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2005.07.19

青木繁

470先週の迷宮美術館に青木繁が登場し、名作“海の幸”(重文)など代表作の成り立ちを解説していた。

この海の幸は03年、東京国立近代美術館で開催された回顧展ではじめてみた。モリを手に持ち、獲った大きな魚を担ぎ行進する裸の漁師たちの姿は古代日本の原風景を想わせる。真ん中の男は後に恋人、福田たねの綺麗な白い顔に変えられている。

生活に貧窮していた青木に国木田独歩がこの絵に高い値段をつけ、買い
取ろうとしたが、青木はそんな金額では売れないと断ったそうだ。
絵描きとしての才能に絶対の自信をもっていた青木繁らしい行動である。

美術の教科書にでている有名な“海の幸”以外の作品を03年の回顧展で
みて、青木繁の画業の全貌がつかめた。一番びっくりしたのは何点も
あった海の絵。印象派のモネが海を描いた作品が目の前をよぎった。
美術学校の教授、黒田清輝とは違う画風をめざした青木であるが、この絵
は黒田の影響を受けている。

興味深かったのは古事記を画題にした絵。西洋画ではギリシャ神話や
聖書物語をモティーフにした絵が昔から描き継がれている。これと同じ発想
で青木繁は古事記や日本書紀に主題を得た神話画を手がけた。
それらは“日本武尊”(やまとたけるのみこと、東博)、“大穴牟知命”(おお
なむちのみこと、石橋美術館)、“黄泉比良坂”(よもつひらさか、東京芸大美)、
“わだつみのいろこの宮”(石橋美術館)。

右の“わだつみのいろこの宮”(部分)は縦長の絵で、古事記の上巻にある
海幸彦・山幸彦物語の一場面を描いている。中央上部の木の上にいるの
は女にみえるかもしれないが、山幸彦。下で顔を向こうにむけ白い衣装をま
とったのが待女。左にいるのが山幸彦と一瞬のうちに恋におちる豊玉毘売
(とよたまびめ)。豊玉毘売は目鼻立ちの整った外人のように描かれている。

この場面の前後の話しは。。山幸彦は兄、海幸彦と職業を交換し、借りた釣鉤
(つりばり)をもって海に出たが、魚に鉤をとられてしまう。兄の怒りを買って、
途方にくれてたところ、海水をつかさどる神が現れ、海神の宮殿のなか
に井戸があり、その脇に桂の木があるので、そこにのぼって待てと言われる。
すると、豊玉毘売の待女が水を汲みにやってきて、山幸彦を見つける。。
山幸彦は豊玉毘売と結婚し、3年間、宮殿ですごし、懸案だった鉤(はり)も
鯛の喉からとり戻すことができた。また、海神からは地上にあがったとき
、海幸彦との関係がうまくいくようにいろいろ知恵をつけてもらい、最後は兄を
自分の配下にしてしまう。

神話を豊かな想像力と高い画技で描いた青木繁。西洋に古事記の絵をもって
いったら、向こうの人は驚くのではないだろうか。

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コメント

●青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会

1904年、《海の幸》が描かれた千葉県館山市で逗留した小谷家住宅は、明治の漁村を代表する建造物として、平成20年度現在、館山市の指定文化財として審議中です。

青木繁の没後50年に建立された《海の幸》記念碑は、平成10年の撤去の危機を地元住民の強い熱意により、現在は館山市が国有地の地代を支払うことで保存され現在に至っています。
この設計者は、近代建築を日本に翻訳紹介した東京大学教授の故・生田勉です。隣接していた同氏設計の館山ユースホステルがすでに解体されてしまったことが悔やまれます。

現在、私たちは2つの文化遺産の保存・活用を通じて、地域づくりを目ざしています。

投稿: 安房文化遺産フォーラム | 2009.02.08 01:06

to 安房文化遺産フォーラムさん
青木繁の‘海の幸’は大変好きな絵ですから、
記念碑が保存されることを願っております。
情報提供有難うございました。これからも
よろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2009.02.09 10:07

このたび、「blog布良・相浜の漁村日記」を始めました。
http://ameblo.jp/mera-aihama/
青木繁が絶賛して愛した漁村の今をお届しています。
ぜひ、遊びにいらしてください。

投稿: 青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会 | 2009.05.26 01:52

to 青木繁誕生の家と記念碑を保存する会さん
ご案内有難うございます。機会をみつけてクルマを走ら
せようと思います。

投稿: いづつや | 2009.05.26 12:55

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