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2004.12.30

ヴァン・ドンゲン

183これまで知らなかった美術家の素晴らしい作品に出会ったときほど楽しいことは無い。今日と明日は今年出会ったそんな作家をとりあげたい。

右の絵はオランダの画家ヴァン・ドンゲンの“黒い帽子の女”。エルミタージュ美術館に飾られている作品だ。この絵には5年前、エルミタージュで会っているはずだが、マチスの絵の印象が強く、おなじフォービズムに属するこのドンゲンの絵はまったく覚えてない。

その絵が9月、伊香保で観た竹久夢二の名画“黒船屋”の先行作品をみ
つけているときに偶然手元にあった図録から飛び出てきた。この綺麗な絵
を観た時、夢二が黒船屋を描くとき刺激をうけたのはこの作品ではない
かと直感した。

竹久夢二が黒船屋を描く際、ドンゲンが描いた“猫を抱く女”の構図をまね
たことは知られている。猫を抱く女は黒船屋が描かれた1919年より11年
前の1908年の作品。夢二はこの絵だけでなく、右の黒い帽子の女も見
たのではないか。この絵も1908年に描かれている。緑の衣装と帽子を被
ったきれいな顔立ちの女性を日本人に変えたのだろう。夢二式美人の
特徴は体形が細長いのと大きな目であるが、この大きな目はこの黒い帽
子の女から生まれたのではないか。

ヴァン・ドンゲンという画家は最近まで知らなかった。ひろしま美術館、パリ
の市立近代美術館の図録にも載っているのに記憶がないのは、絵の印象
が薄かったのだろう。黒船屋を見て以降、ドンゲンの絵を意識するように
なると、不思議なものでドンゲンの絵がこちらに向かってくる。10月、アム
ステルダムのゴッホ美術館でいい絵を観た。これは同館の名画100選
に入っている。そして、国立西洋美術館でも“カジノのホール”が常設展示
されていた。

ヴァン・ドンゲン(1877~1968)は1899年パリに移り、マチス、ブラマン
ク、ドランらと知り合い、ゴッホの色使いに刺激をうけたフォービズムの一角
をなしている。キャバレーの芸人などを強烈な色彩で描いた女性画が多く、
後年にはその女性の体つきは10頭身もあるくらい細長くなってくる。なぜ、
こんなに長くなったのかわからない?ひょっとすると、日本からやってきた
鳥居清長や写楽のあの細長い人体を見たのかもしれない?これは今後の
テーマ。

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コメント

いづつやさん、こんばんは。
やっぱりいづつやさんの洞察は深いですね。わたしのようなぼーっとした見方とは全然違います。(^^;
たしかにこの絵、夢二は影響を受けていると感じさせる雰囲気がありますね。
黒という色は、なかなか難しいと思うのですが、この絵も、そして夢二の黒船屋も、暑苦しくない存在感がありますね。
黒といって印象深い絵は、ひろしま美術館のマネの「灰色の羽根帽子の婦人」です。パステル画のこの絵をはじめて見たとき、おもわず「うまい!」って叫んでいました。(^^;

さて、マイブログも今日でしばしお休みです。
明日から実家の徳島に帰ります。
また来年もよろしくお願いします。
では、よいお年を・・・。

投稿: リセ | 2004.12.30 23:21

to Lyceeさん
ドンゲンの絵、灯台下暗しだったんです。
これも黒船屋のおかげです。Myカラーの緑
の絵ですし、最高に気に入っています。
ひろしま美術館のマネの絵は名画ですね。ここ
にはいい絵が沢山あります。よく行きました。
お気をつけて徳島にお帰りください。
来年も宜しくお願いします。

投稿: いづつや | 2004.12.30 23:50

とても興味深く読まさせていただきました。ひろしま美術館にあったヴァン・ドンゲンを覚えていなく、図録を見ましたら、「ヴェニスの眺め」を思い出しました。
>>黒い帽子の女も見たのではないか。・・・>>
いづつやさんの創造力、感じ方、素敵です。私もいつか、そうなりたいです(願望に終わってしまいそうですが・・・)
>>これまで知らなかった美術家の素晴らしい作品に出会ったときほど楽しいことは無い。>>
本当ですね。私の今年の発見は、目黒区美術館の特別展で観た高橋由一の「鮭」。私は肖像画が好きで、静物画には興味が薄いのですが、リアル感というか、驚きと感動でした。
“黒い帽子の女”の洋服の緑。とても味わいのある色です。いづつやさんのMyカラーが緑なんですね。今年最後にとても心に残る勉強をさせていただきました。
来年もよろしくお願い致します。

投稿: Yuko | 2004.12.31 09:53

こんにちは。
雪ですね。大晦日。

このお話し読んでいて、
いづつやさんから直接お聞きした日のこと
鮮明に思い出していました。
なにか随分昔のことのように感じられますが
あれって文化の日でしたよね。
時間の感覚麻痺してます。

今年は大変お世話になりました。
来年もまたお会いして楽しいお話きかせて下さい。

それでは、良いお年をお迎え下さい。

投稿: Tak | 2004.12.31 15:29

to Yukoさん
この調子だと雪化粧の元旦になりそうですね。
黒船屋に魅せられているうちに、ドンゲンのいい絵に出会えました。
夢二がこの絵を観たかどうかはわかりませんが、いまはその
ことよりこの名品に会えたことが嬉しいですね。何かのめぐり合わせですね。

高橋由一の鮭。今年の4月、芸大美術館でみました。これが2度目
だったんですが、目の前に本物の鮭がぶら下がっている感じですね。
教科書にでている絵とはちがって、リアルな描写にみとれます。
名画です。来年も宜しくお願いします。

投稿: いづつや | 2004.12.31 15:41

to Takさん
このドンゲンの絵はいまやMy女性画の上位を占めています。
文化記号のコラボレーションの産物です。
来年も新しい発見があるといいですね。宜しくお願いします。
奥様にも宜しくお伝え下さい。

投稿: いづつや | 2004.12.31 15:51

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