2008.07.04

清方生誕130年記念 鏑木清方展

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鎌倉の鏑木清方記念美術館で行われている“鏑木清方展”(5/31~7/6)をすべり込みセーフで見てきた。

念願の“道成寺・鷺娘”(拙ブログ5/28)との対面を果たしたのですっかり安心し、記念美で清方の生誕130年を記念した特別展が行われていることを忘れていた。出品作のなかに長らく追っかけている上の“目黒の栢筵”(めぐろのはくえん)があったから、とんだミスをするところだった。

今回は記念展だから館所蔵の名画に加え、東近美、本郷の弥生美術館が所蔵する5点が展示されている。数はいつもの通り15点と少ないから10分もあれば見終わる。東近美のは画巻“目黒の栢莚”(部分)と平常展によく登場する真ん中の“鰯”(いわし)。

“目黒”は一種の歴史風俗画。栢筵は二代目市川団十郎の俳名で、目黒の別邸で団十郎が花ばたけの前に床を据えて、茶を楽しんでいるところが描かれている。江戸歌舞伎の基礎をつくったといわれる二代目市川団十郎(1688~1760)は稀代の名優であっただけでなく、俳諧狂歌文才に優れた風流人でもあった。

団十郎の隣にいるのは娘に白髪を抜かせている妻。紫陽花や白ユリがみえる花ばたけと後ろの木を斜めに描き、その間に3人のいる床を配して奥行きをつくる構成が秀逸。文人、栢筵は心穏やかに豊かな自然を楽しんでいる感じ。清方はこういう素顔の団十郎の心情に共感し、この絵を描いたのであろう。

明治時代の町の様子や風俗は知る由もない。だから、“鰯”に描かれた鰯売りの少年には遭遇することはないのに、絵というものは有難いもので、小さいころ見た竿竹や金魚売りのおじさんのことがおぼろげながら思い出される。清方のこの絵や“明治風俗十二ヶ月”(東近美)とか川合玉堂の風景画を楽しんでいるお陰で、ときどき昔の町の風物詩や日本人の琴線にふれる田舎の情景に感情移入することができる。

下はお気に入りの“朝涼”。以前にも一度取り上げたことがある。長い髪の毛を手でいじくっているところがいかにも少女らしい(清方の長女)。4年前、ここではじめてこの絵と対面したとき即、My好きな女性画に登録した。以来、会うたびにいい気持ちになる。

画集に載っている清方の作品は“目黒の栢筵”を目のなかにいれたので、見たい絵はほぼ済みになった。ここも暫くお休み。

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2008.07.03

生誕290年 木喰展 ー庶民の信仰・微笑仏ー

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現在、横浜そごうで開かれている“木喰展”(6/27~7/24)のチラシがなかなかいい。左斜め横から撮った上の“地蔵菩薩像”(日本民藝館所蔵)が“皆さん。最近、笑ってますか”と語りかけている。

このチラシに誘われたのか会場にはかなりの人がいる。今年は木喰(もくじき、1718~1810)の生誕290年にあたる。これにあわせて企画された大回顧展は昨年10月の明石市立文化博物館からはじまり、これまで全国5ヶ所を巡回し、最後にここへやってきた。

仏像130点、書画や資料30点は見ごたえ充分。06年10月の“仏像展”(東博)にも“十六羅漢像”(京都・清源寺)や今回も出品されている“十王坐像”(兵庫・東光寺)、“十二神将像”(新潟・西光寺)などすばらしいのが13点展示してあったから、この回顧展とあわせると木喰仏の代表作はほとんど見たことになるのではなかろうか。

全部を見終わってまた、会いたくなるのが上の“地蔵菩薩像”と真ん中の“自刻像”。どちらも民藝館にあるもので、馴染み深い作品(拙ブログ06/10/12)。細い目の下がぷくっとふくれる笑顔はほかの像にもみられ、その都度心が和むがこの二体の微笑みが群をぬいていい。

これは木喰84歳の作で、故郷、甲州丸畑に建立した四国堂に納められた八十八体像のひとつ。木喰仏を世に知らしめた柳宗悦(やなぎむねよし)は“どこにこれ程親しげな仏があろう。誰もくつろぎながら仏と語ることが出来る。如何なる者でも仏の伴侶である。無学な者も貧しい者も仏のよき友達である。何も教理を説きはしない。知識を求めはしない。木喰上人は仏教を民衆の手に贈ったのだ”と述べている。

