2022.01.18

メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(14)

Img_0001_20220118222701
 ゴーギャンの‘アベ・マリア’(1891年 メトロポリタン美)

Img_0004_20220118222701
  ‘光輪のある自画像’(1889年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_20220118222701
   ‘海辺’(1892年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0002_20220118222701
 ‘悪魔の言葉’(1892年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0005_20220118222701
  ‘赤い花と乳房’(1897年 メトロポリタン美)

絵画が好きになると作品についていろんなことを考える。画家が生涯
に描いた作品のなかでどれが最高傑作か、それはどこの美術館にあるのか。
NO.1の絵でなくてもトップ5くらいに評価される絵を所蔵している美術
館というのは足を運ぶ価値のある美術館といえる。これは美術館の規模の大
きさとは関係ない。大きな美術館だとそういう自慢の作品が複数あるという
のが強みであり、絵画ファンを呼び込む最大の武器になる。こういう視点で
メトロポリタンとワシントンのナショナルギャラリーをみたとき、美術館を
輝かせる画家としてすぐ思いつくのがゴーギャン(1848~1903)。

メトロポリタンにある‘アベ・マリア(イア・オラナ・マリア)’はエルミタ
ージュ蔵の‘果実を持つ女’とともにMy好きなゴーギャンの1位をずっと維持
している。だから、この美術館にでかけるときはこの絵との対面が楽しみの
ひとつになっている。ここにはゴッホの糸杉など傑作があるが、ほかの美術
館、たとえばMoMAでもクレラー=ミュラーにも糸杉のいいのがあるから、
この絵によってメトロポリタンへの愛着度が高まるというものでもない。
METにあるゴーギャンはいつも所蔵作品を全部展示してはいないのが実情。
2008年のときは5点でていたが、2013年は‘アベ・マリア’のみで、
2015年は画集に載ってないタヒチの絵などが3点並んでいた。二人のタ
ヒチ女性がどんと描かれた‘赤い花と乳房’も大変魅了されているが、どういう
わけはまだ一度しかお目にかかってない。

2010年の10月、ロンドンのテート・モダンで開かれていた‘ゴーギャン
展’に運よく遭遇したのは生涯の喜び。長年の夢であったスコットランド国立
美にある‘説教のあとの幻影’がみれ、エルミタージュの‘果実を持つ女’とも再
開できたので天にも昇るような気分だった。この大回顧展は翌年ワシントン
のナショナルギャラリーにも巡回した。こういう大きな回顧展が開催できる
のは自分のところにもゴーギャンが多くあるから、ナショナルギャラリーは
全部で10点も出品している。じっさい2008年に訪問したときは8点、
2013年は7点も楽しませてもらった。

‘光輪のある自画像’は画集で必須のピースとなっている有名な絵。黄色と薄赤
の平板な色面と首だけが浮き上がって見えるようなゴーギャンが目に焼きつ
いている。‘海辺’はゴーギャンがよく使う紫に惹き込まれる。画面の下半分で
装飾的な紫で波の動きをイメージさせている。‘悪魔の言葉’にも‘海辺’と同じ
ような紫の模様がみられる。はっとさせられるのは二人の女性のすごい目力。
タイトルの感じがよくでている。

| | コメント (0)

2022.01.17

メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(13)

Img_0001_20220117222001   モネの‘パラソルを持つ婦人’(1875年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0003_20220117222001   ‘サンタドレスのテラス’(1867年 メトロポリタン美)

Img_0004_20220117222101   ‘マヌポルト(エトルタ)’(1883年 メトロポリタン美)

Img_20220117222101   ‘ポプラ’(1891年 メトロポリタン美)

Img_0005_20220117222101   ‘太鼓橋’(1899年 ワシントンナショナルギャラリー)

アメリカの美術館はどこへ行っても印象派やポスト印象派の絵が続々出てく
る。確かに印象派関連の美術本をみてるとアメリカの美術館によく出くわす
ので、資金力のあるコレクターたちがこぞって印象派を蒐集したことは容易
に想像できるが、じっさいまわってみると展示のハイライトは印象派だとい
うことを実感する。絵画愛好家たちの印象派への傾倒ぶりがこれほど強かっ
たとは!

