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2005.06.17

フィリップス・コレクション展

96期待のフィリップス・コレクション展を六本木ヒルズの森アーツセンターで見てきた。この展覧会の存在を知ったのはほんの2週間前。うかつにも森アーツセンターは現代アートが専門とばかりに、展覧会スケジュールはノーチェック。

日本にルノアールの傑作“舟遊びの昼食”をわざわざワシントンから持ってきてくれるなんて夢ではなかろうかと思うほどである。この美術館の運営力は凄い。

絵画は56点、彫刻が4点と出品数は多くない。が、でている作品の質は高い。
これには驚く。まず、入ってすぐのところに飾ってあるグレコの“悔悛の
聖ペテロ”が絶品。ペテロの目からはいまにも涙がこぼれそう。また、ドラクロア
の“海からあがる馬”は画集でみたような名作。躍動感あふれる馬と鮮やかな
色彩に釘づけになった。印象派ではマネの“スペイン舞踊”に足がとまる。
マネ、30歳ころの作品。簡潔な筆致で、リズミカルなダンサーの動きを表現し
ている。画面の多くを占める白が印象的。

今回の目玉はルノワールが40歳のときに描いた右の“舟遊びの昼食”。画集
では絵の大きさが実感できなかったが、大きな絵である。130cm×175cm。
5年前の作品“ムーラン・ド・ラ・ギャレット”と同じ大きさ。この絵はフランスの
田園画と似ている。場所はパリ郊外のシャトゥーの島にあるレストラン・フルネ
ーズ。ここはセーヌ河を走る船の船頭とその恋人たちの溜り場だったところ。
この絵にでてくるのは船頭ではなくて、ルノワールの友人とモデルたち。

食事はもう終わりかけのところ。登場人物の名前はわかっている。例えば、前景
の左、子犬と戯れている娘はルノワールと結婚したアリーヌ・シャリゴ。その向
こうで頬杖をついている若い女性は美しいアルフォジーヌと呼ばれたレストランの
娘。たしかに、ここに描かれている5人の女性のなかでは一番の美人。絵全体
をみると、みんなくだけた感じで温かさが満ち溢れている。

ムーラン・ド・ラ・ギャレットでは人物像が光をあびて背景に溶け込んでるが、この
絵の人物ははっきりと輪郭線がつけられている。オルセーにある“田舎の踊り、
都会の踊り”やボストンの“ブージヴァルの踊り”の描き方と同じ調子。そして、
テーブルの向こうにちらっと描かれた河は白く輝いており、とても美しい。この絵
からは生きる楽しみがひしひしと伝わってくる。これまでみたルノワールの絵では
一番感動した。ワシントンにまた行く機会があれば最初にこの美術館を訪れ、この
傑作を見ようと計画していたが、日本で実現するなんて嬉しくてしようがない。
森アーツセンターに感謝〃。

ルノワール以外ではゴッホのびっくりするようないい絵があった。アルル時代に
描いた“アルルの公園の入り口”。イエローパワーが溢れている。また、セザンヌ
の静物画も魅力的。近代絵画ではマチスとブラックの作品に魅せられた。

ひょっとするとこの展覧会はゴッホ展のように混雑するかもしれない。とくに
ルノワールの舟遊びの昼食の評判が伝わっていくような気がする。
なお、会期は9/4まで。

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コメント

いづつやさん、早くもいらっしゃったのですね。
展示数が少ないので私も躊躇するところですが、
いづつやさんがベタぼめってことは間違いない
企画ってことですね。
これで気持ちが大きく東京へ傾いてきました。
でも、今、飛行機に乗るのが本気で怖いんです。
さて、どうしましょう。(~ ~;

投稿: リセ | 2005.06.17 22:40

to りせさん
2週間前、この展覧会を知って以来、そわそわして落ち着きがありま
せんでした。ルノワールの“舟遊びの昼食”のせいです。この絵は
ルノワールの一番いい絵かもしれません。これまでオルセーの
ムーラン・ド・ラ・ギャレットが最高かなと思ってたのですが、この絵をみてか
わりました。

この絵が最高傑作と描いてた画集がありましたが、たしかにあたってます。
この絵の前だけはソファが置いてあります。じっくり見てくださいという
配慮です。昔買ったラミューズの美術館シリーズのフィリップス・コレクション
をみてみますと、最初にマネのスペイン舞踊(今回出品)が取り上げら
れてます。この本にでてくる絵の半数くらいがこの展覧会にきています。
これをみてもいい作品がでていることは間違いありません。