現存する神仏像は617体。このうち15体ある自刻像は今回5点ある。目につくのが6点ある“子安観音菩薩”。そのなかでしばらく立ち止まってみたのが菩薩のふくよかな顔や可愛い子供がきっちり彫られている愛知県新城市徳蔵寺蔵のもの。

木造彫刻として見ごたえがあるのは長岡市の寺がもっている“如意輪観音菩薩”、“千手観音菩薩”、“三面馬頭観音菩薩”など5体。袈裟のカーブとか手、蓮の花に見入ってしまった。

下は再会した“十二神将”。2体は笑っているが、10体は忿怒相。ちっこい神将だが、太い眉毛をつりあげ、ぎょろっとした目でみつめる姿は迫力満点。また、力強く彫られた長い髯や甲冑にも目が釘付けになる。

これほど多くの木喰仏と対面できたことが嬉しくてたまらない。円空に続き、木喰も見せてくれた横浜そごうに感謝々!

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2008.07.02

Bunkamuraのロシア・アヴァンギャルド展

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現在、Bunkamuraで開催中の“ロシア・アヴァンギャルド展”(6/21~8/17)への期待はチラシに謳われている通りシャガールとマレーヴィチ。今回展示してある70点は
1999年に開館したモスクワ市近代美術館が所蔵するもの。

東京都美の“国立ロシア美展”(昨年4月)に刺激されたのか、Bunkamuraもこの展覧会のあと来年には“国立トレチャコフ美展”(09/4/4~6/7)を主催するなど、ロシアの画家の開拓に力が入っている。こういうまだ日本では知られていない名作をどんどん紹介しようという姿勢は好感がもてる。

モスクワ市立近美のコレクション全体の質はわからないが、作品を見る限り中くらいではなかろうか。例えば、マレーヴィチの絵では、アムステルダム市立美やNYのMoMAにある作品と同じくらい質が高いという感じではない。シャガールは“ヴァイオリン弾き”など3点あるが、その色彩や構成にすごく惹きこまれることはなく、普通のシャガールの絵。だから、過度の期待は禁物!

上は魅了された作品のひとつ、ゴンチャローヴァ(ラリオーノフの妻)が描いた“あんずの収穫”。横向きの農婦が着ている赤の衣装と異常に大きい腕と足が目に飛び込んでくる。そのプリミティブな人物描写と農婦の左右に鮮やかな黄色のひまわりを配する色彩構成力に息を呑んで眺めていた。

ネオ・プリミティブのコーナーにあった絵では、インパクトのある目が印象深いグリゴーリエフの“女(連作・親密より)”と強い色調で描かれた横長の大作、レントゥーロフの“女たちと果物(モデルたちと共にいる自画像)”に足がとまった。

真ん中はお目当てのマレーヴィチの作品“農婦、スーパーナチュラリズム”。これはシュプレマティズム絵画のあと、再び具象画へ回帰した作品で、第二の農民シリーズの一枚。農婦の背景にみえる斜めにのびた赤や黄色、緑の鮮やかな色面はシュプレマテイズムそのもので強い躍動感に溢れている。白と黒で交互に彩色された顔のない農婦はどこかレジェが描く人物のイメージ。

サイボーグ的なこの絵と較べると、目鼻のある“刈り入れ人”のほうが緊張することなく見れる。2点あったスプレマティズムの絵“白い/黒い十字架”はMoMAでみたものと較べるとあまり心に響かない。抽象美をすごく感じられる作品を期待したのだが。

下は斜めにゆがんだ構図のため、あまり長くは見てられないが大変惹かれたドミートリエフの大作、“サーカス”。奥行きのある画面構成とドイツ表現主義のような人物表現に思わず見とれてしまった。

新しい美術館のコレクションだから、サプライズの作品がそれほどないのは当たり前といえば当たり前。でも、普段ほとんど見る機会がないロシア・アヴァンギャルドの作品のうえ収穫が数点あったから、◎とはいかないが○はつけられる。

