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2005.06.26

諸橋近代美術館のダリ

10223日、24日は山形、福島を旅行した。目玉は山寺、お釜、五色沼などの名所観光とさくらんぼ狩り。

最後の五色沼の散策は自由行動だったので、毘沙門沼のすぐ近くにある諸橋近代美術館を訪れた。

この美術館は今年のはじめに放送された迷宮美術館で紹介された。前々からここにダリの作品が沢山展示されてることを聞いていたので、いつかこの目
でその作品を確かめたいとおもっていた。

館の入り口の前に立つと一瞬ヨーロッパにいるのではないかと錯覚する。貴族
の館を思わせる立派な建物である。中の展示ホールは天井が高く、外光を多
く取り入れた開放的な空間になっている。1999年にこの美術館はオープンした。
コレクションの85%がダリの作品。ダリの作品を常時展示している美術館とし
てはスペイン・フィゲラスのダリ劇場美術館、アメリカ・フロリダのダリ美術館に
次いで世界で三番目。

自慢の作品は37点の彫刻。ダリの彫刻をこんなに多く所蔵するのはここだけ。
家に戻ってわかったのだが、1991年、新宿三越で開催された“ダリ展”にこれ
と同じ作品がでていた。このときは作品の所蔵はリヒテンシュタイン、ストラットン
財蔵となっていた。諸橋美術館に確認してないので断定的なことはいえないが、
館を設立した諸橋廷蔵氏が1991年以降、ストラットン財からこれらの彫刻を
購入したのかもしれない。

いくつかの彫刻、例えば“回顧的女性胸像”を鑑賞してたとき、前に見たことがあ
るなという感じがした。隣の方も記憶にあると言う。三越の展覧会はだいぶ前なの
で、目の前にあるシュールで不思議な形をした彫刻にみとれ、昔みたことをすっ
かり忘れていた。ダリのブロンズや大理石の像にはミロのヴィーナス、サモトラケ
のニケ、ナポレオン、ニュートンなど我々がよく知っている作品や人物が題材に
なっている。そのため、造形的には普通の頭では考えつかないものであるが、頭
がくらくらすることはなく、結構楽しめる。中には考えさせられる作品もある。1931
年、ダリが27歳のとき描いた“記憶の固執”に出てくるやわらかい時計のように。
くにゃっとまがった時計が木の枝のかけられたりしている。

絵のコーナーに面白い作品がいくつもあった。中でも気に入ったのが右の“ビキニ
の三つのスフィンクス”。ここではダリ得意のダブルイメージ(二重像)が使われ
ている。この絵の中にアインシュタインとフロイトがだまし絵のように描きこまれて
いるのである。アインシュタインは手前の人間の頭部のなか。原子雲のような
頭髪の真ん中にアインシュタインの横顔が黒のシルエットとなってみえる。樹木
の頭部の右端には眼鏡をかけたフロイトがいる。

1945年8月、広島と長崎に落ちた原子爆弾にショックをうけたダリがこれをモチ
ーフにしたのがこの絵で、1947年に制作した。その際、ダリはアインシュタインと
フロイトが1932年、手紙でやり取りした話を覚えていて、二人を絵の中に登場
させている。二人の会話とは。

Q.アインシュタイン“人間を戦争のくびきから解き放つことはできないのか?”
A.フロイト“本来、人と人の利害の対立は暴力で決着をつけるんだ。破壊という
 衝動を人間から取り除くことはできない”
Q.アインシュタイン“人間の心を特定の方向へ導き、憎悪と破壊の病に冒され
 ないようにすることはできないのか?”
A.フロイト“出来る。文化の発展を促がせば、戦争の終焉にむけて歩みだすこと
 が出来る”

裏磐梯にある諸橋美術館でダリの名作を堪能させてもらった。いつか、また訪れ
たい。

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コメント

改めて貴ページの一部を拝見させていただきましたが、すさまじい文章の質と量ですね。

諸橋近代美術館の存在は初めて知りました。ものすごく行きたくなりました!

僕はシュルレアリスム、アール・ヌーヴォー及びアール・デコに興味があり、ミュシャ展、ガレ展、アール・デコ展も行きました。箱根のラリック美術館も是非行ってみたいと思っていた所です。

非常に勉強になります。また寄らせてください。

投稿: COZY | 2005.10.17 02:21

to COZYさん
書き込み有難うございます。諸橋近代美術館にはダリの彫刻、絵画が
沢山あります。彫刻は見てて本当に楽しいです。シュルレアリスムの
不思議さは、立体的な方がより実じることができます。

絵画では“ビキニの三つのスフィンクス”のようなダブルイメージがきい
た作品とか、“テトゥアンの大会戦”というインパクトの強い大作が
あります。

とにかく、日本にもこんなダリ専門館(印象派とかピカソのコレクションも
あります)があったことを知り、びっくりしました。いつか、また、
訪問してみたいです。

投稿: いづつや | 2005.10.17 17:05

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