横浜美術館ベスト・コレクション
横浜美術館は家からすぐ行ける美術館なので、平常展を見に度々足を運んでいる。7/29からはじまった“市民が選んだ横浜美術館ベスト・コレクション”を期待を膨らませて、鑑賞した。
ここの所蔵品は近代日本画から洋画ではセザンヌ、ピカソからダリ、マグリッド、ウォーホル、奈良美智。。まで幅広い。今回は市民から寄せられた“私が選んだこの1点”で抽出されたベスト25をはじめ名品160点が展示されている。
デュシャン展のときは、ここの学芸員が考えた独自の展示方法で作品が並べら
れていたが、このベスト・コレクションでつけられた各セクションのタイトルが面白い。
1.はぐくむ、2.はばたく、3.であう、4.みつめる、5.ゆめみる、6.生きる、
数ある作品のなかで気に入っているのが、近代日本画とシュルレアリスム絵画。
日本画は図録にある名画がかなり出ている。展示室に入って最初のところに
片岡球子の傑作、“富士”が飾ってある。先頃、葉山の神奈川県立近代美術館で
あった回顧展でこの絵に出会った。富士山とその裾野を、赤や黄色、緑、青の明るい
色面構成で装飾的に描いている。片岡球子は富士山を何点も制作しているが、
この絵が一番いい。他には小林古径の名画、“竹取物語昇天図”がある。これ
は東近美に出品されていた京近美所蔵の巻物と全く同じ昇天の場面。同じ年に
描かれている。また、お気に入りの鏑木清方の美人画、“春宵怨(しゅんしょう
えん)”があった。糸巻きの図柄の帯をして踊る女性は舞踊“娘道成寺”から
想を得ており、体を後ろにそらす姿が艶やか。
図録でみて、本物に会いたいと思ったのが右の中村岳陵(がくりょう)作、“砂浜”。
この画家の絵を見る機会は少ない。東近美でみたモダンな衣装を着た女性を
都会的な感覚で描いた作品が印象に残っている。カラリスト、福田平八郎と
グループを形成しただけあって、色使いが福田とか小野竹喬と似ている。洋画
のような日本画である。中村は写生を徹底的にしたそうで、画面の大半を占める
砂浜のでこぼこのつくり方にそれがでている。アクセントは3羽の鳥と横に
なびく空の雲だけだが、涼しげな詩情を感ずる絵である。
この展覧会、日本画の名品が揃っているが、ダリ、マグリッド、デルヴォーらシュル
レアリスムのいい作品がある。日本でシュルレアリスム絵画の質が高いのは
福岡市立美術館とこの横浜美術館。現代絵画でびっくりする作品があった。日本人
画家、遠藤彰子が描いた“街”(1983年)。画家の名前を知らず、はじめて見た
絵であるが、感動した。全体的に作品の質が高く、満足度150%の企画展で
あった。なお、展示は8/31まで。
| 固定リンク
コメント
こんばんは。
この展覧会、土曜日に観てきました。
砂浜はとてもよかったですね。
空の色がなんともいえませんでした...
投稿: lysander | 2005.08.14 01:33
to lysanderさん
横浜美術館にはダリやマグリッドのいい絵がありますが、近代
日本画も名品が揃ってますね。今回はこれらがどっと飾られており
大満足でした。中村岳陵の“砂浜”に心打たれました。おっしゃる
通り空の描き方がよかったですね。
投稿: いづつや | 2005.08.14 20:05
こんばんは。
コメントありがとうございました。
>数ある作品のなかで気に入っているのが、近代日本画とシュルレアリスム絵画
いやはや全く同感です。
見応えのあるものばかりでした。
>日本でシュルレアリスム絵画の質が高いのは福岡市立美術館とこの横浜美術館
やはりそうなのでしょうか。
私もダリやデルヴォーなどは、
この美術館で見て好きになったような気がします。
シュルレアリスムの一大展覧会も企画していただきたいですね。
投稿: はろるど | 2005.09.01 22:14
to はろるどさん
横浜美術館にあるダリの“幻想的風景”は画集にのっています。
福岡市美術館にも“ポルト・リガトの聖母”という大きな傑作があります。
デルヴォーでは横浜のよりちょっと魅力的なのがあります。ここには
また、日本にあるミロの作品で一番いいのを所蔵してるんです。
東近美のシュルレアリスム絵画はぱっとしませんね。あと、浪速の
シルフさんがご存知の姫路美術館にはデルヴォーのいい絵がある
そうです。いつか訪ねたいと思ってます。
投稿: いづつや | 2005.09.02 16:19