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2008.07.01

08年後半 展覧会プレビュー

360仕事でも遊びでも計画を立てるときは熱が入る。08年後半に開催される展覧会をまとめてみた。

美術館の訪問は半年タクトでまとめた展覧会情報をもとに動いている。途中で新しい情報が入ってくれば、逐次追加の予定。

今年は8月にオリンピックがあり、柔道、水泳、野球、マラソンなど人気種目の応援に忙しくなりそうだから、美術鑑賞とTV観戦の時間のやりくりに苦労しそう。

★西洋美術
7/19~9/23    舟越柱 夏の邸宅       東京都庭園美
8/2~12/14    フェルメール展         東京都美
8/2~10/5     ファイニンガー展        横須賀美
8/8~8/30     秘蔵の名品アートコレクション展  ホテルオークラ別館
8/9~11/3     アネット・メサジュ展      森美
8/30~10/26   ミレイ展             Bunkamura
9/6~11/3     パリーNY20世紀絵画     府中市美
9/13~11/9    ジョットとその遺産展     損保ジャパン美
9/13~11/30   モーリス・ルイス展       川村記念美

10/4~12/14   ピカソ展             サントリー美&国立新美
10/7~11/24   池口史子展           松涛美
10/9~10/27   ピサロ展             大丸東京店
11/8~12/23   ワイエス展            Bunkamura
11/9~12/28   石田徹也展           練馬区美
11/15~1/25   セザンヌ主義           横浜美
11/16~1/18   レオナール・フジタ展      上野の森美
11/22~12/28  丸紅コレクション展       損保ジャパン美

★日本美術
6/27~7/24    木喰展              横浜そごう
6/28~9/5     白隠展              永青文庫
7/1~8/2      町田久美展           西村画廊
7/8~8/17     対決 巨匠たちの日本美術  東博
7/12~9/15    NIPPONの夏          三井記念美   
7/15~9/15    北京故宮 書の名宝展    江戸東博
7/26~9/21    小袖 江戸のオートクチュール   サントリー美
8/30~11/3    源氏物語の1000年      横浜美
9/1~9/28     ベルギーロイヤルコレクション展     太田記念美
9/6~10/26    近代日本の巨匠たち      出光美
9/13~10/26   八犬伝の世界          千葉市美

9/13~11/3    土牛・遊亀展           山種美
9/13~10/26   高山辰雄展           練馬区美
9/23~10/12   正木美術館展         東京美術倶楽部
10/4~11/30   濱田庄司展          川崎市市民ミュージアム
10/4~12/7    伊万里展            静嘉堂文庫
10/7~11/16   大琳派展            東博
10/7~11/30   ボストン美浮世絵名品展    江戸東博
11/1~12/23   陶磁の東西交流        出光美
11/8~12/25   琳派から日本画へ       山種美
12/6~11/24   琳派展              MOA
12/23~1/26   japon 蒔絵            サントリー美   

(ご参考)
・西洋画の目玉はなんといっても東京都美の“フェルメール展”。7点のうち4点が日本初お目見え。相当混雑しそう。
・Bunkamuraも“ミレイ展”、“ワイエス展”といいのが続く。テート・ブリテンでは“オフィーリア”などミレイの絵が一点もみれなかったので日本で仕切り直し。ワイエスはいい絵がきて欲しいが期待は半分にしている。
・期待値の高いのは森美の“アネット・メサジュ展”と練馬区美の“石田徹也展”

・日本美術は前半に較べると後半はワクワクするようなすごい展覧会がどっとある。その筆頭が東博の“対決 巨匠たちの日本美術”。出品作のなかにはメトロポリタン美で会えなかった芦雪の“海浜奇勝図”など長年追っかけていた名画がいくつも含まれている。もうすぐはじまる。
・琳派展も東博、山種、MOAと楽しみ3連発!とくに東博の“大琳派展”は期待大
・浮世絵は“NIPPONの夏”が前菜で、そのあと太田と江戸東博で極上のメインデイッシュをいただけそう。ボストン美の名品が待ち遠しい。

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2008.06.30

イタリア現代陶芸の巨匠 カルロ・ザウリ展

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東近美で行われている“カルロ・ザウリ展”(6/17~8/3)を楽しんだ。日本の陶芸作家なら全部とは言えないが、かなり知っているが、海外の陶芸家となると実際に作品を見たのはきわめて少なく、イギリスのバーナード・リーチ、ルーシー・リー、ハンス・コパーくらいしかいない。

だから、イタリアのカルロ・ザウリ(1926~2002)のことはまったく知らず、作品の情報はチラシに載っているものだけ。でも、作品の吸引力がとても強く、展覧会に対する関心は高かった。作品は1951年から1991年までの40年間につくられた128点の陶彫とグラフィック、タイル38点。

