« 2005年7月 | トップページ | 2005年9月 »

2005.08.31

展覧会情報

1556/23にまとめた展覧会情報から時間がたったので、その後入手した展覧会をいくつか紹介したい。

美術館のHPで定期的にチェックしているのは東京、神奈川、千葉にある美術館。今回はこれ以外の地域の気になる企画展もリストアップした。

★西洋画
 9/16~11/27   イサム・ノグチ展         東京都現代美術館
 9/17~12/23   李禹煥(リ・ウファン)展     横浜美術館
 9/17~10/10   青木繁“海の幸”特別展示   ブリジストン美術館
 10/29~12/18  大アンコールワット展      横浜そごう美術館
 11/3~1/22    ゲルハルト・リヒター展      川村記念美術館

★日本画
 9/3~10/30    琳派と京焼展           出光美術館
 9/3~10/23    秋の名品展            五島美術館
 9/3~10/16    写楽・歌麿展           千葉市美術館
 9/7~19       奥田元宋展            日本橋高島屋
 9/27~10/23   国宝虚空蔵菩薩像        東博国宝室
 10/4~12/4    伊万里・京焼展          東博表慶館
 10/8~12/25   三井家名宝展          三井記念美術館
 10/16~11/27  美の国日本展          九州国立博物館
 10/19~11/8   国宝洛中洛外図屏風展    米沢市上杉博物館
 10/29~12/7   川端龍子展            江戸東京博物館

(ご参考)
・五島美術館の秋の名品展の目玉、“紫式部日記絵巻”の展示は10/15~23。

・三井家名宝展には国宝の志野茶碗や円山応挙の“雪松図屏風”(国宝)、
“日月松鶴図屏風”(重文)などがでてくる。開館記念展は見逃せない。

・10/16に開館する九州国立博物館の記念展は凄い。右のチラシによると
狩野永徳の“洛中洛外図屏風”、“唐獅子図屏風”(三の丸尚蔵館)が揃う。こん
な機会はめったにない。また、風俗画の傑作、“松浦屏風”(国宝、奈良大和
文華館)、“花下遊楽図屏風”(国宝、東博)も出てくる。九州の大宰府に国立の
博物館が出来るというのでかなり気合が入っている。ちょっと遠いが、
唐獅子図と花下遊楽図は追っかけている屏風なので、なんとか足を運びたい。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.08.30

小林太市郎の光琳論

154尾形光琳と乾山の非常に面白い評伝を読んだ。美術史家の小林太市郎(1901~63年、元神戸大学教授)が書いた“光琳と乾山”(淡交社、1974年)。

この本のことを朝日新聞社刊の“名画日本史”(00年)で知り、神田の古本屋などを探し回ったが、どこにも無く諦めていたが、03年、岡山市の古本屋で偶然見つけた。需要の多い中央の本屋より地方に名著が眠っていたという訳である。値段は5000円。

手に入れてずっと寝かせていたのは、MOAにある光琳の“紅白梅図屏風”を直に
みてなかったから。今年、やっと長年の夢が叶い、紅白梅図屏風を鑑賞すること
ができた。で、500頁のこの本に向き会った。小林太市郎は天才学者。妄想で
はないかと思われるくらいの想像力で光琳の作品を読み解く。200%感嘆した。

光琳に関する資料と作品をみて、普通の人では考え付かないことを思いつく。
傑作、紅白梅図屏風に対して凄いことを考える。右の紅梅は光琳のパトロ
ンとみられている中村内蔵助。白梅は光琳。そして、二本の梅の木の間をゆく水流
は光琳の愛妾さんの豊満な肉体。いままで、この絵が何を描いたのかという色々
な説を聞き及んできたが、この説明には唖然とする。が、この学者が展開している
全体のストーリーが実に説得的なので、これもありかなと同調してしまう。

この本に出てくる光琳は女好きで金儲けの欲望が強い芸術家となっている。
また、恐妻家でもある。右の“竹に虎図”にでてくる虎は、嫉妬深く、家の中でぎゃー
ぎゃー言ってる本妻の多代をあらわしているらしい。本妻にかまわず、光琳は愛妾を
何人もつくるが、一番愛したのがさん。このさんは同時に中村内蔵助の愛人でも
あったという。だから紅白梅図の真ん中の水流がさんの体になっている。さらにやや
こしいのは11歳年上の光琳は中村内蔵助を愛していた。つまり、同性愛の関係に
あったという。ありゃりゃ、、、というくらいこの学者の想像力は膨らんでいく。

光琳は夢でみたことを絵にしたという。いくつもある代表作を夢に関連づけて読み
解いていく。そして、光琳の絵はシュルレアリスムの作品と言い切る。装飾的では
あるが、内容に乏しいと考えられているが、そうではなくて人間深層の欲望を綺麗に
描いた作品というのである。こんな型破りな光琳論があったとは。凄い本だ。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2005.08.29

ファン・エイク

1534月、ベルギーのゲントでファン・エイクが描いた“祭壇画、神秘の子羊”を見て、西洋絵画に対する見方が変った。

古典絵画では、これまでイタリア・ルネサンスのダビンチやラファエロらの作品を中心に見ていたので、どうしてもこれらの絵から出てくる磁力のほうが強く、ファン・エイクの絵に惹きつけられることはなかった。

だが、ゲントの神秘の子羊を見たときの衝撃はマグニチュード7くらいであった。
驚かされるのは鮮やかな色彩と凄く細密に描かれた草花、そして人々が着ている
衣装や飾り物の高い質感。この神秘の子羊を見るためにわざわざゲントを訪れ
る美術愛好家が沢山いるというのがよく分かる。ファン・エイクの最高傑作を見た
という充実感がまだ抜けないでいたら、昨日の新日曜美術館でこの画家の
詳しい解説をしてくれた。

取り上げられた絵は右の“アルノルフィーニの結婚”(部分)。サブタイトルは“密室
のトリック”。この絵は昔、ロンドンのナショナル・ギャラリーで見た。右の妻の着て
いる衣装の緑が強く印象に残ってるのだが、イタリア・ルッカ出身の夫、アルノル
フィーニのちょっと気持ち悪い顔がダメで、あまり見ず、他の絵に向かったのを
かすかに覚えている。同じファン・エイクの作品ならルーブル美術館にある“ロラン
の聖母”やドレスデン美術館所蔵の“三連祭壇画”に魅力を感じる。

“アルノルフィーニの結婚”で描かれてるものは夫妻を除いてみな何かの象徴だ
という。例えば、犬は忠誠を表すとか。イコノロジー(図像解釈学)の権威、パノフス
キー(ユダヤ系ドイツ人)がこの象徴を体系的に分析したらしい。面白かったのは
ファン・エイクが新たにはじめた油絵具の使い方、3つの遠近法、光の表現。
この絵を見るとフェルメールの室内画を連想する。絵を描くとき、いろいろ構想し
たフェルメールのようにファン・エイクも早描きで驚異的な細密描写を生み出している。
今、北方美術の天才画家、ファン・エイクの絵が頭のなかに大きく入り込んでいる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.08.28

大リーグ熾烈な戦い

大リーグ、ヤンキースは今日の試合で劇的な逆転サヨナラ勝ちをおさめた。
対戦相手のブリュージェイスに8回の時点で4点の差をつけられていた
が、9回裏、一挙に5点を獲り、ゲームをひっくり返した。東地区首位のレッ
ド・ソックスが敗れたため、ゲーム差は1.5に縮まった。

最近の松井は2番を打っている。5番はジオンビー。松井のバットは好調で、
打率は0.302、ホームラン20本、打点98.打点が多いので監督のトーリ
からは絶大な信頼を得ている。とにかく、松井はチャンスに強い。中心選手
に期待されるのは打点。いつも冷静でランナーを返す松井のバットに日米の
多くのファンが熱い声援を送っている。レッド・ソックスとの戦いはまだわからな
いが、松井の活躍で地区優勝かワイルドカードかいずれかで、ヤンキースが
プレーオフに進出する可能性が出てきた。

続きを読む "大リーグ熾烈な戦い"

