伊藤若冲の桝目描き
BS2の迷宮美術館で伊藤若冲の超技巧を取り上げていた。そのひとつが
桝目描き。世界的にみても誰もやったことのない描き方で屏風絵を
制作している。アメリカのプライス夫妻がもっている“鳥獣花木図屏風”と
静岡県立美術館の樹花鳥獣図屏風、2つとも6曲一双の
大きな屏風である。上のはプライス所蔵の右隻。真ん中に象を描いている。
この右隻には獣を、左隻は伝説の鳥、鳳凰や鶴、鸚鵡などをかいている。
プライスの絵は森美術館の開館記念展覧会“ハピネス”(03年10月)で
はじめて観た。びっくりした。これは西洋のモザイク画だ。石を埋め込む
かわりに一桝々を色でうめて形を出している。桝目は8万余ある!!
静岡県立美術館にも同じような構図で4つ足動物と鳥を描いた屏風があるらしい。
学芸員のひとがこの彩色のことを説明していた。気の遠くなるような作業だ。
この絵を若冲ひとりでかきあげた。工房はもっていなかったのか?これは
工房で制作する絵のような気がするが。。。
このアイデアがどこからきたのか?、最近では西陣織との関連が指摘されて
いるらしい。織物の設計図として使う正絵(しょうえ)という下絵では
絵の上から縦横の線が引かれている。西陣では江戸中期から
正絵を絵師に描かせ、観賞用の美術織物を生産していたという。
若冲の絵が正絵としてかかれたのか、あるいは下絵にインスパイヤーされて
絵画として制作したかは不明とのこと。
静岡県立美術館の絵は知らなかった。公開はいつかチェックしておこう。
是非みたい絵だ。
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コメント
道楽で絵を描いていた人って「強い」ですよね~
投稿: Tak | 2004.12.01 14:49
to Takさん
そう、道楽は強いです。日記では省いたのですが、迷宮
美術館にTakさんもご存知の売れっ子美術史家の
山下祐二さんがでてまして、若冲が桝目描きの
鳥獣花木図屏風を根気よく描いたのは、僧侶になった
ので写経や修行のつもりだったのではとコメントして
ました。
それはどうかな?と思いました。純粋に絵が好きで
道楽で描いてたのだから、なんの苦もなく極彩色の
凄い絵を描いたのでは。。
投稿: いづつや | 2004.12.01 19:19
絵を売るため名声を得るために
描いていないからこそ凄い作品が描けると思います。
道楽もしくはゆるぎない信念。
これって絵描きさんにはひ必要なものですよね。
セザンヌなんてあんな山
何度も何度も人から何言われても
描き続けたのですから・・・
投稿: Tak | 2004.12.03 08:07
to Takさん
セザンヌにしろ、若冲にしろ革新的な画業を残した人は
みんな最初は少数派ですよね。でも突き進んでいけるのは
Takさんのおっしゃるように確固たる信念、情熱が
あるからなんでしょうね。マネのように裕福で絵を描くと
オランピアのような世間の反発を買うものを描く画家も
いれば、ゴッホやモデイリアーニのように絵が売れなくて
悲劇的な最後をとげ、死後人気がでることもあります。
道楽で絵に夢中になれた若冲やマネなんかは幸せですね。
道楽気分が新しいことをやりとげるのにプラスになる
ケースと信念、パッションが力を与えるのと色々ですね。
評論家は時に綺麗ごとでものをいいますから注意々。我々
は若冲は死ぬまで道楽で絵を楽しんでいた、写経のつもり
で鳥獣花木図屏風を描き続けたのではないということで
いきましょう。
投稿: いづつや | 2004.12.03 15:32