初期の作品、マジョルカ陶器は巻貝のようなおもしろい形をした壺や目の醒めるような赤い壺が目を楽しませてくれた。1967年あたりから、色彩は“ザウリの白”と呼ばれる灰白色に変わりはないが、形は器物から離れ、彫刻的なオブジェに変わってくる。

上はぐるぐる回ってみた“球体のふるえ”。つい先だって伊豆で美味しくいただいた鮑と卵をミックスしたような形をしている。球体に裂け目の入ったフォルムはかなり前衛的だが、古代魚とか深海に生息する魚にまでイメージは膨らんでいく。

ザウリの生み出すストーンウェアによる陶彫は球体・アンモナイトのようなものから、古代ギリシャ彫刻のヴィーナスが着ている衣装の襞(ドレーパリー)を連想させるものとか、砂漠にはえている細長いサボテンの棘をとったような塔とかいろいろある。

真ん中は1979年の作品“形態のうねり”。灰白色に薄く赤茶色を彩色している。じっとみていて頭をよぎったのが備前焼作家、金重晃介の“聖衣”。同じフォルムの別ヴァージョン、黒褐色の“黒のうめり”が隣にあった。

1981~1991年につくられたもので強く惹かれるのは下の“塔”(部分、1986)。この塔は大きいので、3階の特別展示室に飾ってある。堂々としたオブジェで、ローマのフォロロマーナにある神殿遺跡の柱を彷彿とさせる。この“塔”を含めて会場には15本の“碑・塔”がある。対面するヴァージョンにあわせて、サボテンとか焼き鳥の皮を連想した。

出口近くのところに置いてある“自然”も心を揺すぶる。火山から吹き出た溶岩が山の斜面で冷めて固まったような感じ。ザウリは1990年ころから記憶が薄れていくアルツハイマーの症状がでて、2002年に亡くなった。この展覧会のことは一生忘れないだろう。

なお、この回顧展は8/26~10/26に山口県立萩美術館・浦上記念館でも行われる。

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2008.06.29

日本民藝館の陶匠・濱田庄司展

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渋谷の日本民藝館へ定期的に出かけるのは民藝派のやきものをみるため。現在、ここで濱田庄司の没後30年を記念した回顧展(6/17~8/31)が行われている。これまでも濱田庄司の作品は数多く見ているので、特別興奮するということはないが、好きな陶芸家だから、心がはずむ。

作品は1階正面階段の両サイドと2階の企画展室に全部で130点あまり飾られている。濱田のやきものがここにどれだけあるのか聞いたことはないが、雑誌“民藝”などに載っている代表的なものはこれでほとんど鑑賞したような気がする。ちょっと感慨深い。

ここはこういう立派な回顧展を開催しても図録は用意してくれないから、作品の名前と簡単な形を全点メモった。シンドイ作業だが、作品を忘れないために必死に手を動かしている。過去拙ブログで紹介したお気に入りの3点はすべてあった。“緑釉黒流描大鉢”(0412/3)、“赤絵盛丸紋角瓶”(06/7/19)、“青釉押文十字掛描角皿”(07/7/5

これらとやきもののタイプや釉薬の色がダブらないように選んだ“掛分指描火鉢”(上の画像)、“鉄釉丸紋大鉢”(真ん中)、“白釉黒流描大鉢”(下)も心を打つ名品。“火鉢”の模様は黒釉を厚く掛け、乾かないうちに指ですばやく掻き取り、茶褐色の模様を浮かび上がらせたもの。簡単なように見えるが、何度も々もトライしないとこのような力強くてリズミカルな線は生まれてこない。濱田の指はもう自在に動いている感じ。

濱田作品のなかでいつも圧倒されるのが大鉢。今回、7点でている。いずれもすばらしく、所蔵する名品は全部見せてくれてるのではなかろうか。こういう機会は滅多にないから、釘付けになってみた。真ん中の大鉢は黒と茶色の見込みにしっかり描かれている丸紋がなかなかよく、どっしりとしている。同じような丸紋のヴァージョンがもう2点ある。