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2005.08.27

鎌倉散策

152鎌倉で久しぶりに寺めぐりをした。鏑木清方記念館によく行くので小町通りの賑わいを実感することが多いのに、円覚寺などのお寺の前は素通りしていた。

家から鎌倉までクルマを走らせると、最初に円覚寺が見えてくる。前回、ここへ来たのは15、6年前のこと。入り口の場所、寺の中の建物の配置をすっかり忘れている。まずは国宝の舎利殿を目指したのだが、禅の修業が行われている
ため、中に入れないとの表示がある。

ええー!前は舎利殿の写真を撮ったハズだが。目玉がNGとは残念でならない。
隣にある北条時宗のみたまやである開基廟に入ったとき、受付の方が、舎利殿は
11月1、2、3日と正月三が日しか公開してないと教えてくれた。いつからそうなった
のか?ここには国宝がもう一つある。石段をだいぶ登ったところにある洪鐘(おお
がね)。鋳造されたのは1301年。国家の安泰を願って、北条貞時が寄進した、
鎌倉時代の代表的な梵鐘である。次に行こうと思ってた建長寺は信者の会で駐車
場が使えず、已む無くパス。

右の大仏さんにも随分ご無沙汰していた。近くに寄って見ると、やはり大きい。
奈良の大仏さんと同様、存在感がある。1252年に造られた青銅の大仏は高さが
11.32mある。雨風に晒されてる分、傷みがひどいと昔、TVで報道していた。
旅をして感動するのは雄大な自然に遭遇するとか、人が作った巨大なものを見た時
だが、この大仏さんと奈良のは日本でみれる大きなものの代表と言っていい。
20円払うと、大仏の中に入れる。高い鋳造技術を駆使してこんな大きな大仏を造っ
ていた。日本のモノ作りの原型かもしれない。

大仏の近くにある長谷寺にはじめて行った。ここの観音像は有名。期待して日本一
大きな木造観音をみた。金色をした観音様は高さが9.18mある。仏像を沢山見てきた
がこの観音は確かに大きい。境内から由比ガ浜が見える。こんないいお寺に
もっと早く来ればよかった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.08.26

トレドのグレコ

324NHKの番組、探検ロマン・世界遺産でスペインのトレドが取り上げられた。トレドを訪れたのはもう20年くらい前になるので、記憶がだいぶ薄れている。で、スペインにまた行く機会があれば、トレドを再訪しようと決めている。

トレドの町で一番印象深いのが大聖堂とエル・グレコの絵。ここにはグレコの傑作中の傑作がある。それは右の“聖衣剥奪”と“オルガス伯の埋葬”。中でも“聖衣剥奪”における光輝くキリストの
真紅の衣装が目に焼きついている。

これほど心を揺す振られた赤は他には、ティツィーノが描いた“聖母被昇天”のマリアの衣装くらいしかない。グレコは若い頃、ヴェネツイアでティツィアーノやティントレットから色彩効果や構図を学んでおり、ここでの成果とミケランジェロの人物表現により独自の画風を作り出した。

トレドで観たグレコの絵で忘れられないのがもう一点ある。“改悛する聖ペテロ”。
ペテロの目から今にも涙がこぼれそう。キリストの弟子であることを否認したペテロ
が悔悛して涙を流す場面である。油絵の威力をこれほど感じた絵はない。今、森
アーツセンターギャラリーで開かれているフィリップス・コレクション展にグレコの同名
のいい絵がある。この絵をみてトレドでの感動が蘇った。

エル・グレコ好きを決定的にしたのが1986年、国立西洋美術館で開催された
“エル・グレコ展”。もうだいぶ前の展覧会であるが、大回顧展だった。大原美術館
やプラド美術館他所蔵の“受胎告知”などの名作が目白押しで、会場に入って
から出るまで興奮状態だったのを覚えている。

プラド美術館にも傑作がいくつもあるが、最近では03年、ブタペスト国立美術館で
グレコのいい絵をみた。ここにはプラドについでグレコの作品が多くあるそうだ。そして、
昨年はギリシャ国立美術館でグレコの若い頃の作品に出会った(拙ブログ04/12/
11)。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2005.08.25

模写・模造と日本美術展

150東京国立博物館、平成館2階の向かって右側では現在、“模写・模造と日本美術展”が開かれている(9/11まで)。

この展覧会がはじまったのは知っていたが、平常展の方に関心が高く、模写展はパスしてきた。が、模写展が遣唐使展と連動しているので、ここもぐるっと見てきた。

事前情報が全く無かった分、驚きも大きかった。模写や模造する人が古今のビッグ
ネーム。かれらの手になる絵画、仏像、工芸品の忠実な模写・模造は出来栄えが素晴
らしく、原本を見た気分になる。コピー品をつくる目的は作者の技術向上、創造の
心得を原本に学ぶところにあるかもしれない。観る側にとってはなかなかお目にか
かれない原本の雰囲気を模写により味わえるというメリットがある。今回このメリットを
感じた作品がいくつもあった。

例えば、ボストン美術館が所蔵してる“平治物語絵巻”の模写。3点ある平治物語絵巻
のなかでも最高傑作といわれるのがこの絵。燃え上がる炎の迫力をいつか見た
いと願っていたが、模写ではあるが思いもかけず実現した。また、前田青邨らが手が
けた“高松塚古墳壁画”にも感動した。本物の壁画は関係者しかみれないのだから、
模写がみれるのは有難いこと。画技の高い前田青邨の模写なので、本物と変らないと
思ってみた。

そして、追っかけていた仏画、右の“阿弥陀聖衆来迎図”(国宝)に出会った。描き方
が上手いのか模写が気にならない。来迎図は臨終が近い人のもとに阿弥陀が来迎し、
浄土の世界に連れていく姿を描いたもの。中央の阿弥陀如来とその周辺の僧と供物を
持つ菩薩は一つの雲上に乗っている。前に、先導する観音菩薩と勢至菩薩。来迎の
タイプはいくつもあり、知恩院のものは往生する人を画中に描き入れている。

この模写は下村観山らの制作であるが、同志の横山大観は雪舟の山水図を、菱田春
草は仏画の一字金輪像を描いている。こうした過去の名画を再生する技を持っている
ところが凄い。絵画だけでなく、正倉院宝物の螺鈿作品など工芸品にも圧倒される。
模写・模造ということが表記されなければ、間違いなく本物と思ってしまう作品が多か
った。こんなお宝の展覧会を危うく見逃すところだった。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2005.08.23

遣唐使と唐の美術展

149東京国立博物館で開催中の“遣唐使と唐の美術展”を鑑賞した。中国の美術品で主に興味があるのは兵馬俑と磁器と玉の飾り。この展覧会、最初は乗り気でなかったが、招待券をもらったので、遣唐使の情報となにか磁器のいい作品があればと思い出かけた。

たまに予想より実際のほうがずっといいことがあるが、今回は予想がいい方にハズれたいい例。中国の博物館からハッとする作品が来ている。そして、驚くのは
国内の美術館が所蔵している名品。

特に、東京国立博物館、兵庫・白鶴美術館、出光美術館、五島美術館、永青
文庫、静嘉堂文庫から出品された唐三彩に目を奪われた。2年前訪問した白鶴美
術館からは重文の金銀器と三彩の鳳首瓶などがズラリ。前は一部しかみてな
いので、目の前の名品に見蕩れていた。中国の洛陽博物館蔵からきた三彩も
色が鮮やかで魅了される。

作品の中で特に気に入ったのが右の“加彩楽舞女子”と名がついた傭(よう)。蝶の
ような形の髷(まげ)を結った舞女2体と座ってる6体の楽女。ふくよかな顔が愛ら
しい。これまで同様の傭を1,2体で見たことはあるが、こんなに大勢の女の傭に
お目にかかったのははじめて。因みに、傭(よう)とは墳墓に副葬するために作られ
た人間の像のこと。秦始皇帝の兵馬俑抗から出土した兵士の陶傭は日本にも
度々やってくる。

04年、中国の西安で遣唐使の留学生、井真成(せいしんせい)の墓誌が発見された
という。井真成は阿部仲麻呂らと共に19歳で入唐し、36歳で亡くなった。
井真成は中国人風の名前で、渡来系の葛井(ふじい)氏の一族とみられている。
古い遣唐使に関連する資料から留学生の苦難や努力が偲ばれる。日本と中国の
長い交流の歴史を再確認するいい機会であった。