画家たちの中でお目にかかる作品の数がとびぬけて多いのがモネ(1840
~1926)。たとえば、メトロポリタン:17点、ワシントンナショナル
ギャラリー:15点、シカゴ:25点、ボストン:9点、フィラデルフィア
:18点、館内では写真撮影はOKだから、片っ端から撮っていった。美術
本に載っている以外のものが次々出てくるので感動の袋がパンパンに膨らん
でいく。アメリカの美術館でこんなに多くのモネに出会うとは想像もしてなか
った。これには本当に驚いた。

メトロポリタンのベスト3は北斎の絵の構図を意識して描いた‘サンタドレス
のテラス’、激しい波の動きと奇岩をアップでとらえた‘マヌポルト(エトル
タ)’、装飾的な表現と抽象画のイメージが気分をハイにしてくれる‘ポプラ’。
とくに思い入れがあるのがポプラの連作。1990年ロンドンのロイヤル・
アカデミーで行われた‘モネの連作展’に海外出張のとき運よく遭遇した。
日曜日を利用してでかけるとなんと2時間待ちという大人気。大混雑の中、
興奮状態でみたのでMET蔵の‘ポプラ’をみたことはみたのだろうが、しかと
その黄色の輝きを実感したという思いがなかった。それで2008年久しぶ
りのメトロポリタンではこの絵と対面するのを楽しみにしていた。ところが、
飾られてなかった。そのリカバリーを果たしたのは2013年の訪問のとき。
リズミカルに並ぶ垂直のポプラの美しさを目に焼つけた。

ナショナルギャラリー蔵では‘パラソルを持つ婦人’に魅了され続けている。
これは日本にもやって来た。すごいのは白が光源のように輝いていること。
絵の前を離れて遠くにいても、絵の存在感が全然薄れない。これだからモネ
はやめられない。‘太鼓橋’は美術館のガイドブックに掲載されている。そして、
‘ヴェトゥイユの画家の庭’も光に照らされた巨大なひまわりと子どもの姿が心
を強く揺すぶる。

| | コメント (0)

2022.01.16

メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(12)

Img_0004_20220116221701
 ルノワールの‘じょうろを持つ少女’(1876年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_20220116221701
 ‘ルグラン嬢の肖像’(1875年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0002_20220116221701
 ‘シャルパンティエ夫人と子どもたち’(1878年 メトロポリタン美)

Img_0001_20220116221701
  ‘ピアノの前の少女たち’(1892年 メトロポリタン美)

Img_0003_20220116221701
  ‘シャトゥ―の漕ぎ手たち’(1879年 ワシントンナショナルギャラリー)

1990年ワシントンにはじめて行ったときは美術館はナショナルギャラリ
ーしか回らなかった。当時はまだ絵画にどっぷりつかってはおらず、旅行の
ガイドブックに載っている情報しかなかったので、この美術館のコレクショ
ンがどれほどスゴイものかはよくわからなかった。時が流れて、アメリカの
美術館巡りを本格的にスタートさせた2008年からナショナルギャラリー
が誇る名画の数々が心に沁み込んでいくことになる。

ルノワール(1841~1919)の絵で当時手元にあった‘週刊世界の美術
館 ワシントンナショナルギャラリー’に紹介されていたのが‘じょうろを持つ
少女’だった。だから、この絵を必見リストの最上位にメモしていた。じっと
みていたら、ブリジストンにある足を組んだポーズが愛らしい‘ジョㇽジェッ
ト・シャルパンティエ嬢’がかぶってきた。ほかにも‘アルジェの女’や大作の‘デ
ィアナ’や‘踊り子’などともお目にかかったが、インパクトのあるこの女の子
に完全に食われてしまった。次に惹かれたのが‘ルグラン嬢の肖像’、まだ少女
なのに品があり大人の女性の雰囲気があるので思わず足がとまった。この絵
は確か日本にやって来たような記憶があるが、当たっている?