アクション・ペインティングを思わせる抽象的な文様が見られる“流し描き”は傑作3点が揃い踏み。知恵の輪のような曲線の“緑釉黒流描”、黒の太い線が縦に並行的に流れる“白釉黒流描”、そして下の井桁文の“白釉黒流描”。濱田庄司が得意とするこの流し描きは15秒の瞬間芸。抽象的な文様だが線に勢いがあり、生き生きとした表情なのですごく惹きつけられる。名品の数々に気分が高揚した。

なお、この展覧会は大阪日本民藝館(9/13~12/21)にも巡回する。また、濱田庄司の回顧展は秋にも川崎市市民ミュージアムで開催される(10/4~11/30)。このときは図録が制作されるだろうから、期待して待ちたい。

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2008.06.28

“KAZARI  日本美の情熱”は刺激がいっぱい!

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サントリー美の企画展は開館以来ずっと注目しているが、“KAZARI 日本美の情熱”(5/24~7/13)はパスでもいいかなという気分だった。展示品のやきもの、衣装デザイン、風俗屏風などの多くをこれまでみているのがその理由。

だが、気になってしょうがないのが2点あった。上の国宝“火焔型土器”(新潟県笹山遺跡出土、縄文時代中期)と先端が腕の形をし、その腕が金剛杵を握るという一度みたら忘れられない兜。行くかどうか決断しかねているとき、新日曜美術館でこの展覧会が紹介され、そこでまた興味深いものが出てきた。下の目が点になるほどお面白い“平田一式飾”。この一式飾りに背中を押される格好で、六本木ミッドタウンへ出かけた。

“火焔型土器”は一番最初に同じく国宝の“王冠型土器”と並べて展示してある。これは手元にある“とんぼの本 国宝”(93年5月、新潮社)でその存在を知り、いつか見たいと願っていた。国宝になったのは9年前。東博でいつもお目にかかる縄文土器と較べると、そのエネルギッシュで力強い造形や渦巻き文様は似ているが、こちらのほうが把手の数が多いし、器体の表面に施された模様はより複雑で装飾性も高い。

まず、お目当ての土器をみたから、次は腕の兜をめざした。ところが、展示替リストをみると6/16までの展示だった。見たかった割には行動はアバウト。これでは作品はすっと逃げていく。目の前に飾られている兜はいずれも奇抜さを競っている!東博でもたまにギョッとする形のものを見ることがあるが、これほどバラエティに富んでいない。兎の耳と鯱の形した兜をじっと眺めていた。

作品は期間中全部で335点展示されるから、一生懸命みると日本美術のエッセンス、“かざりの美”をかなり楽しめる。注目してみたのが衣装の模様。肩衣の柄のなかにハットするのを見つけた。真ん中の“福良雀雪輪模様”。雀の飛ぶ姿を真上から捉えているのである。この視点から描かれた鳥の絵はとても珍しいから、同類の絵がすぐ頭に浮かんでくる。それは川端龍子が群雁の飛んでいるのを真上から見下ろすような構図で描いた“南飛図”。

島根県の出雲市平田町に江戸時代から伝わる“平田一式飾り”ははじめてみた。使われている材料がおもしろい。陶器など日用品を組み合わせ、それらを紐や鉄線で結びつけるだけで、材料を変型させたり、穴を開けたりはしない。下の“巨大エビ”は自転車部品でつくられている。生きたエビが動いているよう。自転車の部品を使う発想は並みの感性からはでてこない。

平田の人々が毎年7月に行われる天満宮祭という“ハレ”の日につくる“一式飾り”は遊び心に溢れている。想像がまたあらたな想像を生み、伝統文化と現代性が見事に溶け合った作品が祭りを盛り上げる。なんともうらやましい伝統行事である。

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2008.06.27

東博浮世絵エンターテイメント! 春信

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相変わらず東博の平常展に出品される浮世絵を見続けている。現在でている作品29点の展示期間は6/3~6/29。2月以降、西洋画の紹介に追われ、鑑賞した作品をアップできなかったので、本日は久しぶりの“東博浮世絵エンターテイメント!”