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2005.08.22

Travel Baton

TakさんからTravel Batonを受け取りました。出された質問で過去の
旅行を振り返るいいきっかけになりました。
☆今までで一番良かった国内旅行先
仕事の関係で東京、名古屋、広島にいましたから、日本全国かなり
旅行しました。思い出の観光地を順位をつけずに挙げると。。
 ◎松島ーーこんな素晴らしい島巡りは他にない。
 ◎阿蘇山ーーとにかく雄大
 ◎東尋坊ーー絶壁の岩柱、日本海にある同様の奇観では一番。

☆今までで一番良かった海外旅行先
一番感動するのは大きなものとか雄大な自然景観。
 ◎グランドキャニオン&モニュメントバレーー体が振るえるくらい広くて雄大
 ◎エジプト、アブシンベル宮殿ーーこんな大きなファラオの石像を見たことない
 ◎トルコ、カッパドキアーー世にも不思議なキノコ形の突起物が面白い

☆これから行きたい国内旅行先
 ◎羽黒山にある五重塔(国宝)
 ◎札幌、函館以外の北海道の観光地
 ◎奥入瀬

☆これから行きたい海外旅行先
 ◎桂林
 ◎敦煌
 ◎イグアスの滝

☆最後にこのバトンを渡す方
 国内をよく旅行されてるおけはざまさんに渡したいと思います。

| | コメント (4) | トラックバック (2)

2005.08.20

祝駒大苫小牧 夏連覇

夏の全国高校野球選手権大会で、駒大苫小牧が京都外大西を破り、
優勝した。夏の甲子園、連覇は57年ぶりの偉業だ。戦前、駒大苫小牧が
ここまで勝ち進むのを予想しなかった人が多いなか、選手は一戦毎、
逞しくなり、なんとまたも深紅の大優勝旗を北海道にもたらした。
選手の健闘に拍手、拍手。

昨日の準決勝で大阪桐蔭を破った駒大苫小牧のほうが、ちょっと力は
上かなと思っていたが、京都外大西も一時3対3の同点とするなど、
勝負はどっちに転ぶかわからなかった。最後は駒大苫小牧が2点の
リードを守り、全国の高等学校の頂点に立った。

続きを読む "祝駒大苫小牧 夏連覇"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.08.19

セミやトンボの思い出

148今、住んでる家の周りにセミは沢山いるのだが、トンボは見かけない。小学校の頃はトンボ獲りとセミを捕まえるのが夏の遊びのかなりのウェート占めていた。

セミの場合、透明の羽をもった熊ゼミを追っかけ回した。あぶらゼミよりだいぶ大きく、鳴き方は“シャムシャム、、、”と威勢がいい。とまった木に抜き足、差し足で近づき、網でさっと獲る。寸前で逃げられることも多いが、かっこいい姿の
熊セミを手に入れたときの喜びは格別。

盆を過ぎるとつくつくぼうしの鳴き声がかしましい。つくつくぼうしはのんびりして
おり、手でよくとった。このセミは逃げるとき、なぜか水っぽいものをかける。中国山
地をクルマで走ると、ひぐらしのカナカナという鳴き声が至る所でするという感じだった。

トンボ獲りのハイライトは銀ヤンマ。これを獲るのは難しい。そこで、色々作戦を立
てる。小さいながらも一生懸命考える。まず、場所。河沿いや普通に飛んでるのを捕
まえるのは至難の技。これは無理なので、近くにある長方形をした蓮が生えてる
貯水池のようなところで待機する。銀ヤンマはある一定間隔でここへやってくる。面白
いことに、銀ヤンマはこの貯水池を四角に回る習性をもっている。そして、角のところ
でちょっと停止して、また次の角っこに向かっていく。このわずかに停止するところ
を狙ってトンボ網をひょいとかける。

だが、この方法は効率が悪い。そこでもっと確実な獲り方を考える。その方法とは。。
これは高等戦術も含んでいる。ときたま、銀ヤンマのつがいが貯水池にやってくる。
このつがいのメスを捕まえ、オス獲りの武器にする。オスの銀ヤンマが飛んできた
とき、糸で結んだメスをぐるぐるまわすと、オスはこのメスと交尾をしようとする。このと
きを逃さず、さっと捕まえるのである。メスの銀ヤンマを手にするといくらでもヤンマ
がとれる。だから、つがいが現れるともう、興奮状態で必死になって追っかけた。

メスがいなくてもちょっと工夫すれば、偽メスをつくることができる。きゅうりとかかぼ
ちゃの黄色い花を、捕まえたオスの青い胴体に塗り、メスの黄色い胴体に見せかけ
るのである。この効果は大で、本物のメスと錯覚して、オスはやってきて交尾しようと
する。これは本物のメスとは違うと気づいて、メスから離れようとする瞬間を捕まえる。
これで何匹捕まえたことやら。あの頃はこんなトンボ獲りに夢中だった。

右の絵は速見御舟が描いた“菊花”。白と黄色の菊の周りを赤トンボが飛んでいる。
昨年秋、目白にある講談社野間記念館であった日本画展にこの絵が出品された。
速水は蟲(むし)が好きで、トンボ、蝶、蛾、蜘蛛、カマキリなどを描いている。
超写実力で観る者をあっとさせる御舟の生き物にはいつも惹き込まれる。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005.08.18

村上隆のとんがり君と四天王

147六本木ヒルズの中に毛利庭園というのがある。Takさんのブログで、ここの池に村上隆が制作した、高さ7mの巨大彫刻、“とんがり君と四天王”があることを知り、訪問の日程を調整していた。

村上隆の作品に大変興味があるものの、これまでこのアーティストの作品に縁がなかったので、今回は興味深々でとんがり君と対面した。

とんがり君の目はちょっとパンダの目に似ている。蓮の台座の上に蛙がおり、その
上にとんがり君がいる。胴体からは18本の腕がでている。東京芸大に学び、日本画
の博士号をとっている村上隆だけあって、この多数の手は仏像の千手観音像を
意識している。頭のとんがりは交信のためのアンテナ。とんがり君の周りにいるのが
四天王。ここでも日本の仏教彫刻をとりいれ、多聞天にたもん君、増長天にぞうちょう
君、広目天にこうもっ君、持国天にじこっ君と夫々名前がついている。

とんがり君誕生の話しがチラシにあり、村上隆のやさしい人柄が窺がえる。このと
んがり君は、アメリカにある末期がんの子供たちが暮らす病院のエントランスに置かれ
る作品として考えられたものらしい。彼らに“君たちは生まれて来て祝福されたん
だよ”というメッセージをなんとか伝えたかったと村上隆は語っている。今回のとんがり
君は4作目で、他の3つはスイスやフランスのコレクターが所蔵してるとのこと。
とんがり君はアニメのキャラクターのような作品だが、愛嬌があって、やさしい。日本
美術を知り尽くした村上は、日本文化の素朴でやわらかいところをエキスとして取り
出してきたのかもしれない。

村上隆は現代アートの分野で評価が高い。有名なIT長者がパトロンになるなど、村上
作品は近い将来、1億円の値がつくと言われている。村上隆の絵をまとめて見たい
という願望が最近、つとに膨らんでいるのだが、不思議なことに銀座でふと立ち寄った
ギャラリー OGATAに村上隆と奈良美智があった。こんなところに村上の作品
がァー!!。聖書の言葉、“求めよ、さらば与えられん”である。これから、村上隆の
作品に縁があることを期待しよう。

| | コメント (4) | トラックバック (2)

2005.08.17

鏑木清方記念美術館

146鎌倉の小町通りを北に歩いて7分位のところに鏑木清方記念美術館がある。ここでは、美人画の名人と評判をとった日本画家、鏑木清方(かぶらききよかた)の作品を定期的に替えて展示している。

7/29から9/4までは“清方の避暑地の思い出”と銘打ち、夏にちなんだ作品が並んでいる。料金は200円。昨年、横浜に戻ってからここへは美人画に惹かれて、3回訪れた。

