日本の農民画ベスト5!
‘月次風俗図屏風 五月の田植え’(重文 室町16世紀 東博)
歴史の話は西洋、東洋、日本を問わず貪欲に吸収しようと心がけているが、
これに絵画の鑑賞がおおいに役立っている。それは関心の向かっている時代
や場所の様子をリアルに伝えてくれる風俗画の色合いの濃い風景画。日本の
農村の光景を描いたものは室町時代の頃から登場する。東博の‘やまと絵展’
(12/3まで)に出品された‘月次風俗図屏風’には‘五月の田植え’がでてく
る。左の大勢の女性が小気味よく田植えをする姿をみるといつも映画‘七人の
侍’(黒澤明監督)の最後のシーンを思い出す。
久隅守景(17世紀頃)が何点も描いた四季耕作図は中国の風俗画をベースに
しており、農作業の流れが季節にそって左から右に進行していく。牛による
田起こし,田への水入れなどに男たちが精を出している。こういう場面は
すごく愛着を覚えるからつい画面の隅から隅までみてしまう。
明治以降に活躍した日本画家たちのなかで農民画ですぐ思いつくのは川合
玉堂(1873~1957)。西洋画でいうとブリューゲルの絵がダブって
くる。心に沁みる作品がいくつもあるが、お気に入りは1945年に描かれた
‘早乙女’。田植えに励む早乙女たちを鳥瞰構図で大胆にとらえている。ひと
りが立ち上がり一息いれる仕草がとてもいい。
村上華岳(1888~1939)が23歳のとき制作した‘二月乃頃’に魅了され続けている。これぞ日本の農村という感じ。構図が本当よくできており、誰もが描けそうだがどうしてどうして華岳にしかこの田んぼの広がりは表現できない。近藤浩一郎(1884~1962)の‘雨期’は‘昭和の日本画100選’(1989年 朝日新聞社)に選ばれた傑作。印象派の影響を受け、光と陰を墨で巧みに表現することで田植えの光景を強く印象づけている。
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