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2004.11.30

速水御舟の蛾

626伊藤若冲が一日中、庭で鶏を観察していたという話を聞きながら、近代日本画の速水御舟が軽井沢の家の前で何日も焚き火を見て、名作“炎舞”を完成させたという逸話をおもいだした。

対象物を細部まで、また質感をも写しとろうとすると徹底した観察が必要となる。常人とはみる量がちがう。

この超観察力により御舟は“昆虫二題”をかきあげた。15羽の蛾が同心円的
に飛んでいる。黄色、白、薄緑、青、赤の羽が鮮やかだ。炎舞にも蛾が舞う
が、こちらは炎のなかを飛んでいるので羽の色の鮮明度は昆虫より落としている。
先頃あった山種美術館の御舟展で2つを隣合わせでみると、昆虫二題
の蛾の美しさが際立っていた。花鳥画を革新的な技法で超リアルに
かいたのは若冲と御舟であろう。若冲のDNAは御舟にうけつがれたようだ。

ダリ、若冲、御舟の3人の絵を眺めていると超人的な画才に共通点がみいだせる。
それは超観察力、超技巧、超イメージ力。
ダリは超一流のデッサン力で小さな蟻や足の異様に長い馬、象を描いており、
ときにはデフォルメなしで怖いトラを登場させる。ダリは動物が好きだったのだろうか?
若冲の“鳥獣花木図屏風”にも象、黒彪、龍、虎などが桝目描きででてくる。

若冲の花鳥画がスーパーリアリテイかつシュルレアリスム的に表現されているのに
対し、御舟は蛾を超リアルにそして幻想的、装飾的に描いている。

3つのコード(スーパー能力)で3人の絵=文化記号は繋がった。

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2004.11.29

伊藤若冲の桝目描き

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BS2の迷宮美術館で伊藤若冲の超技巧を取り上げていた。そのひとつが
桝目描き。世界的にみても誰もやったことのない描き方で屏風絵を
制作している。アメリカのプライス夫妻がもっている“鳥獣花木図屏風”と
静岡県立美術館の樹花鳥獣図屏風、2つとも6曲一双の
大きな屏風である。上のはプライス所蔵の右隻。真ん中に象を描いている。
この右隻には獣を、左隻は伝説の鳥、鳳凰や鶴、鸚鵡などをかいている。

プライスの絵は森美術館の開館記念展覧会“ハピネス”(03年10月)で
はじめて観た。びっくりした。これは西洋のモザイク画だ。石を埋め込む
かわりに一桝々を色でうめて形を出している。桝目は8万余ある!!

静岡県立美術館にも同じような構図で4つ足動物と鳥を描いた屏風があるらしい。
学芸員のひとがこの彩色のことを説明していた。気の遠くなるような作業だ。
この絵を若冲ひとりでかきあげた。工房はもっていなかったのか?これは
工房で制作する絵のような気がするが。。。

このアイデアがどこからきたのか?、最近では西陣織との関連が指摘されて
いるらしい。織物の設計図として使う正絵(しょうえ)という下絵では
絵の上から縦横の線が引かれている。西陣では江戸中期から
正絵を絵師に描かせ、観賞用の美術織物を生産していたという。
若冲の絵が正絵としてかかれたのか、あるいは下絵にインスパイヤーされて
絵画として制作したかは不明とのこと。

静岡県立美術館の絵は知らなかった。公開はいつかチェックしておこう。
是非みたい絵だ。

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2004.11.28

ダリ劇場美術館

世界美術館紀行(NHK)でダリ劇場美術館が登場した。
カタルーニャ地方の小さな町、フイゲラスに年間100万人の
観光客が来るそうだ。ひとえに奇才ダリの絵をみるために。
美術館ビジネスもこのくらいの来場者になると大儲けとは
いかないかもしれないが、かなりの収入が期待できるだろう。
いつかここを訪れたい。ダリをもっと知るためにはここは避け
て通れない。ちょっと怖いもの観たさ的な気分もある。シュル
レアリスムの作品をみるんだから、お酒でもひっかけてみる
のも一興か。

実際行くとなるとツアーではなく、個人旅行になるのかな?
名古屋の桂田さんは前ここに行かれたとTakさんの掲示板で
おっしゃっていた、いつか聞いてみよう。

これまでみたダリの作品は。。
    ★記憶の固執 (NY、MoMA)
    ★ナルシスの変貌(ロンドン、テートG)
    ★ポルト・リガトの聖母 (福岡市美術館)
    ★ヴィーナスの夢 (広島県立美術館)
    ★キリンの連作 (池田20世紀美術館)
    ★ガラの測地学的肖像 (横浜美術館)
    ★ピアノに現れたレーニンの6つの肖像
           (パリ、ポンピドーセンター)
    ★風景の中で眠る女 (NY、グッゲンハイム)
    ★液状の欲望の誕生 (ベニス、グッゲンハイム)

画集を2,3冊広げて見ると代表作はまだ残っている。
これから観たい絵は。。。
    ★聖アントニウスの誘惑 
        (ブリュッセル、ベルギー王立美術館)
    ★茹でたインゲン豆のある柔らかい構造
        (フィラデルフィア美術館)