そして、今回のお目当ては右の“朝涼(あさすず)”。ちょっと前の迷宮美術館の
日本美術特集でこの絵が紹介され、ここの学芸員は最高傑作と評していた。
最高傑作の絵が出ているなら、見逃すわけにはいかない。モデルは鏑木の長女。
早朝、畑の近くを散歩するところを描いている。長女の着ている着物の薄紫と
草木の緑が朝の空気を見事に捉えている。横のポーズがユニーク。

鏑木清方にはこの絵の2年後の1927年に描いた、“築地明石町”という美人画
の傑作がある。綺麗な女性の立ち姿の絵なのだが、この立ち姿は“朝涼”の
長女を参考にしている。“築地明石町”は“昭和の日本画100選”で1位の横山
大観の“夜桜”についで2位にランクされるほどの名画なのであるが、個人の所蔵で、
なかなか出てこない。近代日本画の代表作をかなりつぶしてきたが、この“築地
明石町”が最後に残っている。ここの記念館に下絵があるためか、愛好家から、
この絵に関してよく質問されると館の人がおっしゃっていた。

最近、鏑木清方のいい絵に恵まれている。MOA美術館の京近美所蔵名品展に
でていた“たけくらべの美登利”、ホテルオークラの“きらめく女性たち”にあった
“七夕”(大倉集古館)、“二人づれ”(ウッドワン美術館)。そして、横浜美術館
コレクション展の“春宵怨”。

これらに加え、これまでみた鏑木清方の名画をあげると。一つは福富コレクション
の“薄雪”。福富太郎氏は浮世絵や鏑木清方の収集家として有名。この“薄雪”は
“二人づれ”と似た絵で、妖艶ぽい女性の顔に魅せられる。流石、福富氏の眼力は
高い。もう一つは東近美にある“墨田河舟遊”。大きな屏風絵の傑作。この絵は
8/30~10/2の平常展にでてくる。

| | コメント (6) | トラックバック (1)

2005.08.16

渡辺貞夫とジャズ

2,3日前、栃木県宇都宮市の繁華街でジャズプレイヤーの渡辺貞夫が若い
打楽器奏者たちと一緒に愛知万博で演奏する曲のリハーサルをやっていた。
渡辺貞夫がまだ、現役で演奏活動をしているのをみて少々びっくり。今はジャズ
を聴くことはほとんどなくなったが、30歳くらいまではジャズの新着レコードを
月に何枚も買っていた。

渡辺貞夫、通称、ナベサダの音楽もよく聴いた。当時、日本のジャズメン
で人気があったのはアルトサックスのナベサダ、トランペットの日野皓正。
ナベサダのレコードでは“パストラル”というのがお気に入りだった。柔らかい
アルトサックスの音色が田園風景のイメージを掻き立てた。その後、渡辺貞夫
はアフリカに何度も演奏旅行し、現地の原始的な打楽器の激しいリズム
をとりいれた新しい音楽をつくりだした。ナベサダのジャズはこのあたりまでで、
その後の動きは全く知らない。が、宇都宮でアフリカの若い打楽器奏者
と競演してたのをみると、アフリカ路線を今も継続してるのだろう。

続きを読む "渡辺貞夫とジャズ"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.08.15

パリ・ギメ東洋美術館

538金曜の世界美術館紀行でパリにあるギメ東洋美術館を紹介していた。15年くらい前敢行したパリ美術館巡りで、ここも訪れた。

このギメ美術館で、インドや東南アジアの仏像の傑作を見たのがきっかけとなり、以後アジアの仏像彫刻に興味が湧き、日本で開催されたアジア系仏像の展覧会に足を運んできた。幸いにも、出光美術館が1996年、“ギメ美術館展”を企画してくれたので、
本場の名品をまた見ることができた。

また、02年から03年にかけて、東博などで“パキスタン・ガンダーラ、インド・マトゥラー彫刻展”という凄い展覧会があった。タイへ出張で行ったとき、バンコク国立博物館を訪ね、仏像の数々を鑑賞したのも貴重な体験。

パリのギメ美術館の記憶が薄れかけているのだが、ギリシャ彫刻のようなガンダ
ーラ様式の傑作、“菩薩立像”とクメールの仏像はよく覚えている。“菩薩立像”は出光
の展覧会にも出品された。髭をはやし、気品のある顔をした菩薩が堂々と立って
いる。02年にあった“パキスタン・ガンダーラ展”にはこれとよく似た仏像が何体もあり、
感動の連続だった。ギリシャ彫刻の影響を受けた写実的でどっしりとした仏像である。

11~13世紀頃、今のカンボジアを中心に栄えたクメール王国で制作された仏教彫
刻も印象深い。魅力のポイントは厚い唇とアンコールの微笑み。右の“ナーガに護られ
た仏陀座像”(部分)をじっと見ていると、高貴な美しさに後ずさりするような感じだ
った。口元に謎めいた微笑みをたたえている。他にも“ターラー菩薩座像”という傑作
がある。二つとも、出光美術館にやってきた。バンコク国立博物館にも、8世紀頃の
クメールで作られた青銅の菩薩像があった。タイの東部は当時、クメール王国の
支配下にあったので、ここにもクメール様式の名品が残っている。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2005.08.14

イサム・ノグチ

144彫刻家、イサム・ノグチが昨日放映されたTV東京の“美の巨人たち”に登場した。わずか30分の番組だったが、非常に感激した。

イサム・ノグチの名前は前から知っている。が、この世界的な彫刻家の作品を実際に見たことがほとんどない。箱根の彫刻の森にあったかどうか?覚えてる彫刻は04年4月、森美術館であった“MoMA展”に出てた右の大理石でつくられた“柱頭”。ジャン・アルプの
作品と似ていた。もう一つ、横浜美術館にある黒と緑の海蛇みたいな彫刻もよく
記憶している。

このイサム・ノグチがマスタープランを作った札幌市にある“モエレ沼公園”が今年7月、
17年の歳月をかけて完成したという。ノグチが1933年の頃構想したプレイマウンテン
(遊び山)がようやく日本で実現したのだそうだ。189ヘクタールの公園に造られた
人工の山、噴水、黄色や青の色をした球体や立方体の遊具などをみて、北の大地、
札幌に世界に誇れる素晴らしい公園が出来たなと、拍手をしたい気持ちになった。
番組のタイトルは夏休みに行きたい所とあるが、機会があれば訪ねてみたい。

ピラミッドの階段に使われている3000個の石は香川県牟礼町産の花崗岩だそ
うだ。イサム・ノグチは48歳の時(1952年)、牟礼町に住み、花崗岩を使った彫刻を
制作している。若い頃、仕事で高松に1年住んだことがあり、職場にも牟礼から通
ってくる人がいたりで、懐かしい感じがする。が、その頃は花より団子という調子が
強く、イサム・ノグチのことなど知りようがない。今から思えば、もっと早くイサム・ノグ
チ庭園美術館に気がつけばよかったなと悔やまれる。美術鑑賞には得てしてこんな
ことがある。

この番組でイサム・ノグチの経歴がすこしわかった。パリに留学してたとき、ルーマニア
の抽象彫刻家、ブランクーシの影響を受けたらしい。そういえば、ノグチの作品に
はブランクーシを感じさせるものがある。イサム・ノグチの本を持ってないので、作品群
がどこにあるのかわからない。MoMAやブッゲンハイムにありそうな気がするが、どう
いう訳かここでノグチの彫刻を見たという記憶がない。常設展示ではない?観る側
の意識にノグチの名前が希薄なため、見ててもすぐ忘れたのかもしれない。次回、
NYを訪れるときはきっちり作品を目に焼き付けようと思う。

| | コメント (2) | トラックバック (2)

2005.08.13

夏の昆虫

143昼のローカルニュースで夏休みの子供たちが喜びそうな話題がでてきた。茨城県那珂市の博物館では今、世界中から集めてきたカブト虫やクワガタを展示しているという。生きた本物もいるようで、訪れた子供たちは楽しそうに見ていた。

中学校にあがる頃までは、トンボやカブト虫、川魚獲りなどが夏の楽しみだった。今の子供たちのように家のなかでゲーム機に夢中になるより、外で自然の
生き物を追っかけたりする遊びが中心。なかでも、カブト虫やクワガ
タ獲りはワクワクする遊びだった。

