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2005.06.30

小林古径展 その二

106小林古径展の後期に出品された作品をみるため、竹橋の東京国立近代美術館に足を運んだ。会期は7/18まで。

作品の数は前期、後期同じくらいに調整してあり、目玉の名画もどちらかに偏らないように配分している。ただ、展示期間の少ない絵もある。永青文庫所蔵の“髪”(重文)は7/5からの展示となっている。この絵は昨年、永青文庫の特別展で鑑賞したので今回はパス。

大規模な回顧展なので、作品の質は高い。前期、後期をみれば古径の絵で
これはというのはあまり残ってないかもしれない。前期に行ったとき図録
を購入したので、後期に期待する絵はリストアップしておいた。まだお目にかか
ってない作品で惹きつけられたのは、筝三線、花、竹取物語、孔雀、不動。

前期出品の“河風”に描かれている女性には驚いた。古径がこんな妖艶な
女性を描いてたとは知らなかった。美人画なら鏑木清方か上村松園の絵をすぐ
思い浮かべるのだが、古径の描く女性は江戸初期の風俗画にでてくる遊女
に似ていて、心を揺すぶる。河風と同じくらい魅力的なのがコスモ石油所蔵
の“花”。桜の下で、藤の花をあしらった淡水色(うすみずいろ)の衣装を着た女
性が頬づえをついて横たわっている。部屋に飾っておきたくなる絵である。

右の“竹取物語”(京都国立近代美術館蔵)は全部で6場面あるが、後期に
ハイライトのかぐや姫の昇天の場面がでている。まだみてないが横浜美術館にも
昇天の絵がある。これを図録でみて早く見てみたいと思っていたら、
京近美の竹取物語で願いは叶えられた。2つの絵は同じ1917年に描かれ
ており、横浜美のは昇天の場面だけを再制作したもの。

竹取物語は巻物で、昇天の右には月へもどるかぐや姫との別れを悲しむ翁ら
が描かれている。白と白紫の衣装を着たかぐや姫のまわりを取り囲むように、
月から迎えに来た使者が黄色や赤、水色をした衣装を風にたなびかせて進ん
でいる。使者の顔、姿態はよく見るとみんな同じ。衣装の色の違うグループをいく
つか作ることで華やかさを出している。人口に膾炙したかぐや姫のハイライト
のシーンはこの絵のような甘美な王朝ロマンの世界だったのだろう。

このほか、足がとまったのは“羅浮仙”、“孔雀”、“尾長鳥”、“菖蒲”、“芥子”、
一度見たことのある島根県の足立美術館が所蔵する“楊貴妃”、“阿新丸”、
風景画の“伊都岐島”、“住吉詣図”。美しい線描、気品のある色彩、精神性を
取り込んだ静物画など次々と日本画を革新していった古径。長く記憶に
残りそうな展覧会であった。東京国立近代美術館に感謝。

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コメント

いづつやさん、こんばんは。
「小林古径展」が前期と後期に展示替えがあるとは知りませんでした。なんとか後期は見るつもりですが前期を見逃したのは残念です。
ところで、先日、郵便局の窓口で素敵な記念切手があったので1シート購入しました。小林古径《罌粟》です。ネットで調べたら1998年の「切手趣味週間」の切手だったようです。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~fisheye/japan/stamp/kokei.html#st3
何故今頃窓口に?とも思ったのですが、もしかしたらこの回顧展に合わせたのかもしれませんね。
いづつやさん、この《罌粟》は今回の展覧会後期でも展示されていますでしょうか?

投稿: June | 2005.06.30 22:37

to Juneさん
こんばんは。罌栗という切手の原画は“芥子”の名で出品されて
ます。速水御舟ばりの細密描写で描かれたいい絵です。東博の平常展で
一度みたことがあります。

後期は60点くらいです。古典画、鳥、猫、犬、花、人物画どれも名作
ぞろいです。お出かけなら7/5からの方がいいかも知れませんね。
永青文庫の“髪”と山種の“夜鴨”という名品がでますので。
古径の絵をお楽しみ下さい。

投稿: いづつや | 2005.06.30 23:09

いづつやさん、こんばんは。
なんとか予定がついて、7月に上京できそうです。というわけで、フィリップス・コレクション展やら小林古径展など、楽しめそうです。Takさんがその日にあわせてオフ会をセットしてくださるそうなので、16日はもう一度ドレスデン展を見ることになりそうです。同じ企画展を違う場所で見るのは初めてなので楽しみです。いづつやさんにもお目にかかれるのでしょうか?