メトロポリタンにあるルノワールは2008年の訪問では9点だった(ナシ
ョナルギャラリーは5点)。画集に必ず載っているのが‘シャルパンティエ夫
人と子どもたち’。日本風の居間のソファに腰かけている夫人はぱっとみると
おばあちゃんにみえる。このイメージが今も変わらない。だから、可愛い二人
の子どもが孫にみえて仕方がない。手前の犬の上に腰かけているのがお姉ちゃ
んで、奥の子は実は弟。ルノワールの時代、好い家では男の子に女の子の恰好
をさせていた。

‘ピアノの前の少女たち’は2015年のとき大変魅了された。この主題には
もう2点の別ヴァージョンがオルセーとオランジュリーにあるが、この絵が
一番良く映るのである。色彩が輝いており部屋の中の光源のような感じだっ
た。この絵はロバート・レイマンのコレクションだが、同じコレクションの
‘座っている浴女’にもぞっこん参っている。

‘シャトゥ―の漕ぎ手たち’は風景画の主要作品のひとつで、日曜日にする舟遊
びの楽しみが動きのある構図や人々の表情からよく伝わってくる。ナショナル
ギャラりーにはもう一点パリで一番賑やかな橋を描いた‘ポン=ヌフ橋’がある。
これもなかなかいい。

| | コメント (0)

2022.01.15

メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(11)

Img_0001_20220115220901
 ゴヤの‘サバーサ・ガルシア’(1806~11年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0002_20220115220901
 ‘ポンテーホス女侯爵’(1786年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0003_20220115221001
 ‘マヌエル・オソーリオ・デ・スーニガ’(1788年 メトロポリタン美)

Img_0004_20220115221001
 ‘マリア・テレサ・デ・ボルボン’(1783年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_20220115221001
 ‘セバスティアン・マルティネス’(1792年 メトロポリタン美)

マドリードのプラド美で‘着衣のマハ’、‘裸のマハ’をみてゴヤ(1746~
1828)に済みマークをつけるのは早合点すぎるかもしれない。というの
もアメリカのメトロポリタンとワシントンナショナルギャラリーにびっくり
する傑作があるからである。エル・グレコ同様、アメリカのコレクターの
名画蒐集に注ぐ熱情にはほとほと感心させられる。

どこの美術館へ行っても女性の絵をみるのは大きな楽しみだが、ワシントン
のナショナルギャラリーにはとくに思い入れの強いゴヤの絵がある。
2008年にはじめてお目にかかった‘サバーサ・ガルシア’の前に立ったとき、
瞬間的に頭をよぎったのが女優の薬師丸ひろ子。若い頃の薬師丸はこんな顔
をしていた。だから、サバーサはスペイン人なのにすごく親しみを覚える。
ゴヤはこの清楚な女性の美しさに惹かれ、肖像画を描かせてほしいとみずか
ら申し出たという。

‘ポンテーホス女侯爵’は当時フランスで流行した衣装に身を包んだ女侯爵が緑
豊かな自然を背にして描かれている。右手にもっているカーネーションや手前
にいるパグ犬は純潔や貞節を意味するが、こうした演出もしっかり行うのが
ゴヤ流。

メトロポリタンにある子ども画‘マヌエル・オソーリオ・デ・スーニガ’に魅了
され続けている。この可愛い坊やはMy子ども画のランキング1位をずっと
維持している。真紅のコンビネゾン(上下がひとつなぎの服)が肌の白さを浮
き上がらせているため、ひもにつながれたカササギやその後ろにいる不気味な
3匹の猫に注意がいかない。一方、ナショナルギャラリー蔵の‘マリア・テレサ
・デ・ボルボン’は幼い女の子なのに腰に手をあてまっすぐ前を見据える姿に
は王族の気品が表れている。

