歌川広重展
浮世絵の太田記念美術館で開催中の歌川広重展に再度足を運んだ。4月の肉筆画に続き、5月は版画の名品を展示している。この広重展は6/26まであり、6月は名所江戸百景を全点みせることになっている。
開館25周年としての記念展はやはり充実しており、出品される作品は浮世絵としては一級のものばかり。さすが浮世絵の老舗美術館だけのことはある。今回は広重が若いころから制作した
版画から最晩年のものまで150点くらいでている。
風景絵師としての名を確立した東海道五十三次シリーズをはじめ、諸国の
名所風景画がもれなく揃っている。広重は1500点にのぼる名所絵を
のこしている。ここに出ている作品をみると全国色々なところを沢山描いた
んだなと感心する。しかも、この絵はつまんないなというのが無いの
が広重の凄いところ。
北斎の富嶽三十六景を意識したような大胆な構図をとった絵がある一方、
雨や霧にかかった山など日本の原風景を広重独自の美意識で表現した
傑作がいくつもある。なかでも感動したのが右の“阿波鳴門之風景”。
3枚続きの大画面にあの有名な渦潮を壮大なスケールで描いている。
実景はこんな風ではないと思うが、ミニ滝をつくり、低いほうに渦をいくつも
描いている。じっとみてると海が生き物のように見えてくる。
2年前にも別の浮世絵展でみたが、今回も釘付けになった。
この絵は広重が亡くなる1年前にかかれている。最晩年、61歳の作。
同じ3枚続きの絵をほかに2枚仕上げている。“木曽路野山川”と“
武陽金沢八勝夜景”。木曽路は何回も見たが、金沢八勝ははじめて。
人物を描かず風景に専念したこの3作が一緒に飾られている。
広重が晩年に到達した自然観をみるようで浮き浮きする。こんな機会は
2度とないかもしれない。本当に有難い企画である。
浮世絵展の情報をひとつ。日本橋三越で6/7~19まで“北斎と広重展”
が開催されるようだ。どんな新しい浮世絵に会えるか今から楽しみ。
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