投稿: リセ | 2005.07.02 23:43

to リセさん
16日のオフ会、勿論予定通り参加いたします。リセさんにお会い
できるのを楽しみにしています。今回は盛り上がりそうですね。

フィリップス・コレクションは森美術館だけの展示ですから、この機会に
3倍くらい楽しんで下さい。古径展も名品が沢山でてます。

投稿: いづつや | 2005.07.03 17:24

いづつやさん、こんばんは。マイブログ、荒らしがひどくなってきたので、しばらくお休みします。東京でお目にかかれるのを楽しみにしています。よろしくお願いします。

投稿: リセ | 2005.07.05 23:49

to リセさん
ブログは色々なことがありますね。16日のオフ会でお会いしましょう。楽しみにしてます。

投稿: いづつや | 2005.07.06 10:38

いづつやさん
コメントありがとうございます。
今回は、前期・後期と2回見に行ってきました。小林古径の作品をこれだけまとめて見たのは初めてなので、会期や場所の関係で数点見れませんでしたが、それでも見応え十分でした。
今となっては、2回に分けて見れたのはよかったような気もします。

投稿: イッセー | 2005.07.08 00:28

こんにちは。
さすがいづつやさん。
やはり前期後期両方に行かれましたね!

私は昨日遅ればせながらやっと
行って参りました。

「髪」を初めて観ました。
大きな絵ですね。

あれこれと書きたいのですが
「竹取物語」「伊勢物語」など
古典ファンにとってはたまらない作品もあり
嬉しかったです。

投稿: Tak | 2005.07.08 07:49

to イッセーさん
小林古径という画家は寡黙の人だったようですね。ひたすら新しい
日本画の創造に神経を集中したようです。古典を題材にした作品、
植物画、鳥や犬、猫の絵、そして女性画、どれも心うたれます。

はじめてみた絵では“飛鴨”、“花”などが気に入りました。
日本画を見る楽しさを存分に味あわせてくれる展覧会でした。

投稿: いづつや | 2005.07.08 14:19

to Takさん
古径の“髪”は美術の教科書にも載ってる近代日本画の傑作ですね。
昨年、目白の永青文庫ではじめてみました。女性の黒髪の一本々が
細かく描かれてます。また、すっきりとした線描が新しい日本画を
つくりだしてます。

手元の“昭和の日本画100選”には、古径の絵はこの“髪”、“鶴と七面鳥”、
“清姫”が入ってます。清姫が竜になって安珍を鐘ごと焼き尽くそうという場面
は迫力がありましたね。この絵は2度目なんですけど、感動しました。

投稿: いづつや | 2005.07.08 15:49

こんばんは。
私も先日後期展示を見てきましたが、
前期に増してまた魅力的な作品に出会えました。
日本画を見て良かったと心から思えるような、
そんな展覧会でした。
(もっと早く知っておくべきでした…。)

投稿: はろるど | 2005.07.16 00:28

to はろるどさん
小林古径の画業の高さを見せつけられた展覧会でしたね。日本画は
静物画にしろ風景画、女性画でもそれぞれに魅力があります。
前半には風景画がなかったですが、後半に住吉詣図や伊都岐島が
でてました。いずれもいい絵でしたね。とくに伊都岐島はターナーの絵を
みるようでした。日本画の画家は西洋画も勉強してますので絵に対する
取り組みが深いです。

次に回顧展を開催してほしい画家は前田青邨です。

投稿: いづつや | 2005.07.16 11:25

いづづやさん、こんにちは。
「小林古径展」ではやはり『芥子』が一番のお気に入りになってしまいました(笑)。まろやかな清明さを感じる古径作品のなかで異色さが際立った作品かもしれないですね。
ブログに感想文を書いたもので、トラックバックさせていただきました。

投稿: June | 2005.07.17 11:14

to Juneさん
“芥子”は大きな絵ですので見ごたえがありますね。沢山の花びらが
細密に描かれていて、立体感を感じます。同じ細密描写でも
速水御舟や小茂田青樹にくらべると色調が淡く、柔らかいです。

古径のような画技の高い画家が描く花の絵を見るとほんとうに心が
落ち着きます。いい展覧会でした。

投稿: いづつや | 2005.07.17 12:35

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