ベラスケスの従者兼助手の肖像画と同じく思わず足がとまるのが‘セバスティア
ン・マルティネス’。この人物はワイン商で財をなした実業家で本、版画、絵画
の蒐集家としても知られていた。ベラスケスの描き方とどこか似ており、本人
と今会っているような気がする。エル・グレコ、ベラスケス、ゴヤと男性肖像
の卓越した表現が引き継がれている。

| | コメント (0)

2022.01.14

メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(10)

Img_0004_20220114221401
 プッサンの‘朝日を捜す盲目のオリオン’(1658年 メトロポリタン美)

Img_0003_20220114221401
 プッサンの‘サビニの女たちの略奪’(17世紀 メトロポリタン美)

Img_0002_20220114221401
 プッサンの‘キリストの洗礼’(1641~42年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_20220114221401
 ベラスケスの‘ファン・デ・パレーハの肖像’(1650年 メトロポリタン美)

Img_0001_20220114221401
 ベラスケスの‘縫い物をする女性’(1640年 ワシントンナショナルギャラリー)

海外の美術館をまわっていると時々まったく情報がなかった展覧会に遭遇す
ることがある。たとえば、2008年3月メトロポリタンを訪問したとき
開催されていたプッサン(1594~1665)の回顧展もそのひとつ。
この年はプッサンの当たり年。1月ルーヴル、ロンドンのナショナルギャラ
リーで有名な‘アルカディアの羊飼いたち’など合わせて24点鑑賞し、アメ
リカではこのプッサン展で39点、そしてシカゴ美、ワシントンナショナル
ギャラリーでもお目にかかったから、総数でいうとなんと73点ものプッサ
ンの絵をみたことになる。これでプッサンに開眼した。

メトロポリタンには5点のプッサンがあるが、回顧展にでていたのは‘朝日を
捜す盲目のオリオン’。右に描かれている巨人がオリオン。美男の狩人だった
が、キオス島で王の娘に恋したが島の野獣を殺せと難題をつきつけられる。
これをクリアしても王はうんと言わず、オリオンに酒を飲まして酔わせ眠っ
ている間に眼をつぶしてしまった。オリオンは日の出の時に太陽の陽を浴び
れば目が見えるようになるとの神託を得た。この場面は肩に案内役のケダリ
オン少年を乗せて東に向かって歩き出すところ。この巨人もガリバーのよう
に馬鹿デカいし、頭の上にいる月の女神ディアナが雲に肘をついているのが
おもしろい。

常設展示に飾られていた‘サビニの女たちの略奪’は多く描かれた歴史画や宗教
画のなかでは人気の作品。この主題はもう一枚別ヴァージョンがあり、ルー
ヴルに展示されている。ここでは古代史の有名なエピソードが再現されており、
ローマの支配者ロムルス(左上)はサビニ族の未婚の女性たちを略奪するため
に上着を持ち上げて行動を促している。女たちの悲鳴が聞こえてくるようで、
老人や赤ちゃんの悲しそうな顔が目に焼きついている。ワシントンのナショナ
ルギャラリーにあるプッサンは4点、ガイドブックに載っているのが人物が横
にずらっと並ぶ‘キリストの洗礼’。

プッサンの5年後に生まれたのがスペインの大画家ベラスケス(1599~
1660)。ベラスケスが描いた肖像画でマドリードのプラド以外の美術館で
みて感動した絵が2点ある。ローマのドーリア・パンフィーリ美蔵の‘教皇イン
ノケンティウス10世’とMETにある‘ファン・デ・パレーハの肖像’。2点
とも2回目のイタリア滞在中に描かれた。スペインにいるときは宮廷画家とし
てフェリペ4世をいい男に描くため脚色をしなくてはいけないが、イタリアで
なら自由に人物をとらえられる。下僕兼助手のパレーハをみたときは目の前に
本人がいるような感じだった。これをみるとベラスケスの凄さがわかる。
この生な感覚は天才にしか描けない。ナショナルギャラリーの‘縫い物をする女
性’はパレーハ同様自然な姿で描かれているのがとてもいい。

| | コメント (0)

