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2005.05.24

コレッジョとギリシャ神話

466_22年前、ウイーン美術史美術館でコレッジョが描いた右の“ユピテルとイオ”という絵を見たときは唖然とした。

白い肌の官能的なイオを抱擁しているのは雲のお化け。右手をイオの背中に回している。この雲は実はユピテル(ゼウス)。女性に近づくときに必ず使う変身術で雲になりすましてイオに言い寄っているところである。ユピテルの顔はイオの口元近くに微かに浮かび出ている。

ユピテルとイオの話はギリシャ神話の一コマ。アルゴス王の娘イオの美貌に
参ったユピテルは雲に姿を変え誘惑する。この現場を妻ユノに見破られそうに
なり、ユピテルはとっさにイオを牝牛に変える。もともとユピテルの言動を
信用してないユノはその牝牛を自分にくれという。そして、百の眼を持つ巨人
に牝牛を見張らせた。で、ユピテルは男の面子にかけてメルクリウスをつか
ってイオをなんとか解放さす。これがまたユノの怒りを買い、イオはアブに追い
まわされることになる。最後は、ユピテルがユノに詫びを入れ、イオはやっと
人の姿に戻る。

ギリシャ神話にでてくるユピテルとユノの夫婦喧嘩はわれわれの身のまわりに
ある話と変わらない。オリンポスの神々は人間くさい神なのである。コレッジョ
は古代ローマの詩人オウィディウスが書いた“変身物語”に感銘をうけ、1530
年ころ、この絵を制作している。

絵にまつわる面白い話がケネス・クラーク著“ザ・ヌード”(ちくま学芸文庫、04
年6月)にでてくる。18世紀ころ、この“ユピテルとイオ”はフランスの摂政オル
レアン公の息子のルイ・ドレルアンが所蔵することとなった。ドレルアンは有
名な放蕩者で、ただちにこの絵を破棄することを命じ、自らナイフを手にし最初
の一撃を加えたという。この事態に際し、コワペルという美術館長がひそかに
切り裂かれたカンヴァスの断片を集めて、もとの姿に復元させる。ただ、頭が
完全に壊されて手の施しようがなかったのだが、幸運にもコレッジョの再来とも
いうべきプリュードンという画家が登場し、現在の頭部を描いたらしい。

この絵は見れば見るほど不思議な感じがする。ベルギーの象徴派の画風を
先取りしてるのが凄い。

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