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2005.04.27

ブリューゲル

57ブリューゲルの絵を一番多く所蔵しているのはウイーンの美術史美術館であるが、ベルギー王立美術館にも4点ある。これがルーベンスとともに古典部門の目玉となっている。

展示コーナーは広く取られ、父の作品を模写した息子の作品も一緒に飾られているので美術史美のブリューゲル室にいるような気になる。

図録でみて是非見たかった“反逆天使の失墜”、“イカロスの墜落”と“ベツレヘ
ムの戸籍調査”。そしてもう一枚、“スケートをする人々”があるのだが、これは
貸し出し中であった。ボスの絵をみるような反逆天使はいくらみてても飽きない。
人間よりもトカゲやらグロテスクな魚、ムール貝などを見ているほうが面白い。
怒ったふぐのように丸くなって口を大きくあけてる魚をみて思わず笑ってしまった。

一見牧歌的な風景画にみえるのが右の“イカロスの墜落”。前景の右に腰を降
ろす漁師の前に足が海面から突き出ている。これがイカロス。この絵はブリュー
ゲルがギリシャ神話の話を扱った唯一のものとされている。天から落ちてきた
イカロスには何の関心もないかのように画面手前では農民が狭い土地を耕して
いる。その下には羊飼いと羊の群れが通りすぎる。

海面の緑が印象的で遠景にある町や白い岩は水面に浮かんでるように見える。
ブリューゲルの構図のとりかたは歌川広重の描き方と似ている。ウイーン美術
史美にある“サウロの回心”が広重の東海道五十三次、日坂とよく似てるので
驚いたことがある。

イカロスはクレタ島の迷宮を造った名工ダイダロスの息子。二人はダイダロスが
作った翼を蝋で身体につけ大空に舞い上がり、迷宮を脱出するが、イカロスは
気分が舞い上がって、あまり太陽に近づくなという父親の忠告を忘れてしまう。
やがて蝋が溶けて海に墜落し、溺れ死ぬ。

当時この話は愚かにも身体や地位の向上を野望する者の運命の譬え話として
理解されてたようだ。ブリューゲルのこの絵は人間の愚行を象徴している。

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コメント

ブリューゲルの本物の素晴らしさ
あらためて知ることができました。
ベルギーまではるばる行った甲斐がありました。

投稿: Tak | 2005.04.29 22:49

いづつやさん、こんばんは。ベルギーご旅行を堪能されたご様子、私まで楽しく拝見させていただいております。
「イカロスの墜落」はぜひ見たい作品です。ブリューゲルが画題である出来事を自然と人間の営みの中にさり気無い点景として描いているのを面白く思っておりました。ブリューゲルの世界観なのでしょうか?それも全てが細部まで緻密に描かれているのが驚異です。
ウィーンの「サウロの回心」も山岳道に延々と続く軍隊の列で起こったちょっとした出来事のようで、CARAVAGGIOのクローズアップした劇的瞬間を描いた作品と好対照でありながらも、とても心惹かれる作品でした。最近、風景画家としてのブリューゲルの構図と描写力に参っており、いづつやさんの広重「日坂」の連想は、なるほど!と大変興味く拝読させていただきました。

投稿: June | 2005.04.30 00:48

to Takさん
ブリューゲルの絵が王立美術館にあるのは当たり前といえば
当たり前ですが、風景画もボス風な絵も一度に見れるのですか
らたまりませんね。

最初にブリュッセルを訪れたときは、絵画へ
の興味は教科書にでてる絵くらいだったので、この美術館に
ブリューゲルの作品があるなんて知りようがありません。
絵が好きになったお陰でブリュッセルにまた来れました。

投稿: いづつや | 2005.04.30 21:42

to Juneさん
ブリューゲルの“イカロスの墜落”をじっとみてると色々なことを
想像します。イカロスの悲劇が墜落する場面でなく、海面から突き出
てる足で表現されています。漁師や農夫はそれに動揺することなく、
仕事に打ち込んでいますが、表情がないのが面白いですね。

イカロスの恐怖におののく顔は描かれず、足だけです。この足だけと
いうのが、より愚行を象徴的に表しているかもしれませんね。
風景画に教訓話を、しかもちょこっと描いてるところが凄いですね。

ブリューゲルと広重の風景画の構図が似てるのに偶然気が付きました。
加山又造が1957年に描いた“冬”はブリューゲルの“雪の中の狩人”
に霊感をえてます。ブリューゲルの絵の次のターゲットはJuneさんは
もう見られてるのではないかと思われる“ネーデルランドの諺”
(ベルリン絵画館)です。

投稿: いづつや | 2005.04.30 22:22

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今回の旅行は休みがとれそうだからどこかに行こう、という感じで取っ掛かりはあまり社 [続きを読む]

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