ここへはもうかれこれ4年近く通っているから、鈴木春信のような重点鑑賞絵師は二周り目の絵にちょくちょく遭遇する。今回出ているのは“小野道風”(上の画像)、“見立伊勢物語(八つ橋)”(真ん中)、“舫い舟美人”(もやいふねびじん、重美、下)の3点。

春信の絵は中国や日本の古典文学にでてくる話とか歴史上の人物の逸話を題材にしたものが多いので、絵の楽しみにプラスαがある。“小野道風”はあの逸話“柳に蛙”を絵画化したもの。話を知らない人でも絵の中にすっと入っていける。柳に一生懸命跳びつこうとしている2匹の蛙は真剣そのもの。川岸には傘をさし、口を真一文字にむすんだ貴族がいる。この男が平安の能書家、小野道風。

“俺は今、書の手習いに行き詰まっているが、蛙も柳の葉につかまるのになかなか苦労しているなあー。でも、この蛙たちは俺みたいに気が萎えることもなく黙々と跳んでいる”。数度のチャレンジの末、首尾よく柳に跳び移った蛙をみて、小野道風は“もっと努力しないといけない!”と心を入れ替え、書の修行に再び精進する。春信は“見立小野道風”という絵暦も描いており、ここでは蛙は一匹で、道風は若い娘の姿に置き換えられている。

真ん中の“見立八つ橋”はお気に入りの一枚。目を惹くのが腰をかがめて草藁の紐を締めなおしている若衆と菅笠を被り右足を一歩踏み出すポーズをしている女性。春信は菱川師宣同様、動きのある表現が大変上手い。動感描写の上手い絵師は観察力に長じているだけでなく、運動神経もよかったのではなかろうか。話が横にそれるが、クラシックの指揮者のクライバーはシャープで優雅な指揮ぶりで有名だったが、踊りもものすごくうまかったらしい。

動きのある人物表現とともに感心するのが八つ橋と杜若(かきつばた)の配置の仕方。ジグザグに曲がった八つ橋を全部見せてくれないので、見る者は画面からはみ出した部分を自分でイメージして、絵よりもっと広い空間を想い描く。こういう絵をみると浮世絵の画面構成というのはすごいなと思う。

下はチラリズム描写の効果がさらっとでている絵、“舫い舟美人”。これは画面をしっかり見ないとどこがチラリズムなのかわからない。右の舟から陸に上がろうとしている若い芸者の隣に膝下と腕が少しみえる。茶褐色の直方体は三味線を入れる箱で、これを運ぶ男(箱屋と呼ばれている)がチラッと描かれているのである。柳の下で後ろを振り返っている先輩芸者は“お玉ちゃん、宴席で旦那衆がお待ちだから急ごうか!”と声をかけている様子。

季節柄、山種の花尽くしのように、ここでも北斎の“牡丹に蝶”や勝川春湖の“杜若”などがあった。北斎が70代前半に描いた花鳥画に魅せられているが、この牡丹にもぐぐっと惹きこまれた。

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2008.06.26

ミヤケマイ展 ーココでないドコかー

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日本橋高島屋6階の美術画廊で昨日からはじまった“ミヤケマイ展ーココでないドコかー”(6/25~7/1)を見た。この個展の情報は現代アーティストの榎俊幸さんのブログ“絵ノローグ”で教えてもらった。

美術雑誌はほとんど買わないのだが、アート・トップの昨年の5月号(芸術新聞社)が“ホントの歌麿”を特集していたので例外的に手に入れた。この記事のなかに“線の画家、町田久美”と“絵描き、ミヤケマイ”が語る歌麿の魅力というのがあり、はじめてミヤケマイという作家を知った。

歌麿つながりだから、その作品に興味を覚え、漠然ではあるがいつか本物を見たいと思っていた。どんな作家?榎さんのご案内記事で正確に名前を確認するまで、どういうわけかミ・マ・ヤ・ケ・イでインプットされていた。ミマヤケイか!カタカナ名だから、NYやロンドン、パリを拠点にしている新進気鋭の女流アーティストなのだろうな?クサマ・ヤヨイ的な流れをくんでいるのかな?勝手にイメージが膨らんでいく。

作品は屏風や掛軸など30点ある。表現方法は伝統的な日本美術のスタイルをとり、モチーフも水墨山水画、やまと絵、琳派からとってきたものが多いが、これを見立絵風に今の時代に目にするものと取り合わせて少女雑誌とかユーモラスな漫画感覚で表現するところがミヤケマイ流。

大半の作品は彩色された下地に紙とか布を貼ったり、重ね合したりして、形をつくっている。浮世絵の立判古(起し絵とも言う)をぎゅっと圧縮した感じで、少し立体感がある。こんな絵ははじめてみた。

上の絵はこのタイプではない“捕月”。3匹の猿は体のどこかが画面からはみ出している。上にいる猿は顔が見えない。普通の画家なら全部ではないにしろ顔の一部を前でも後ろでもちらっと見せるのに、ミヤケマイは手足だけしか描かない。このあたりの視点の取り方がすごくユニーク!