近くに住んでいた友達はこの昆虫獲りの名人で、部屋にはすごく大きなカブト
虫や立派な角をしたクワガタが何匹もおり、いつも憧れのまなこで眺めていた。
こういう子供はいまから思うと超お宅で、友達付き合いもあまりなく、誰にも
教えない秘密の場所でひたすら形のいい、また大きなカブト虫、クワガタを
追っかけていた。

その彼が一度この昆虫獲りに誘ってくれた。出発は朝早く、6時くらいに出かけ
たと記憶している。なんでも早朝でないと、いいクワガタやカブト虫は獲れない
らしい。山につくと、これが大変。大きなスズメ蜂がびゅんびゅん飛んでる。名人は
いい昆虫がいるスポットにむかって怖いスズメ蜂をもろともせず、進んで行く。この
とき位、この友人が大きくみえたことはなかった。この探検の成果は予想以上で、
いいクワガタにありつけた。

カブト虫とクワガタを比べるとやはりクワガタの方がカッコいい。よく、角に挟ま
れて痛い目にあった。現在の市場価値でカブト虫とクワガタはどっちが高い
のだろうか?デパートの昆虫売り場で何十万円の値がついたクワガタをみた
ことがある。また、東南アジアのタイから輸入されたクワガタが高額で取引
されていた。国内で獲れるカブト虫やクワガタの価値は低いのだろうか?

右の絵は円山応挙の写生帖に載ってる“カブト虫とバッタ”。この作品は03年
9月、大阪市立美術館で開催された“円山応挙展”に出品された。応挙は
この他、蝶、蛾、セミ、カタツムリ、蛙を博物図鑑で見るように上手に写生して
いる。加山又造にも昆虫の絵がある。6月にあった版画展に一枚の葉っぱ
にとまるクワガタの作品があった。加山はクワガタが好きなのか、画集に
クワガタを描いた日本画がある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.08.12

大リーグ後半戦

アメリカ大リーグの戦いも残り48ゲームくらいのところにきた。日本人
大リーガーの所属するチームがプレーオフに出られるのか、ワールドチャ
ンピオンになれるか、これからの戦いに目が離せない。

現時点で確実にプレーオフに出れそうなのは田口のいるカージナルスと
新人井口の所属するホワイトソックス。カージナルスはナショナルリーグの
中地区で2位を10ゲーム以上引き離す、断トツの勝率で勝ち進んでいる。この
強いチームのなかで、田口は最近、3番に起用されるほど高い評価を
得ている。今日もシカゴカブスのあの大投手マダックスに対し、2本のヒットを
放った。名監督ラルーサの信頼の厚い田口は今、最も充実した大リーグ
生活を送っている。

続きを読む "大リーグ後半戦"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.08.11

モロー展

142ギュスターヴ・モローは好きな画家のひとり。代表作の“出現”を見たくてパリのモロー美術館にも足を運んだ。もう10年くらい前のことなので、鑑賞した作品についても記憶が薄れてきている。

だが、このモロー美術館は時折日本に所蔵品を持ってきてくれるので助かる。1995年の国立西洋美術館と今回のBunkamura。また、国立西洋美術館が02年に開催した“ウィンスロップ・コレクション展”にもモローの“出現”や“キマイ
ラ”などのいい絵があった。このときのモローの印象が非常によかったので、この
画家に対する評価が決定的になった。

で、Bunkamuraのモロー展。初日に早速見てきた。案内によると油彩の48点は
通期の展示で、水彩・デッサンは前期、後期に分けてでてくる。当初油彩も半分々
になるのかと心配していたが、日本画の展覧会のようなことはなかった。専門
家ではないので、水彩や下絵のデッサンを全部みる気はない。油彩で十分。

この油彩画をみて、モローの絵の特徴がわかった。ものすごく丁寧に仕上げられ、
これぞ幻想画家の真骨頂という絵があるかと思えば、これまだ未完成じゃない
のと感じる細部や背景がぼやけた絵もある。実はチラシに大きく載っている
代表作“一角獣”を見るのを楽しみにしていたのだが、よくみると濃厚な色をもつ
退廃的な絵のイメージとは異なっていた。色塗りが浅い感じで、オルセーに
ある“オルフェウス”やメトロポリタンの“オィディプスとスフィンクス”と比べると魅力
度は落ちる。

今回でていた作品にはオルフェウスのように感動する絵が残念ながらあまりない。
気に入ったのは“エウロペ”、“ガニュメデス”、右の“旅する詩人”、“出現”、
“ゴルゴタの丘”、“聖セバスティアヌス”。水彩の“ケンタウロスに運ばれる死せる
詩人”が輝いている。“旅する詩人”は色が一番よくでており、詩人の顔が綺麗。
詩人の後ろにいる片足をあげた有翼の馬、ペガサスに存在感がある。

風景をぼかして彩色するのは気にならないが、人物の輪郭、特に顔の部分をぼか
したり、抽象的に描いてあると歴史画、神話画としての魅力がなくなる。ウィンスロッ
プ・コレクションでみたモロー作品の素晴らしさが強く残っているためだろうか、今回は
ちょっと期待はずれだった。なお、展示は10/23まで。

| | コメント (2) | トラックバック (2)

2005.08.10

ホテルオークラの秘蔵名品展

141ホテルオークラでは今、恒例のアート・コレクション展が開かれている(8/25まで)。今年のテーマは“ヨーロッパと日本、きらめく女性たち”。

昨年はじめてこの展覧会にお目めにかかったのだが、なかでも近代日本画は横山大観、小林古径、安田靫彦、前田青邨、速水御舟の名品がずらっと揃っていた。大倉集古館自慢の名品、大観の“夜桜”、前田青邨の“洞窟の頼朝”などを見たときの感動がいまでも鮮明に蘇る。

今回は国内の美術館から“きらめく女性たち”に相応しい洋画、日本画が集められ
ている。西洋洋画が24点、日本洋画が24点、日本画が25点。海外の画家の
描いたいい女性画が日本の美術館や個人のもとにある。ブーシェの“ラブレター”、
キスリングの“スペインの女”、ピカソの“青い背景の婦人像”(山形美術館)、
モネの“カミーユ夫人”、カシニョールの“徹子像”など。

日本人画家が描いた洋画に対する興味は日本画に比べると低いのだが、藤田嗣治
とか岸田劉生の絵には目がない。藤田のいい絵が5点あった。その一つはひろし
ま美術館所蔵の“裸婦と猫”。そして、追っかけていた岸田劉生の“二人麗子図”
(泉屋博古館分館蔵)に出会った。この作品と03年、ふくやま美術館であった
“岸田劉生・麗子展”により麗子像は済みマークがついた。

この展覧会で一番期待してたのが日本画。美人画では、上村松園、鏑木清方
(かぶらききよかた)、鏑木の弟子、伊東深水が頭抜けている。出品数では伊東深水
が最も多く、6点ある。鏑木3点、上村2点。どの絵も素晴らしい美人画であるが、
お気に入りは伊東深水の“吉野太夫”(山種美術館)、“春宵(東おどり)”、上村
松園の“蛍”(山種美術館)、鏑木清方の右の“七夕”(大倉集古館)、“二人づれ”
(ウッドワン美術館)。もう一点、奥村土牛の“舞妓”(山種)も見逃せない。

伊東深水の“春宵”は“昭和の日本画100選”に選ばれている名画。やっとこの
絵に会えた。楽屋で準備をする色っぽい芸者衆、細かく描かれた鏡や照明など
に目を奪われる。鏑木清方の“七夕”、“二人づれ”に感動した。二人づれは
前に一度みて、惚れ込んだ一枚。白く化粧した綺麗な顔。そして、柄まで細かく
描かれた着物。この絵を超える美人画をまだ見たことがない。

“七夕”(右隻)はかつて展示替えで見れなかった作品。左の盥(たらい)の水に
銀河を映し、その明かりで針の糸を通そうとしているちょっと面長で切れ目の
女性がとても美しい。また、左隻の飾り台に並べられた筝(そう)、五色の糸車
などにも目がいく。最近見た日本画では一番の傑作。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005.08.09

