粉が衣や頭に降りかかり、慌てふためく殿上人
が宙を舞う場面がコミカルに描かれている。このハットさせる構図の殿上人が
聖マルコに似ているのである。二人の画家は時空をこえて同じことを構想し
たのかもしれない。

|

« MOAの京都日本画名品展 | トップページ | 横浜美術館ベスト・コレクション »

コメント

いずつやさん、今晩は。

先日の世界美術館紀行「ヴェネツィア・アカデミア美術館」は、本当に良い作品ばかりを紹介していましたね。感心しました。

私も、行ってきたばかりなので、買ってきたガイドブックで予習してからじっくりと見ました。

投稿: とら | 2005.08.08 20:50

to とらさん
アカデミア美術館にあるヴェロネーゼ、ティンントレット、ティツィアーノ
の絵は傑作ぞろいですね。そして、ジョルジョーネの“嵐”。風景画
なのか、寓意画なのか?この絵の謎解きに参加する美術史家は
面白いでしょうね。また、この美術館に行きたいです。

投稿: いづつや | 2005.08.09 00:08

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アカデミア美術館のティントレット:

« MOAの京都日本画名品展 | トップページ | 横浜美術館ベスト・コレクション »