真ん中は思わず“おもしろい!”と唸ってしまった“お出かけ”。右のパスポートを持ったカエルや茶色の葉っぱなどは紙が貼り付けてある。カエルの上には風に揺れる日の丸マークの布があり、左のほうに目をやると旅客機が富士山の上空を飛んでいる。カエルの旅立ちの嬉しい気持ちを前景と遠景の大小対比で表わすところが憎い。

今回、最も魅了されたのが下の“秘密”と“花園”。どちらもハットする絵。“花園”のほうは横になった女性の綺麗な足が見えるだけで、すねのところにハチがとまっている。顔が見える“秘密”のほうがいいが、横向きの体はマジックでみる女性の空中浮揚のイメージ。でも、首がみえないので不思議な感覚が画面全体に漂っている。

初日だったから会場にはミヤケマイさん本人がおられたので、図録にサインをしてもらい、少し話をした。全然イメージとちがうとても明るくてチャーミングな方だった。プロフィールの説明文を読むと、昨年5月にオープンした銀座エルメスのウィンドウギャラリーを担当したとあった。今、注目のアーティストなのである。

歌麿好きが縁でミヤケマイさんの作品に導いてくれたミューズに感謝したい。ミヤケマイさんは町田久美さんと仲がいいらしく、西村画廊というところで7/1から個展がはじまることを教えてもらった。町田久美の作品を見たくてしょうがないから、これは嬉しい情報。収穫の多い展覧会だった。

なお、この個展はこのあと次の会場を巡回する。
★高島屋京都店:7/9~7/15
★高島屋横浜店:8/13~8/19

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2008.06.25

日本画満開~牡丹・菖蒲・紫陽花・芥子~

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現在、山種で開かれている“日本画満開~牡丹・菖蒲・紫陽花・芥子~”(6/14~
7/27)は日本画のなかでとくに花の絵がお好きな方にとって、ご機嫌な展覧会かもしれない。ここは例年春に“さくら”の絵を一挙に公開するが、今回は牡丹、菖蒲などを50点展示している。

風景画の場合、絵のサイズが絵に対する満足度を左右することがあるが、花の絵では画面の大きさがあまり関係なく小品でも心に響くことが多い。一番奥のところに飾ってある奥村土牛の“てっせん”は小さな絵だが、とても魅せられる。

上は杉山寧の“朝顔図”。杉山寧の作品はエジプトのスフィンクスのように強い色調で神秘的な雰囲気を漂わせるいものが多いが、この朝顔はとてもやさしい絵。日本画では花を描くことは基本だから、自分の描きたい画題を自由演技として描くときは個性が思い切りでるのに、規定演技の花の絵では描き方が似てくる。

“蓮”は真ん中の小林古径と土牛(拙ブログ05/7/6)の2点。古径は果物や花の絵を沢山描いており、3年前、東近美が主催した回顧展でみた名作の数々が目に焼きついている。今回出ている“蓮”は“菖蒲”とともにお気に入りの絵。目を楽しませてくれるのはピンクの大きな花びら。美しい線描とすっきりとした構図。古径は本当に大きな画家である。

梅雨の季節になると思い出すのが山口蓬春の“紫陽花”。最近、葉山の記念館にご無沙汰しているので、ここで大好きな紫陽花の絵を楽しませてもらった。牡丹の絵は全部で12点ある。菱田春草、安田靫彦、古径、川端龍子、土牛、福田平八郎(2点)、速水御舟(3点)、杉山寧。それこそ“オールスター牡丹の競演!”といったところ。

牡丹を描くのは大変難しい。だから、皆挑戦するのだろう。加山又造は“村上華岳の牡丹は絶品!こんなに上手くはとても描けない”と語っている。下は御舟の“牡丹花(墨牡丹)”。御舟の花の絵ではこれに魅せられているから、いつも感心しながら眺めている。

久しぶりの花尽くしに上機嫌。真ん中の展示室に田能村直入の“百花”が展示してある。ここに描かれた花を見ているだけで気分は花園モード。見てのお楽しみ!

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