2022.01.13

メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(9)

Img_0001_20220113221901  レンブラントの‘ホメロスの胸像をみるアリストテレス’(1653年 メトロポリタン美)

Img_0003_20220113221901  

‘フローラ’(1654年 メトロポリタン美)

Img_0004_20220113221901  ‘旗手(フローリス・ソープ)’(1654年 メトロポリタン美)

Img_20220113234701  

‘ルクレツィア’(1664年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0002_20220113221901    ‘自画像’(1659年 ワシントンナショナルギャラリー)

レンブラント(1606~1669)の画集をみると主要な作品は世界中の
ブランド美術館に分散されて所蔵されていることがわかる。もっとも有名な
‘夜警’があるアムステルダム国立美だけに傑作が集中しているのではないの
である。ほかの美術館でレンブラントを数、質の点で堪能させてもらったの
はエルミタージュ、ロンドンのナショナルギャラリー、マウリッツハイス、
ルーヴル、ドレスデン国立絵画館、メトロポリタン。

メトロポリタンでみたレンブラントは全部で15点。そのなかで大変魅了さ
れているのが‘ホメロスの胸像をみつめるアリストテレス’。これは美術館ガ
イドに‘フローラ’とともに掲載されている。ひと目見てすごい絵だなと思う。
視線がむかうのが光をうけて黄金に輝くアリストテレスの両袖。カラヴァッ
ジョにしろレンブラントにしろ卓越した光の描写でみる者の心をとらえるの
が天才の証。

‘フローラ’は国立新美の‘メトロポリタン美展’に出品される。確か何年か前に
も披露されたような記憶があるが、どの展覧会だったか思い出せない。同じ
タイトルの絵をエルミタージュでみたが、こちらはこの絵の20年くらい前
に描かれたもので妻のサスキアをモデルにして古代ローマの花と春の女神に
見立てている。そして、2度目のフローラの役をつとめたのはサスキアが
死んだあとレンブラントが愛したヘンドリッキェ。どこか控えめで性格のよ
さそうな女性である。

‘旗手(フローリス・ソープ)’は2011年西洋美で開催されたレンブラント
展にやって来た。男性の肖像画にくらべると鑑賞のエネルギーの大半は女性
像に使われているが、レンブラントは例外でこういう立派な肖像画は息を呑
んでみてしまう。

ワシントンのナショナルギャラリーでもレンブラントは多く飾られており、
16点飾られていた。強い磁力によって惹き込まれたのは‘ルクレツィア’。
暴君ローマ王の息子セクストゥスに犯された貞女ルクレツィアが自害する直
前の決意の瞬間がとらえられている。まるで悲劇映画の一シーンをみている
よう。お馴染みの自画像はレンブラントが50歳のときのもの。自画像はど
れも近づきやすさがあり、街の一角で出会ったような感じ。‘やぁー、レンブ
ラントさん、お元気ですか’とつい声をかけたくなる。

| | コメント (0)

2022.01.12

メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(8)

Img_0002_20220112224001
 ルーベンスの‘ライオンの穴の中のダニエル’(1613年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0003_20220112224001
 ルーベンスの‘パエトンの墜落’(1605年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0004_20220112224001
 ルーベンスの‘ヴィーナスとアドニス’(17世紀 メトロポリタン美)

Img_20220112224001
 ヴァン・ダイクの‘王妃と小人’(1633年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0005_20220112224101
 ヴァン・ダイクの‘ジェイムズ・ステユワート公’(17世紀 メトロポリタン美)

ヨーロッパで美術館巡りをしていると大きな美術館でも邸宅美術館でも
ルーベンス(1577~1640)に遭遇することが多い。とくに圧倒され
るのがダイナミックな構図で激しい動きが表現された大画面のバロック絵画。
アメリカでもルーベンスはみられるが数は少なく、大きな絵は出くわすこと
ことはほとんどない。そのため、印象深かった作品は目に強く焼きつけられ
ている。

