ゲント 神秘の子羊
ファン・エイク兄弟が描いた“神秘の子羊”をゲントの聖バーフ大聖堂でみた。この絵には前々から関心があった。
この絵が幾度となくベルギーから離れ、数奇な運命をたどったということに興味がそそられるだけでなく、15世紀前半、フランドルではじまった油絵の最高傑作となると是非とも本物を観たくなる。
数奇な運命の極めつけは第2次世界大戦の末期、ナチスの手元にあった
神秘の子羊が寸前のところで爆破を逃れたこと。ヒトラーは1939年頃から
美術館建設を計画し、ヨーロッパ中から美術品を強奪してくる。神秘の子羊も
1942年、南ドイツのノイシュバンシュタイン城に運ばれる。
ドイツ敗北の色が濃くなった1944年、連合軍の爆撃をさけるため、この祭壇
画はオーストリアのアルトアウスゼー塩坑に移される。なぜここが選ばれた
かというと坑内は温度も湿度も一定し、保存に適していたため。1945年4月、
米軍が迫ってきたのでドイツ軍は塩坑全体を美術品もろとも爆破しようとし、
爆弾を運び入れる。このとき、オーストリア人の坑夫がひそかに爆弾を外に運び
出し、再び塩坑道が爆破されないように自分たちの手で坑道の入り口にダイナ
マイトを仕掛け、坑道をふさいだという。こうして、神秘の子羊は守られた。
バーフ大聖堂の中に入るのは無料だが、神秘の子羊を見るにはお金がいる。
20人も入れば一杯の礼拝堂にこの絵はある。門外不出。祭壇画は観音開き
になっている。中央のパネルの真ん中には祭壇が置かれその上に神の子羊
イエス・キリストが立っている。制作されたのは1432年。570年くらい経ってる
のになお鮮やかな色が残っている。
油絵の魅力をこれほど感じさせる絵はない。光沢をもった絵肌の質感に驚かされ
る。聖職者が着ている服装の赤、子羊の周りの木々、草花の緑、遠くに描かれた
山々の青に心が揺さぶられる。草花は写実的に細かいところまで描かれている。
ボッテイチェリの春にでてくる花をみるよう。
30分くらい近くに寄ったり、左右に動いたりしてじっくりみた。15世紀に写実的な
細密描写の絵があったとは。ダビンチのモナリザより70年前にこんな傑作がフラ
ンドルの地で制作されていた。絵画史への理解が一歩前進。
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コメント
ファン エイクの祭壇画を検索して訪問いたしました。祭壇画の件でTBさせていただきました。またうかがわせていただきます。
投稿 seedsbook | 2005.08.03 00:15
to seedsbookさん
はじめまして。書き込み、TB有難うございます。ファン・エイク兄弟
の神秘の子羊をわくわくしながら見ました。北方美術の傑作をみれ
て大満足です。これからも宜しくお願いします。
投稿 いづつや | 2005.08.03 11:59
もう一度エイクの話でお邪魔します。
先週末ちょっとゲントに出かけて見ましたので、記事を書いてみました。素晴らしかったです。
投稿 seedsbook | 2005.08.09 14:51
to seedsbookさん
ゲントに行かれ、ファン・エイク兄弟の神秘の子羊を堪能されたよう
ですね。素晴らしい鑑賞記で4月のベルギー旅行を思い出しました。
日本画も楽しんでいるのですが、神秘の子羊は油絵の魅力を感じさ
せる絵ですね。植物の描き方を目を皿にようにして見ました。
また、ゲントを訪問したいです。
投稿 いづつや | 2005.08.09 16:56