ダリのことをよく知っているとはとてもいえない。魅力一杯
の大天才には間違いない。こちらがついていけないだけだ。
今年福岡で見た大きな絵、ポルト・リガトの聖母(275×
210cm)には感動した。MoMAにある記憶の固執とよく
似た広島にある絵も大きくて魅了される。ダリは不思議な
画家であり、楽しい画家でもある。

フィゲラスの劇場美術館に行き、メイ・ウェストの部屋や天井
画(風の宮殿)がみられたら楽しいだろう。

    

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岩佐又兵衛の山中常盤

岩佐又兵衛の絵巻物を素材にした映画「山中常盤」を有楽町の
朝日ホールでみてきた。これは“山中常盤”(MOA美術館所蔵の
絵巻)全12巻を古浄瑠璃の節回しをバックにスクロールし、
映画に仕上げたものである。一般公開は本日が最初。第5回
東京フィルメックス作品として上映された。

芸術新潮10月号で特集された岩佐又兵衛のキャッチコピーは
“血と笑いとエロスの絵師”。この血とエロスの匂いがするのが
映画となった“山中常盤”。牛若丸の母常盤御前と従者が
平泉に向かう最中、関が原近くの山中というところで、盗賊
に刺し殺される。悲しみにくれる牛若丸だが、母が泊まった宿の
老夫婦の協力をえて、見事盗賊を討ち果たす。のち、平家追討
で京に上る義経がその道中宿の夫婦に昔のお礼に領地を
与えるというイイ話しで物語は終わる。

ここで血とは。。4巻に盗賊の刀が常盤の胸に突き刺さって
いるシーンが出てくる。血が飛び散り衣装が血に染まる。
これがでてきたとき血ではおなじみのカラヴァッジョの
“ホロフェルネスの首を切るユデイト”を想い出した。首から血が
びよーと出ている絵だ。日本にもカラヴァッジョがいた。又兵衛
のこの場面もぞくっとする怖さがある。

エロスはちょっとオーバーすぎるかも。着物がはだけ、息たえ
だえの常盤の胸がふつうでは描かないほど露出している
せいだ。また、髪の毛が一本々細密にかかれている
のでフェテイシズムぽくみえるのかもしれない。

今年の最大の収穫は岩佐又兵衛に出会えたことだ。
なおこの映画は来年4/23~29、岩波ホールで上映される
ことが決まっている。


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2004.11.26

川端龍子の阿修羅の流れ

627
川端龍子の絵をまとまってみるのは今回が2度目。最初は
日本橋高島屋で97年5月に開催された龍子没後30年記念展。
そのときはこの画家の特長である大きな絵にびっくりした
記憶がある。とくに印象深いのが“筏流し”。以来龍子のファン
になり、代表作を追っかけてきた。

今回の名作展に出品された作品の白眉がこの“阿修羅の流れ”。
死ぬ2年前の79歳に描いた名作だ。奥入瀬の渓流をダイナミック
に描いている。40代半ばに琳派風の装飾的な絵を仕上げた
画家が最晩年にはこんな壮大な絵を残している。ふつうの
画家なら壮年になるにつれ画風が枯れてくるのに龍子は逆に
川の水しぶきを荒々しく表現している。すごい絵である。


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2004.11.25

ウェブログ事始、東博通常展

はじめまして、いづつやと申します。PCに精通してないのに大胆に
もココログをスタートさせました。徐々に改善し、笑われないように
体裁を整えたいと思います。
よろしくお願いします。画像情報も入れられるようがんばります。
波長の合う人と楽しくおつき合いができればいいのですが。。

美術館めぐりをもう20年も続けている。23日は東博の通常展と
大田区の川端龍子記念館にとなりのお方と行ってきた。
入場料は東博が420円、龍子が200円。こんな安い料金で凄い絵
をみせてもらった。

東博は日本ギャラリーをリニューアルして以来、所蔵品の名品を
オールキャストで展示している。これを見逃す手はない。
23日からの展示で一番の狙いは与謝蕪村の“山野行楽図屏風”と
谷文ちょうの“公余探勝図巻”。ともに重文。

蕪村の絵はおおらかでユーモラス、図録ではこれがわからない。
リラックスしてゆったり絵を鑑賞できるのがいい。南画の真骨頂か。
公余探勝図巻。これは松平定信が相模伊豆の海岸を巡見したとき、
お供で行った谷文ちょうが下田港や石廊崎などを描いた巻物。
よく細部まで描けていて魅力充分。緑青が鮮やかにでている田園
風景や切り立った岩に打ち寄せる波を実にリアルに表現している。
今回の展示は下巻のみ。上巻がみたくなった。

近代日本画では前田青邨のいい絵があった。神輿振(みこしぶり)
はじめてみる巻物。僧兵が橋をわたり町をとおり神輿を運んでいる。
これを大勢の人が見物している。俯瞰の構図がいい。
喧騒の感じが伝わってくる。また、青邨流のたらし込みを幾箇所に
使い、琳派の装飾性をだしている。やはり青邨は巨匠だ。

それにしても東博は青邨の名画をいくつも持っている。
1ヶ月くらい前にも“唐獅子”をみた。東博通常展の常連になりそう。

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