大谷コレクション肉筆浮世絵展 その二

140ホテルニューオータニの中にある美術館で開催中の大谷コレクション肉筆浮世絵展(後期)をまた見てきた(9/4まで)。

後期の作品数は肉筆41点、版画9点。目玉は江戸初期の風俗画、“舞踊図”(重要美術品)。踊りのポーズをとる4人の舞妓(ぶぎ)が一扇に一人ずつ描かれている。見所は着物の柄。永楽通貨の模様を散らした小袖をまとう舞妓がいたり、扇子の柄が入った着物
もある。綺麗な青や赤、水色の地にモダンな模様が配された小袖を見てるだけ
でも楽しくなる。

同じ舞踊図の絵がもう二つある。一つはサントリー美術館所蔵のもの。もう一つ
は京都市蔵(共に重文)。この舞踊図は6人いる。どの舞妓もハットする意匠
の小袖を着ている。大谷の舞踊図は保存状態が少し劣るかもしれない。それ
で重美となってるのだろう。後期にも勝川春章の“初午図”という名品がある。
宮川長春の“髪すき十郎図”もいい。宮川長春については、今年、東博で
“風俗図巻”(重文)という優品を見て以来、一目置くようになった。

今回一番驚いたのは鈴木其一が描いた右の“吉原大門図”。江戸琳派
酒井抱一の弟子で琳派の画風を更に発展させた鈴木其一にこんな風俗画が
あったとは。同じような思いを昨年あった琳派展でもした。ここに出品された其一
の“群舞図”はびっくりするほどの名品だった。琳派の装飾性豊かな風景画と
風俗美人画がにわかには結びつかないのだが、この絵には心打たれた。

“吉原大門図”では、引手茶屋“山口巴屋”の前を遊女や酔客が行き交う様が
臨場感一杯に描かれている。手前にいる目の悪いあんま師は仕事に行くのであろ
うか。夜の遊郭の賑わいと喧騒が伝わってくる。最近よくお目にかかる英一蝶の
生き生きとした群像図を見るよう。

この頃、江戸は人口100万の大都市だった。夜の吉原に繰り出す金持ち商人
や遊び人旗本はごまんといただろう。両国では一日3千両の賑わいがあった
といわれている。朝は青物市がたち、その商いで1千両。昼は広小路の見世物
で1千両。夜は花火など、隅田川の夕涼みでまた1千両。裏長屋では、1.5両も
あれば1ヶ月をどうにか暮らせたという。金に困らない輩にとって、遊興費
に天井はない。とてつもない金が吉原に落ちたのであろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.08.08

江戸物小説

139江戸時代の人情話、捕り物帖をテーマにした小説を定期的に読んでいる。好きな作家と作品をあげると。。

北原亜以子の“慶次郎縁側日記”(新潮社)、佐藤雅美の“物書同心居眠り紋蔵”、“半次捕物控”、“啓順”(以上、講談社)、“八州廻り桑山十兵衛”、“縮尻鏡三郎”(以上、文芸春秋)。

いずれもシリーズ化し、慶次郎縁側日記と物書同心居眠り紋蔵はNHKの番組
にもなった。単行本になるのは年に1冊のペース。いくつもシリーズがあるので、
1年でストックすると4,5冊にはなる。本を読むときはいくつかあるカテゴリー
をローテーションしながら、まとめて集中的に読破することにしている。今は二人の
作家の小説を楽しんでるところ。

北原亜以子の慶次郎縁側日記はもう9作になる。“やさしい男”とか“赤まんま”とい
った名前のついたショート話が一冊にまとめてある。主人公は現代の刑事にあた
る同心を昔やっていて、今は隠居の身の森口慶次郎や嫌われ者の十手持ち、蝮の
吉次。北原亜以子は新潮社の編集担当から、中年の男性がふと涙を流すようなものを
書いてくださいと頼まれたそうだ。

直木賞を受賞したこの女流作家の文章は本当に力がある。日々の生活に汲々としてる
江戸の庶民が止むに止まれず犯した盗みや、ダメ男が何度でも懲りずにする浮気
などがほろっとする文章で綴られている。昔の勧善懲悪スタイルの江戸物ではなくて、
超ワルがでてきたり、吉次のような鼻つまみものの十手持ちが、ちょっと人に優しく
することもある。

江戸時代には文字文化が発達し、武家社会の規則、犯罪歴、藩の出来事、商売など
に関する資料や文献はあるところにはどっさりあるという。よく、これらの資料を2000
万円くらいで古本屋などで購入すると本が書けると言われる。江戸時代のことは
今のところ北原、佐藤、そして高橋克彦の本で教えてもらうことにしている。

理解が進んだのは十手持ちや同心の仕事、犯罪とその量刑、死罪、島流し、江戸
所ばらいなど。一番面白いのは当時の十手持ちは町の嫌われ者であったこと。
お上からの給料は少なく、大半は町人を強請って生計を立てていたという。今でも
TVでやっている“銭形平次”のような善人の十手持ちは200%いなかった。読め
ば読むほど、岡っ引のワルさ加減がわかる。

例えば、ある呉服屋で何か盗まれたとしても、金額がそう大きくないときは、店の
主人は何事もなかったことにするという。なぜかというと、事件になると面倒なことがお
こるから。奉行所へ呼び出された時は、町役人が付き添うことになっており、後でこの
付き添い人には日当を払い、料理屋で食事を振舞うことが習慣になっていた。盗まれ
た金額よりこっちの出費のほうが大きいので、何もなかったことにしたほうが被害が
少ないのである。

ご丁寧にもこの盗みの案件を奉行所に持ち込むか、無しにするかという下交渉を被
害者は岡っ引と茶屋でする。その際、盗まれた家の者は十手持ちになにがしか
お金を握らせて、盗みがなかったことにしてもらう。これを引き合いを抜くという。小額
とはいえお金を盗まれた上、岡っ引にまたお金をせびられる。踏んだり蹴ったりで
ある。この引き合いを抜く交渉で得た金で岡っ引は飲んだり食ったりしていた。
町の者に嫌われるはず。

右のイラストは今の交番をもっと大きくしたような自身番屋の一角。小者が岡っ引。
同心もいろいろ袖の下を通されて事件をうやむやにすることがあったようだ。
賄賂に弱い役人は江戸の昔から変わらない。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2005.08.07

横浜美術館ベスト・コレクション

138横浜美術館は家からすぐ行ける美術館なので、平常展を見に度々足を運んでいる。7/29からはじまった“市民が選んだ横浜美術館ベスト・コレクション”を期待を膨らませて、鑑賞した。

ここの所蔵品は近代日本画から洋画ではセザンヌ、ピカソからダリ、マグリッド、ウォーホル、奈良美智。。まで幅広い。今回は市民から寄せられた“私が選んだこの1点”で抽出されたベスト25をはじめ名品160点が展示されている。

デュシャン展のときは、ここの学芸員が考えた独自の展示方法で作品が並べら
れていたが、このベスト・コレクションでつけられた各セクションのタイトルが面白い。
1.はぐくむ、2.はばたく、3.であう、4.みつめる、5.ゆめみる、6.生きる、
数ある作品のなかで気に入っているのが、近代日本画とシュルレアリスム絵画。

日本画は図録にある名画がかなり出ている。展示室に入って最初のところに
片岡球子の傑作、“富士”が飾ってある。先頃、葉山の神奈川県立近代美術館で
あった回顧展でこの絵に出会った。富士山とその裾野を、赤や黄色、緑、青の明るい
色面構成で装飾的に描いている。片岡球子は富士山を何点も制作しているが、
この絵が一番いい。他には小林古径の名画、“竹取物語昇天図”がある。これ
は東近美に出品されていた京近美所蔵の巻物と全く同じ昇天の場面。同じ年に
描かれている。また、お気に入りの鏑木清方の美人画、“春宵怨(しゅんしょう
えん)”があった。糸巻きの図柄の帯をして踊る女性は舞踊“娘道成寺”から
想を得ており、体を後ろにそらす姿が艶やか。

