ルーヴル美術館展
ルーヴル美術館にはこれまで2回縁があり、2回目に訪れたのが1990年なので、それからもう15年たつ。この間、リシュリュー館が新たに加わり、展示の配置変えがあったと聞く。
また、ここに行きたいが、まだ見てない名所のほうが優先順位が高く、パリは2、3年先になりそう。横浜美術館で開催中のルーヴル美術館展で本場の気分を味わうことにした。ルーブルという名前がきいてるのか、入場者は多い。
3ヶ月の展示期間があるのでかなりの人を集めそう。会期は7/18まで
チラシにはアングルの傑作2点、“トルコ風呂”、“泉”が載っている。アングル
が80歳をこえて描いたトルコ風呂は日本、初お目見え。裸婦像の研究に
多くの時間を費やしたアングルが晩年、その集大成としてこの絵を制作した。
円形の画面に様々なポーズをとる女性が何人も描かれている。手前の6人は
大きく、向こうのほうにいる女は小さく、沢山描き込んでいる。奥行き感があり、
オリエンタルムードが漂っている。もう少し、明るい絵と想像してたが、全体
はグレーぽい。裸婦像が数え切れないほど出てくるので、色調はこのくらいの
ほうがいいかもしれない。アングルの絵では“スフィンクスの謎を解くオイディ
プス”もいい。
この展覧会で期待してたのがドラクロアの作品。全部で6点あった。ルーヴル
にはドラクロアの代表作が大半あり、それらはもってこれないだろうが、今回
出品されたのも質は低くない。ローズ嬢という裸婦像があった。ドラクロアにも
こんな作品があったとは知らなかった。右の絵は特に気に入った“レベッカ
の略奪”(部分)。ドラクロア得意の文学作品を題材にした絵である。ウォルタ
ー・スコットの歴史小説“アイヴァンホー”のなかにでてくる、美しいユダヤ娘
レベッカがテンプル騎士団の騎士に奪われていく場面から着想を得ている。
ルーベンスを思わせるような劇的で動きのある構図で暴力的な、レベッカに
とっては悲しい情景を描いている。色の使い方も巧みで、レベッカの衣装や
馬の白が際立ち、馬をひいてる男のターバン、騎士の上着の青も鮮やか。
ドラクロアはアングルに比べるとデッサンは下手かもしれないが、勢いのある
筆致と色調、動きのある構図、的確な人物描写により、劇的な瞬間や登場
する人物の悲しみや怒り、空しさなどの内面を表現している。
アングルやドラクロアだけでなく、ダヴィッド、ジェリコー、グロ、ジェラ-ル、
そして、コローのいい風景画など名画が沢山でている。ルーヴル美術館の
カタログに出ている作品ばかりが傑作というのではない。ここは所蔵品が多
すぎて割愛しているだけ。こういう展覧会をみるとそのことがよくわかる。
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コメント
いづつやさん、コメントありがとうございました。
実はアングルはこれまであまり好きではなかったのですが、
「泉」と「トルコ風呂」は非常に高い完成度で驚きました。
素晴らしかったです。もっと他のも見てみたいですね。
思っていたよりも充実した内容の展覧会でした。
夜間開館でゆったりと見られましたし、本当に行って良かったです。
投稿: はろるど | 2005.06.23 23:29
はじめまして。
ルーブルで、実際にご覧になったのですね。
うらやましいです。
今回は、輝くばかりのアングルの作品に、
豊作、豊作とわくわくしながら見入っていま
した。
またお邪魔します。
投稿: mari | 2005.06.23 23:59
to はろるどさん
ドラクロアとくらべるとアングルの人気は弱いかもしれませんね。
アングルの魅力はなんといっても卓越したデッサン力ではないでしょうか。
ラファエロを思わせる人物表現はなかなか真似ができないでしょうね。
泉もトルコ風呂も代表作ですから申し分ないです。
投稿: いづつや | 2005.06.24 06:28
to mariさん
はじめまして。書き込み有難うございます。アングルのトルコ風呂は
日本初公開ですね。泉と一緒にもってくるなんて贅沢な展覧会ですね。
また、スフィンクスの謎を解くオイディプスにも魅せられました。
これからもよろしくお願いします。
投稿: いづつや | 2005.06.24 06:36
こんにちは。
やっとやっと行ってきました。横浜。
作家別でなく、歴史画、風景画のように
セクションを分けて展示してあったので
主題がつかみやすかったです。
いい展覧会でした。
行かないと後悔したでしょうね。。。
投稿: Tak | 2005.06.26 09:51
to Takさん
ルーヴル美術館を訪れたのが15年前なので、今回出品された絵
がどこにあったかは記憶にありません。ドラクロアとかアングルの絵
がたぶんあそこにあったなと思い出せる程度。ですからこの2人
以外の画家の作品ははじめてみた感じです。
Takさんお気に入りのドラローシュの“若き殉教の娘”なんか、すごくいい
絵ですよね。本場ではいつも飾ってあるのでしょうか?ジェリコーの
“大洪水の風景”なども心に残る一枚でした。
また、この美術館に行き、じっくり名画の数々を見たいですね。
投稿: いづつや | 2005.06.26 12:56
私もこの展示会、去年京都に帰っていたときに見にいきました。今はアングルの回顧展がルーブルで開催されています。ブログにそのことを書くにあたって、いづつやさんのこの記事も参考にさせていただきました。
日本ではドラクロアの方がアングルよりも人気があるのですか。2人は激しく争ったライバル同士だったんですよね。タイプが違うので私は選べないのですが、今回の回顧展を見て今は少々アングル贔屓になっています。^^
あかね
投稿: あかね | 2006.03.24 07:01
to あかねさん
ルーブルのアングル展をみたいですね。美術の教科書に必ずでている
“グランド・オダリスク”や“トルコ風呂”はルーブルの代名詞みたいな絵
ですね。ドラクロアとアングルは共にフランスが生んだ偉大な画家で
しょうね。
日本ではどっちが人気なんでしょう?わかりませんが、差はないのでは
ないでしょうか。ドラクロアは動くのある大きな絵画空間をつくり、アングル
は優美な線でラファエロを思わせるような女性画を描きました。アングルの絵
の魅力はオンリーワンの超デッサン力から生み出された精緻な描写ですね。
女性の着ている衣装やオダリスクの作品にみられるイスラム風の豪華な
室内装飾などの質感には驚愕します。これぞ油絵という感じですね。
ギリシャ神話が好きなものですから、日本にもきました“スフィンクスの謎
を解くオイディプス”などにも魅力を感じます。
投稿: いづつや | 2006.03.24 10:29