投稿: いづつや | 2005.06.17 23:30

こんばんは、いづつやさんもいかれましたか、僕もいってきました、八時入場でまったく混雑せず。
アングルの作品ではルーブルの「トルコ風呂」を思い浮かべたり質の高い展示でしたね。
しかしまったく職業に就かず絵を集めたダンカン・フィリップス、すごいですよねー。

投稿: oki | 2005.06.18 00:17

to okiさん
ルノワールの舟遊びの昼食は以前から是非見てみたい絵だったも
のですから、初日に駆けつけました。画集でみる以上の傑作で、
いつまでも見ていたい気分でした。こんな感動は久し振りです。
大きい絵なので見ごたえがありますね。また、ゴッホのアルルの公園
の入り口にも魅せられました。有難い展覧会で森美術館に感謝です。

ダンカン・フィリップスには二つ年上の兄がいて、二人で
大金持ちの父親に美術品の収集に金を遣わしてくれと
頼んで、名品を集めたそうです。が、まもなく父が急死し、
兄も一年後死んだため、亡き父と兄の思い出に美術館を
つくろうと決心し、わずか3年で240点近くの美術品を収集し
ています。

投稿: いづつや | 2005.06.18 13:19

こんにちは。
コメント&TBありがとうございました。

ルノワールの絵をこれだけ
美しいと思ったのは、今回が初めてです。
いつもはちょっと苦手な画家さんですが。。。

セザンヌの「余白」に心打たれて
泣き出しそうになりました。
まさかあれだけ上質のセザンヌが
六本木の52階で観られるとは
思いもしませんでした。

投稿: Tak | 2005.06.23 17:30

to Takさん
今回でている作品の質が高いことが、いろいろわかってきました。
ルノワールの“舟遊びの昼食”はムーラン・ド・ラ・ギャレットとともに
最高傑作かもしれません。絵のサイズも同じですし。

ゴッホの“アルルの公園の入り口”は手元にあるオランダの出
版会社が出してる画集に載っていました。ゴッホの追っかけは
この画集を参考にしているのですが、フィリップス・コレクションの絵
はここにあるくらいですから名画にちがいありません。

グレコ好きにとって最初に飾ってある“悔悛の聖ペテロ”はたまらない
一品です。Takさんのとりあげられたジャコメッティの“モニュメンタルな頭部”
はよく見かけるのと違い、顔がふっくらしてましたね。話題はつきません。
それだけ内容のある展覧会ということでしょうね。

投稿: いづつや | 2005.06.23 19:02

いづつやさん

私もまだ浸っています。本当にここまで優れた作品があるとは・・大好きなドガ、ゴッホはもちろんのこと、避けていたルノワールにこんなに惹かれてしまうとは思いませんでした。本当に素晴らしい!そして、シスレーの「ルーヴシェンヌの雪」とドーミエの「3人の弁護士」がフィリップスコレクションにあることさえ知らず、目の前にあった時、驚きと大感動でした。モリゾの「2人の少女」の青もよかったですし、ドラクロアの「海からあがる馬」を見た時、ゴッホがドラクロアを尊敬していた意味がとてもよくわかりました。いづつやさんがおっしゃるように>>躍動感あふれる馬と鮮やかな色彩に釘づけ>>ですね。大満足でした。トラックバックもさせてください。よろしくお願い致します。
小林古径展も行ってきました。日本画特有の線描がすばらしく、落ち着きます。常設展も入れ替えがありましたね。

投稿: Yuko | 2005.06.29 20:32

to Yukoさん
こんばんは。TB有難うございます。ルノワールの舟遊びの昼食が
ダントツに輝いているフィリップスコレクションですが、ほかにもいい絵が
いくつもありましたね。

シスレーとモリゾの絵は赤丸ですね。シスレーの雪は本当にいいですし、
モリゾの色使いは明るくて魅力一杯。また、ココシュカの女性の
肖像画にも足がとまりました。デュフィのオペラ座も面白い絵でしたね。
一点一点あげるときりがないです。

日本は美術大国ですね。バーンズコレクション、コートールド、フィリップス
と超一流のコレクションがやってきました。今年はゴッホ展、秋には
プーシキン美術館展があります。こういう美術環境にいること
を喜びたいですね。

投稿: いづつや | 2005.06.29 21:22

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