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2005.05.04

ボッティチェリのヴィーナス

317_2ベルリン至宝展のヨーロッパ古典絵画にルネサンスの巨匠、ラファエロとボッティチェリの絵が出ている。

チラシをみて期待が高かったのはラファエロであったが、この聖母子はあまりグッとこなかった。保存状態がよくないのか、色の輝きがなく、ぼやっとしている。ピティ宮にある“小椅子の聖母”などと比べると魅力度はかなり下がる。

逆に別のイメージを抱いていたボッティチェリの“ヴィーナス”に感動した。実は
このヴィーナスは、ボッティチェリが修道僧サヴォナローラの神秘主義の影響
を受けたあと描いた“アペレスの誹謗”にでてくるヴィーナスをイメージしていた。
まさか、ウフィツィ美術館にある“ヴィーナスの誕生”と同じようなヴィーナスの
絵があるとは知らなかった。描かれた時期も1485年ころとなっている。

16世紀の著述家によると、フィレンツェの名家の邸宅にはボッティチェリが描
いた裸体画がかなりあったらしい。今回展示してある“ヴィーナス”は縦長の絵。
158cm×68cm。西洋画でこういう縦長の絵はあまり見ない。ルネサンス
期の作品ではみたことない。黒地の背景に青白いヴィーナスがポーズをとって
いる。“ヴィーナスの誕生”のヴィーナスと描き方はほとんど一緒。手のポーズ
は古代彫刻にみられる“ウェヌス・プディカ”(恥らうヴィーナス)を借用している。
違いは髪の左右への流れ方のみ。

“ヴィーナスの誕生”の場合、帆立貝にのってるヴィーナスの回りには西風ゼフ
ュロスやマントをひろげるホーラがおり、華麗で幻想的な画面となってる。縦長
の“ヴィーナス”は顔、姿態が同じに描かれてるのに背景が黒一色なので、
絵の雰囲気としては“アペレスの誹謗”のような情緒が不安定で生気がうす
い感じがする。背景を黒にした狙いがよくわからない。

My女性画の1位にあげてるヴィーナスなので、“ヴィーナスの誕生”の背景を
想いながら、黒を気にせず、じっくりこの絵をみた。

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コメント

いつづやさん、こんばんは。私も見てきました、このヴィーナス。Takさんのところで予習はしていたので、存在は知っていましたが、目の前でみるとまた違った感動がありました。同じくラファエロの絵は、あまり感動しませんでした。チラシで見すぎていたせいで、期待が大きすぎたせいかもしれません。背景を黒にした意図は、余計なものに気をとられず、ヴィーナスの美しさを強調したかったのではないでしょうか?

投稿: リセ | 2005.05.04 23:14

to リセさん
ボッティチェリのヴィーナスはウフィツィ美術館の作品だけと思って
ましたが、ヴィーナス単独の絵があったんですね。ヴィーナスだけ
を描くとなると、バックの色に何をもってくるか、ボッティチェリも考えた
のでしょうね。

普通なら写実的な背景が無難なとこですが、暗闇のなかにヴィーナス
をおいて、美を強調したかったのでしょうか?ここに30分くらいいました。
ボッティチェリのヴィーナスが日本にいて見れるのですから、随分お得な
展覧会です。

投稿: いづつや | 2005.05.05 21:46

ベルリンとフィレンツェのヴィーナスの比較があちこちのBlogでにぎやかですが、この問題はかなり昔からある問題のようです。

和辻哲郎の「フィレンツェ古寺巡礼」(角川文庫 1956年2月10日刊)に、1928年3月26日にフィレンツェで書かれた文章が載っていますので下記に引用してみます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ボティチェリの作ではやはり「ヴィナスの誕生」が一番いいと思う。色もわりにあっさりしてゐていゝと思う。しかし実物を見てあっと驚くほどのことはなかった。中央のヴィナスの髪の毛などは、金色で中々美しいし、右側のニンフの白い衣み散らしてある藍色の文様なども中々いゝと思ったが、しかし全体の色調は何となく眠そうな、鈍い調子である。写真で想像してゐた、デリケート過ぎるほど鋭い神経の慄え、と言ったやうなものは、色彩の上では見出すことが出来なかった。
中央のヴィナスと似通った格好をしたヴィナスの絵がベルリンにある。あれは非常に感服してみたものであった。あれを思い出して、こちらの方は、ベルリンの絵のようにボティチェリ式ではない。これは甚だ皮肉な現象であるが、実際、ボティチェリ風の癖はこちらの方が少ないのである。肉体の描き方の非常にデリケートな鋭さというやうなものは、ベルリンの絵の方が強く感じさせる。

投稿: とら | 2005.05.08 18:27

to とらさん
和辻哲郎の本を紹介していただき有難うございます。ヴィーナスの
誕生のイメージが強いものですから、これと単独のヴィーナスのどこが
違うのかと図録を見比べてます。

ヴィーナス自体の描き方にあまり差は無いと思いますが、背景は黒だと
目の錯覚でちょっと鋭く感じるかも知れませんね。ベルリンのヴィーナス
については、画集などではあまりみません。ボッティチェリをしっかり
レヴューしたくなりました。

投稿: いづつや | 2005.05.08 20:12

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