お気に入りの絵がワシントンのナショナルギャラリーにある。縦2.24m、
横3.3mの大きな画面に描かれた‘ライオンの穴の中にいるダニエル’。
2008年、ここで7点のルーベンスをみたがこの絵には度肝を抜かれた。
ダニエルのまわりにライオンがなんと10頭もいる。こんなに多くのライオ
ンがいる絵をみるのははじめて。ギリシャ神話を題材にした‘パエトンの墜落’
はそれほど大きくない絵だが、ヨーロッパの美術館でみるような大作だった
ら斜めに走る光線や大混乱を想像させる馬や人々の動的描写に相当な緊張感
を感じるかもしれない。これは日本で開催されたワシントンナショナルギャ
ラリー展に出品された記憶があるが?

メトロポリタンにあるルーベンスは手元の鑑賞記録によると10点。一番惹
かれているのは‘ヴィーナスとアドニス’。ティツィアーニの同名の絵が‘メト
ロポリタン美展’(国立新美)にやってくるが、好みとしてはルーベンスの方。
アドニスはヴィーナスだけでなくキューピッドにも強く引き留められている。
‘おじちゃん、行っちゃあダメ!’と言っているキューピッド坊やが可愛いこと。

ルーベンスがあるなら1632年イギリス王チャールズ1世の宮廷画家になっ
たヴァン・ダイク(1599~1641)も揃えたくなるのがコレクター心理。
こちらはナショナルギャラリーが13点とMETの9点を上回っている。思
わず足がとまったのが‘王妃ヘンリエッタ・マリアと小人’。ヴァン・ダイクは
女性を脚色して描くので実際の王妃はこんな美形とは違うかもしれないが、
じっとみつめてしまう。METにある‘ジェイムズ・ステュワート公’は見事な
肖像画、背の高いグレイハウンド犬が献身的に主人に身を寄せているのが印象
的だった。

| | コメント (0)

2022.01.11

メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(7)

Img_0001_20220111223601
 エル・グレコの‘トレド風景’(1597年 メトロポリタン美)

Img_0003_20220111223601
  ‘枢機卿の肖像’(1600~01年 メトロポリタン美)

Img_0004_20220111223601
  ‘羊飼いの礼拝’(1605~10年 メトロポリタン美)

Img_20220111223701
  ‘ラオコーン’(1610~14年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0002_20220111223701
  ‘聖マルティヌスと乞食’(1597~99年 ワシントンナショナルギャラリー)

海外旅行が趣味という人のなかには全世界オールラウンドに出かける人も
いれば、特定の地域、たとえばヨーロッパだけとか、アメリカしか興味が
ないとか、アフリカ大好きといった人もいる。ある芸能人はミュージカル
に嵌り毎年NYのブロードウェイに行くらしい。これまでアメリカよりヨ
ーロッパのほうに多く足を運んだので、新型コロナの感染騒動がおさまり
海外旅行が再開できたときはアメリカへシフトしようと思っている。

その場合、東部と西部は1:2ぐらいの割合になりそう。期待の都市は
まだ足を踏み入れてないロサンゼルスやサンフランシスコ。こうして西部
の街を体で感じながら、多少は目が慣れているNYを中心とした東部の街で
も美術館巡りをする。やはり、NYやワシントンで美術鑑賞をするのは大き
な楽しみだから、東部オプションはなくしたくない。昨日はヤン・ファン
・エイクの傑作をメトロポリタンとワシントンナショナルギャラリーでみ
た。今日のスポットはエル・グレコ(1541~1614)。この画家も
マドリードのプラドやトレドの大聖堂へ行かなくても存分に楽しめるすご
い絵が揃っている。