図録でみて、本物に会いたいと思ったのが右の中村岳陵(がくりょう)作、“砂浜”。
この画家の絵を見る機会は少ない。東近美でみたモダンな衣装を着た女性を
都会的な感覚で描いた作品が印象に残っている。カラリスト、福田平八郎と
グループを形成しただけあって、色使いが福田とか小野竹喬と似ている。洋画
のような日本画である。中村は写生を徹底的にしたそうで、画面の大半を占める
砂浜のでこぼこのつくり方にそれがでている。アクセントは3羽の鳥と横に
なびく空の雲だけだが、涼しげな詩情を感ずる絵である。

この展覧会、日本画の名品が揃っているが、ダリ、マグリッド、デルヴォーらシュル
レアリスムのいい作品がある。日本でシュルレアリスム絵画の質が高いのは
福岡市立美術館とこの横浜美術館。現代絵画でびっくりする作品があった。日本人
画家、遠藤彰子が描いた“街”(1983年)。画家の名前を知らず、はじめて見た
絵であるが、感動した。全体的に作品の質が高く、満足度150%の企画展で
あった。なお、展示は8/31まで。

| | コメント (4) | トラックバック (1)

2005.08.06

アカデミア美術館のティントレット

137昨日放映された世界美術館紀行にヴェネツィアにあるアカデミア美術館が登場した。5年くらい前、はじめてここを訪れた。

事前に得た情報では、この美術館にはジョルジョーネの代表作“嵐”、ヴェネツィア派絵画の巨匠、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼの作品が揃っていることで絵画愛好家の間では人気が高い。

ルネサンスの町、フィレンツェやカソリック総本山のローマにあるダヴィンチ、
ミケランジェロ、ラファエロらの画風とは一味違う、色彩豊かな絵画が東西貿易
で富を築いたヴェネツィアで花開いた。ヴェネツイアにはフランドルの北方
美術が流れ込み、油彩画が盛んになった。これでフレスコ画では出せない
鮮やかな色彩をもつ絵画が人々の注目を集めるようになる。この町にあるサン
タ・マリア・ディ・フラーリ教会の祭壇画にティツィアーノが描いた“聖母被昇天”
(1516年)の華麗な色彩が今も忘れられない。美しい聖母や下にいる使途、
そして天の聖父が着ている衣装の深紅が目にしみる。ティツィアーノの絵は
構図よりは色彩に魅了されることが多い。

ティントレットの作品をアカデミア美術館とサン・ロッコ同信会で鑑賞し、凄く
感動した。アカデミアにある右の“奴隷を救う聖マルコ”(1548年)は、よくある
宗教画とは何か違っている。それは聖マルコの描き方。奴隷を助けるために
空から現れた聖マルコは短縮法で描かれ、足を上にして、浮遊している。
ティントレットはこの独創的な構図により、主人から死刑を宣告された敬虔な
キリスト教徒である奴隷を聖マルコが突然現れ、救出する奇跡の場面を表現
した。30歳のとき制作したこの出世作以降、野口さんではないが宇宙遊泳
をしているような聖母やプット、アテナなどがよく描かれるようになる。

宙を浮遊する聖マルコをみて思い出す日本画がある。菅原道真の悲劇の物語
を絵巻にした“北野天神縁起絵巻”(13世紀前半)の巻六では、道真のたたり
で宮殿に落雷があり、火の粉が衣や頭に降りかかり、慌てふためく殿上人
が宙を舞う場面がコミカルに描かれている。このハットさせる構図の殿上人が
聖マルコに似ているのである。二人の画家は時空をこえて同じことを構想し
たのかもしれない。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005.08.05

MOAの京都日本画名品展

323今、熱海のMOA美術館では京都国立近代美術館が所蔵する近代日本画の名品を展示する特別展を開催している(8/28まで)。

京近美で企画展があったときは必ず平常展も鑑賞するようにしている。東近美にくらべ展示スペースが狭いので、出品数はあまり多くないが、土田麦僊の“大原女”のような近代日本画を代表する傑作に出会うこともある。

日本画を画家が活躍した場所で分けることがある。竹内栖鳳を頭とする京都派
と横山大観など東京の画家たち。京都派のなかで好きな画家は上村松園、
土田麦僊、小野竹喬、堂本印象、福田平八郎、池田遙邨。

今回の大半は京都派の作品。これに横山大観、加山又造、平山郁生、小倉遊亀、川端龍子らの名品がある。会場出口のところで購入した図録は04年12月に改訂された京近美編の“所蔵名品集”。ここに掲載されてる名品のかなりのものが出ている。狙い通り、いい絵が揃っていた。

赤丸がついた作品は。。麦僊の“罰”、一度名古屋で見たが、泣いてる女の子と
その隣で下を向いてる男の子が心に強く残っている。小野竹喬の“村道”、
福田平八郎の“花の習作”もいい。この二人は天性のカラリスト。気持ちをスキット
させてくれる色の配色に驚かされる。

今回一番見たかったのは池田遙邨の“うしろ姿のしぐれてゆくか山頭火”。いつも
参考にしている“昭和の日本画100選”にも載ってる遙邨の代表作。白い穂が
強風でたなびく夕暮れ、眼鏡をかけた漂泊の自由俳人、種田山頭火が一人、風に
飛ばされるように立っている。風が強い分、漂泊のイメージが伝わってくる。

明治の文人画家、富岡鉄斎の傑作、“富士遠望、寒霞渓図”がある。2度目の対面
だが、こんな富士の描き方があったのかと感動する作品。大画面の屏風なので
圧倒される。日本美術院系の画家では加山又造と平山郁生の大作がある。ともに
長く見ていたい名画。

また、女性画の優品が3点ある。右の上村松園の“虹を見る”(部分)、鏑木清方
(かぶらききよかた)の“たけくらべの美登利”、小倉遊亀の“舞妓”。美人画の名手、
鏑木の描く女性は本当に美しい。舞妓の絵では土田麦僊、奥村土牛、速水御舟
を思いつくが、小倉の舞妓はこれらに負けず劣らずの傑作。

上村松園の赤ちゃんを抱いた女性画は2つある。東近美にある“母子”とこの絵。
母子の赤ちゃんは向こうをむいてるのに対して、虹を見るでは横顔になっている。頭の
髪をちょこっと残し、母親と一緒に虹を見ている。松園の描く着物には高い質感がある。
花柄の着物を上品な色と細かい筆使いで描いている。中国画の嬰児とは違う、日本
の愛らしい赤ちゃん、そして綺麗な女性。上村松園の女性画をみるといつも心
がなごむ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.08.04

雪村

135東京国立博物館の日本画が今、面白い。企画展はパスして目指すは文化庁購入文化財展。

お目当ては曽我蕭白が35歳のとき描いた“群仙図”。5月、京博であった“曽我蕭白展”で見た群仙図にまた会えた(拙ブログ5/16)。

この絵は京博の所蔵と思っていたが、説明書では文化庁になっていた。それで、こうしてまたこの傑作を鑑賞できる。
京都のときと同じく、興奮状態で細部までじっくりみた。笑ってる子供たちの唇が
やけに赤い。嬰児の描き方からして妖艶モード。高価な岩絵具を惜しげもなく
使い、エネルギッシュだがちょっと毒のある画面を構成している。購入作品は平成館を
入ってすぐ右のコーナーに展示してある。“駿牛図”(重文)、“鼠志野草文大鉢”、
古筆手鏡“かりがね帖”、“つれづれ草”にも足がとまる。この文化庁展は9/4まで。

本館の平常展でもいい絵がいくつもあった。雪舟の“四季山水図、夏”(重文)、右の
雪村作、“蝦蟇(がま)・鉄拐(てっかい)”、久隅守景の“納涼図屏風”(国宝)、
“山水図”、円山応挙の“孔雀図”、“黄蜀葵(とろうあおい)に亀図”、英一蝶作、
“乗合舟図”、田能村竹田の“青山白雲図巻”、林十江の“鰻図”。

納涼図屏風は夏に相応しい絵。夕顔棚、その下で涼んでいる夫婦とその子供が薄
い墨だけで描かれている。右手で頬づえをついてる男のリラックスぶりがいい。英一蝶
作の“乗合舟図”は前回でていた“雨宿り図”と似た作風。武士や行商人や女などが
小さな船に乗っている。

今回、一番面白かったのは雪村の“蝦蟇・鉄拐”。右のは自分の分身をぴゅーと
吹く鉄拐仙人。孫悟空のように鉄拐はこの特殊な幼術を使う。左には蝦蟇仙人とぴゅー
と息を吐く三本足の蝦蟇がいる。この仙人は蝦蟇をつねにもてあそぶ。雪村が生きた
16世紀、蝦蟇・鉄拐という画題が広まっていたらしい。中国画などを参考にし、
雪村はユーモラスな蝦蟇・鉄拐図を仕上げている。曽我蕭白にも同じ絵があるが、
こちらは妖怪ぽく、恐ろしい。なお、雪村の絵は8/28まで展示してある。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005.08.03

岡本太郎

1347/31の迷宮美術館は昼は日本美術の特集をやり、夜は岡本太郎を取り上げていた。東京国立近代美術館の平常展で岡本太郎の作品を見ることがあるが、それ以外はこの画家に縁がない。

現代絵画に詳しくないので、日本人画家、とりわけ岡本太郎の世界レベルでの評価がどうなってるのかわからない。最近、NYで1億2千万円の値がついた草間弥生の絵のようにもてはやされてるのだろうか?

