横山大観展
日本橋にある老舗デパート、三越と高島屋が日本画の展覧会で競っている。おかげで質の高い作品をみる機会が多くなった。今、日本橋は日本美術のホットゾーンかもしれない。
三越が1月、平山郁夫展をやると、高島屋では岡倉天心と日本美術院展を開催し、今度はこれに対抗するように23日から三越で足立美術館(島根県安来市)所蔵の横山大観展がはじまった。会期は4/10まで。
足立美術館は中国地方では西洋画の大原とならぶ名美術館。
日本画のコレクションではトップクラスの地位を占めている。なかでも
横山大観の作品は質が高く、数も多い。今回はこの足立美術館の目玉で
ある右の“紅葉”をはじめ50点が展示してある。
“紅葉”は大観の絵の中で最も絢爛豪華な趣のある作品。
六曲一双の屏風の左半双は真紅の紅葉が画面を埋めつくし、右半双には銀地
の空を飛ぶ鶺鴒(せきれい)と群青に色どられた流水が描かれている。
酒井抱一の絵のように気品があり、と同時に川の流れを背景に真っ赤な紅葉が
咲き誇る風景は光琳のように装飾的で華麗である。この絵をみるのは
4回目だが、観るたびにいい気分になる。
ほかにも傑作が揃っている。その中の白眉は海山十題のひとつ“海潮四題・夏”。
この作品は“波騒ぐ”(霊友会所蔵)とともに人気が高い。素晴らしい絵である。
今回、この海山シリーズから長らく所在が不明だった“龍躍る”をふくめ4点が
出ている。
また、“蓬莱山”、“春風秋雨”、“暮嶽”などの風景画やリス、雀、鶉や
牡丹、桔梗(ききょう)を描いた花鳥画にも足がとまる。大観の名画がこんなに揃う
のはなかなか無い。二重丸の展覧会であった。
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コメント
いづつやさん、
私も横山大観展を観てきました。前回の海山十題展は彼の軍国主義に反発して、わざと見逃したのですが・・・。
今日は近代美術館のゴッホ展に行こうと思って地下鉄に乗ったのですが、休日で大混雑しているのでないかと思い、そのまま三越にいってしまったのです。
「無我」、「紅葉」には感心しました。
その後、ついで私の仇敵の「乾坤輝く」に遭遇してしまいました。
海山十題の一つのこの画は、富士山に真っ赤な太陽というか日の丸というか・・・この収入を戦闘機購入の資として寄付した軍国主義絵画というだけに、この太陽は血の色で、富士山の姿を台無しにしているような気がしました。
戦争末期、自分の後輩の美大生が繰上卒業・徴兵され、戦場に散った頃、この大観は軍部にへつらってこんな画を描いていたということです。
つい最近、ステーションギャラリーで観た無言館展は上記の戦没美大生の作品を集めたものですが、大観の「輝く乾坤」のために死んでいった学生は本当にかわいそうでなりません。
硬いコメントを書いてしまいました。すみません。
投稿: とら | 2005.03.28 23:55
to とらさん
横山大観の絵で残念に思うのは、あのシールを貼ったような赤い日の丸です。
今回出てた作品、“海上日出”をみて、この赤い太陽がなければ
いい絵なんだがなあと思ってしまいました。大観の絵に接するときは、
他のいい絵で満足するようにしてます。
大観の絵で一番気に入ってるのが、“紅葉”、“夜桜”、
“夏”、“波騒ぐ”です。昨年芸大で見た“波騒ぐ”が水墨画の最高傑作
ではないかと思っています。海山十題のシリーズには夏や波騒ぐ、
構図が素晴らしい“曙色”などいい絵が揃っているのに、とらさんご指摘の
がっかりさせる“乾坤輝く”もあります。
投稿: いづつや | 2005.03.29 20:17