歌劇「ヘンゼルとグレーテル」とアンチンボルド
普段は紳士淑女が集まる歌劇場に子供たちの入場が多いオペラがある。フンパーディンクの“ヘンゼルとグレーテル”。
物語がグリム兄弟の童話を素材にしてつくられ、主役が子供たちである。ストーリーや曲は大略分かっているが、肝心のオペラは前にビデオを撮ったままにしていたので、時間をさいて見てみた。98年12月、チューリッヒ歌劇場での演奏。
歌い手をみると、ヘンゼルは男の子だが、女性が扮し、魔女は逆に男性が
女装している。演奏時間は前奏曲と3幕で1時間半くらいの短いオペラ。
3幕の森の中がハイライト。菓子の家をみつけ、そのお菓子を食べて楽しい
気分のヘンゼルとグレーテルだが、魔女に捕らえられてしまう。
やがて魔女に食べられそうになるが、二人で助け合い、難を逃れ、魔女を
やっつける。魔法が解けて、捕らえられていた他の子供たちも自由になり、
魔女は焼かれてクッキーに変わる。そこに、探し回ってた両親が現れ、喜びの
再会となる。最後は皆で、神を讃える歌を歌い、幕がおりる。
演奏される曲は明るくて、いいメロディーで、子供たちの歌声も伸び伸びして綺麗。
年齢を問わず楽しめる。この歌劇場の舞台セットに面白いものをみつけた。
菓子の家が顔になっているのである。そして、その顔をよく見ると、右の
アンチンボルドの“夏”を参考にして作っている。一番目に付く大きな鼻は西洋梨
、ほっぺたは桃、目の瞳は野いちごで出来ている。これには驚いた。
ウイーン美術史美術館にある奇画、果物と野菜を組み合わせて顔を描いた
“夏”を下敷きにするとはセンスがいい。オペラと共に舞台美術でも楽しませて
貰った。
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コメント
ジュゼッペ・アルチンボルドの作品って稀少だから見る機会がなかなか少ないんですが、実は大阪の南港にあるワイン・ミュージアムに本物があったりするんですよね。
デザイナーの福田繁夫さんなんかが彼の騙し絵が大好きらしくって、この絵を見るためだけに、何度も大阪に訪れたりしています。
なかなかいい絵で、私もワインミュージアムへは良く行って見ておりますよ(笑)
投稿: シルフ | 2005.02.21 01:16
to シルフさん
元気になられてなによりです。30歳を超えると、少ない睡眠時間が
慢性的になるのが体に一番悪いといいますから、よく眠って下さい。
アンチンボルドの実物が日本にあるとは凄いですね。歌川国芳の浮世絵
に似た絵がありますが、国芳は西洋画(銅版画)を沢山持ってて
自慢してたといいますから、たぶんこのアンチンボルドの絵のコピーか
アンチンボルド一派(オランダにいた)が描いた奇画を見たんだと
思います。
私も長いことアンチンボルドと国芳の関係を調べているんですが、昨年
芸大美の“版画、東西交流の波展”に国芳の自慢話がでてきましたので
、今では国芳が真似たと思っています。別にこれで国芳の価値が下がる
わけではないし、画家が先行例を参考するのは当たり前ですから。
ピカソだってベラスケスのラスメニーナスを作品にしてますしね。
話が国芳にながれちゃいましたが、この“夏”を見てると、誰も思い
つかなかった発想の絵をこの時代に制作したアンチンボルドのシュールな
感覚には驚ろかされます。ウィーンでこの絵を見たときの衝撃はいまでも
鮮明に覚えています。
投稿: いづつや | 2005.02.21 11:58
こんにちは。
以前簡単に国芳とアンチンボルトの関連について
blogで書きました。さらりと。
TBさせていただきます。
いづつやさんのご意見が聞きたいです(^^)
投稿: Tak | 2005.02.22 14:04
to Takさん
TB有難うございます。弐代目・日記帳にアンチンボルドと国芳のこと
書いときました。
投稿: いづつや | 2005.02.23 00:31