ホドラー
クリムト本や山口蓬春の絵に出会ったのを機にスイスの画家ホドラーがちょっと近くなった。
ネーベハイの“クリムト”によると、クリムトは“ベートーベン・フリーズ”(1902年)を制作する際、ホドラーの絵を参考にしたようだ。最後のパート、“幸福への憧れ”で男女が接吻をしている隣にある“天使たちのコーラス”の描き方がホドラーの右の絵“選ばれし者”とよく似ているのである。
“選ばれし者”は1894年に描かれた作品なので、“ベートーベン・フリーズ”の
先行例となっている。ホドラーは“平行の原理”という同じモチィーフ、形態、
色彩を反復する画法を使った。“選ばれた人”の女性の反復は“天使たちのコー
ラス”にも見られ、様式化した少女たちが寄り添って、同じ花が咲く草原に立ち、
抱擁している男女の手足は互いに平行に描かれている。
ホドラーは絵を描き始めたときは印象主義の影響をうけていたが、その後
明晰なフォルム、単純明快な表現、モティーフの繰り返しという独自の画風を
作りあげた。画家が平行の原理と名づけた描き方である。なぜ同じ要素を繰り
返すかというと、印象が深まるからだと言う。
分離派はホドラーの絵を高く評価し、1904年の第19回展では2つの部屋を
使って主要作31点を展示した。ホドラーの人気は高く、多くの入場者があっ
たという。そして、エゴン・シーレのパトロンでもあった人がホドラーの絵を買っ
たそうである。この展覧会の成功によりホドラーの絵は国際的な評価を得る。
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コメント
いづつやさん、こんばんは。
クリムトのベートーベン・フリーズとの関連、なるほど! です。この時代は微妙につながっていておもしろいですね。エゴン・シーレのパトロンつながりというのも初耳でしたが納得できます。ウィーン分離派とその周辺にただよう死の予感というか、モニュメンタルな暗い部分が結構好きだったりします。
私にとってのホドラーはなんと言っても大原美術館の「木を伐る人」です。シンプルで整然とした構成でありながら力強い画面が魅力です。スイスフラン紙幣のデザイン依頼がきっかけの作品だそうですね。
ここのところ、同郷のセガンティーニといい、ホドラーのパラレリズムを彷彿するクリムトといい、いづつやさんの視点にとても共感いたします。
投稿: 桂田 | 2005.01.28 23:05
to 桂田さん
こんばんは。正月、鎌倉で見つけたクリムト本のお陰で、いくつもの
文化記号がコラボレーションし、桂田さんもイメージされる“木を伐る人”の
ホドラーが“平行の原理”を使う象徴派の画家になりました。
一方で日本画の山口蓬春が描いた“山湖”は風景画家ホドラーの影響を
受けてます。96年12月、Bunkamuraで開催された“象徴派展”に
ホドラーの絵が5点、木を伐る人、春、トゥーン湖などが出展された
のですが、今はこの絵がよく理解できるようになりました。
何事もconcernしていると情報が集まってきますね。
投稿: いづつや | 2005.01.29 00:29