長く見ている日曜美術館で取り上げられたこともないし、東近美で回顧展が開か
れたこともない。日本人なら誰もが大阪万博の太陽の塔を制作した岡本太郎
の名前は知ってるのに、絵画作品の代表作は何かと問われると返事に困る。
東近美にある“燃える人”なのだろうか。これまで、岡本太郎の作品は数点
しかみたことがないが、幸いにも迷宮美術館で岡本太郎の画業を、若い頃から
晩年の作品を通して解説してくれたので、岡本太郎の作風、モティーフが少し
わかった。

岡本太郎の絵は具象抽象画である。ピカソが描いた“水差しと果物鉢”(1931年、
グッゲンハイム美術館)をみて、純粋抽象画に進まず、抽象画ではあるが具体
的な形も取り込んだ具象抽象画を描こうと決心したそうだ。岡本はピカソの印象
について、ピカソの手が大きかった、そして自分の手も大きいと言う。観てる者が
ハット驚くような絵でないとダメ、というのが岡本の口癖。革新者はいつも古い
ものと戦っている。革新的で、エネルギーあふれる絵がこの画家の持ち味。
色彩感覚も抜群で、形と色がうまく融合している。

右の絵は04年、東京芸大美と東現美で開催された“再考 近代日本の絵画展
”でみた“森の掟”(1950)。真ん中の赤いサメのような生き物をよくみると、なんと
チャットがついている。抽象画というより、劇画のような絵である。太陽の塔は
子供の顔であり、岡本太郎は小さいものや可愛いものが好きなのかもしれない。

03年9月、太陽の塔の対をなす作品としてメキシコで制作された壁画が35年
ぶりに発見されたという。現在、原爆をモティーフにし、“明日の神話”という名がつ
いたこの壁画の修復が行われている。これはピカソの“ゲルニカ”に匹敵
する作品のような気がする。修復の完成が待ち望まれる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.08.02

明代絵画と雪舟展その3

133迷宮美術館の日本美術特集に、雪舟の解説者として登場した美術史家の島尾新氏が、根津美術館で開かれている“明代絵画と雪舟”を紹介していた。

この展覧会、会期は1ヶ月ちょっとなのに会場の広さの関係で、作品は3回に分けて展示される。図録をみると、3期(8/14まで)の作品もなかなか良さそうなので、また出かけた。

雪舟の絵では、目玉の国宝“慧可断臂図”(えかだんぴず)がでている。
この絵は確か昨年、重文から国宝になった。慧可が自分の左腕を切って、
岩窟の壁に向かって座禅をする達磨に入門を懇願する場面が描かれている。
絵を通して歴史や宗教物語を知ることがあるが、この絵はそのいい例。だが、
この画題はショッキング。慧可の血のついてる左腕はあまり長くはみれない。

達磨も慧可も着ている衣装は太い輪郭線を墨で一気にざあーっと描いて
いるが、顔の眉毛、顎、口ひげは丁寧に筆を走らせて、眼光鋭い僧侶
にしている。洞窟の中は岩が重なるように描かれてるので、奥行き感がある。
そこで厳しい禅の修業を続ける達磨と入門を願う慧可。この絵に会うのは
3回目だが、今回も絵の中に入り込めなかった。通期で出ている“四季山水
図巻”は別の場面に替わっている。

3期で期待してたのは嬰児を描いた作品。“売貨郎図”が3点と“嬰戯図”
がある。貨郎(かろう)とは日用雑貨や鳥や婦人用の装身具などを積んで荷
を担ぎ、売り歩く行商人のこと。売貨郎図には色鮮やかに描かれた雑貨や
かごの中にいる鳥などを売る貨郎と、集まってきた可愛い嬰児が描かれて
いる。嬰児は鳥や飾り物を興味深そうに眺めている。子孫繁栄を象徴する
嬰児図は吉祥画として、中国では早くから流行した。明代に描かれたこの
絵では4人の子供が2人でペアになり、遊びに興じてる。衣装の赤や青、緑
がよく残っている。

日本画でこうした中国風の嬰児を描いた絵を一度見たことがある。それは
02年、山口県立美術館であった“雪村展”にでた“蓮に唐子”。雪村は明代
の絵を見たのか、宮廷の女官と嬰児が登場する絵も描いている。これまで
中国の絵画を見る機会がなかったが、今回、魅力的な明代の絵を沢山見た。
中国絵画は奥が深い。大局的な構図や波の描き方、配色はこれから日本
画を見るときの参考になりそう。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2005.08.01

ピエロ・デッラ・フランチェスカ

132岩波書店からでている“世界の美術”シリーズの“ピエロ・デッラ・フランチェスカ”(レーヴィン著 04年2月)を最近、読み終えた。

ピエロの絵を見る機会が少ないので、この画家の絵の特徴をつかみきれないでいる。唯一、フィレンツェのウフィツィ美術館にある“フェデリコ・ダ・モンテフェルトの肖像”をピエロの作品として記憶している程度。

画集やこの本のなかに、見てみたい絵がいくつもある。例えば、代表作として
評価の高い、“キリストの鞭打ち”(ウルビーノ、マルケ国立美術館)、“聖十字架
伝説”(アレッツォ、サン・フランチェス聖堂)、“キリストの復活”(サンセポルク
ロ市立美術館)、“キリストの降誕”、“キリストの洗礼”(ロンドンナショナル・ギャ
ラリー)。。

ピエロは数学者としても名高く3冊の本を書いている。構図を作るときは数学者、
幾何学者として客観的な方法をもちい、遠近法で奥行きのある建築物を配置した
り、人物の頭を正面図、側面図などの計測に基づいて描いた。この画家が描く
聖母や人物はふくらみのある彫刻をみるよう。この造形性に一番びっくりする。
そして、使われてる色の数は少ないが、鮮やかな色彩で大気をとらえた。聖母
や女性は感情表現があまりないのに、巧みな色使いにより気品があって優雅。
絵全体でみると、立体感があり、明るく澄み切った絵画空間、これがピエロ絵画
の魅力である。

残念ながら、まだこれを実感してない。が、日本で1点、いい絵をみた。それは
右の“聖ユリアヌス”(サンセポルクロ市立美術館)。01年、国立西洋美術館で
開催された“イタリア・ルネサンス展”にこの絵が出品された。目鼻立ちに整った
ふっくらとした顔、ユリアヌスが着ているマントの赤と背景の緑の対照性に惹き
つけられた。感動度は前にヴァティカン美術館でみたフォルリ作の愛らしい“ヴィ
オロンを弾く天使”と同じくらい。これは1954年、聖堂を改修中に偶然発見さ
れたらしい。

ピエロ・デッラ・フランチェスカが1413年ころ生まれた町、サンセポルクロはフィ
レンツェの南東113kmに位置している。“聖十字架伝説”のあるアレッツォは
その近くにある。この本でピエロの絵の価値を知ったので、代表作を追っかけた
くなった。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2005年7月 | トップページ | 2005年9月 »