数はMETの方が多く9点くらいある。美術館のカタログに載っているのは
もっとも人気の高い‘トレド風景’、堂々とした‘枢機卿の肖像’、‘盲人を癒す
キリスト’の3点。ほかには画集に必ず載っている‘黙示録第五の封印’、
いくつかあるヴァージョンでは一番いいと言われている‘十字架を担うキリ
スト’、‘自画像’、‘聖ヒエロニムス’。そして、国立新美の‘メトロポリタン美
展’に出品される‘羊飼いの礼拝’と‘祝福するキリスト’。‘羊飼いの礼拝’は最晩
年のヴァージョンで激しい筆致で描かれている。

一方、ナショナルギャラリーにあるエル・グレコは5点くらい。とくに
有名なのは‘ラオコーン’。ローマにある彫刻とはまたちがった迫力満点の作
品で中央の巨大な蛇の首をつかむラオコーンに視線が集中する。死への恐
怖におののきながらと生き延びることへ執着する姿に釘づけになる。白馬
に跨るフランスの守護聖人を描いた‘聖マルティヌスと乞食’も忘れられない。
ローマの兵士だった聖マルティヌスは寒さに震える乞食に出会い自分のマン
トの半分を裂き与えた。すると、そのマントをまとったキリストが夢のなか
に現れたという。エル・グレコはこの場面をフランスのトゥールではなく
見晴らしのいいトレドを背景にして描いた。

| | コメント (0)

2022.01.10

メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(6)

Img_0001_20220110222801
 ファン・エイクの‘受胎告知’(1434~36年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_20220110222801
ファン・エイクの‘磔刑 最後の審判’(1425~30年 メトロポリタン美)

Img_0005_20220110222801
クリストゥスの‘カルトウジオ会修道士の肖像’(1446年 メトロポリタン美)

Img_0003_20220110222801
  ボスの‘守銭奴の死’(1485~90年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0004_20220110222801
 ブリューゲルの‘穀物の収穫’(1565年 メトロポリタン美)

15世紀フランドル絵画のもっとも偉大な画家であるヤン・ファン・エイク
(1390~1441)にいっぺん嵌るともうそこから抜け出せない。幸い
なことにベルギーを旅行する機会に恵まれたので画集に載っている主要な
作品はおおよそみることがでできた。体が震えるほどのインパクトをもって
いる色彩の輝きと超絶技巧を駆使した細密描写が目に焼きついている。

団体ツアーだとベルギーはオランダとセットになっているが、イタリアや
スペイン、パリ、ロンドンなどと比べると人気の点では及ばないからこうし
た北方ルネサンス美術を楽しむ順番が遅くなるかもしれない。こういうとき
お薦めなのがメトロポリタンとワシントンのナショナルギャラリー。旅行
会社が企画する‘アメリカ東部の旅’に参加すれば、極上のファン・エイクに
お目にかかれること請け合いである。すばらしいのが2点ある。‘受胎告知’
と‘キリストの磔刑、最後の審判’。緻密な描写をみたらダ・ヴィンチやラファ
エロが吹っ飛ぶかもしれない。

メトロポリタンで遭遇したファン・エイクの一世代後のクリストゥス(?~
1476)の‘カルトゥジオ会修道士の肖像’も忘れられない。視線が釘づけに
なるのは額縁にとまっている蠅。ええー!?こんなところに蠅をいるの?
だまし絵はこの蠅だけではない。額縁も本物ではなく描かれたもの。一見の
価値はある。

ボス(1450~1516)とブリューゲル(1525~159)はカラヴァ
ッジョと同じくコンプリートを狙っている画家でこれまで画集に載っている
作品を追っかけてきた。ワシントンにあるボスの‘守銭奴の死’は怪奇な世界が
描かれている。左の戸口には矢をもった髑髏の姿の悪魔がおり、ベッドのわき
では別の悪魔が金のつまった袋を守銭奴に差し出している。METが所蔵する
ブリューゲルの穀物の‘収穫’は現存する5枚の‘季節画’の1点。黄金色が目に沁
みる麦刈りの風景だから晩夏の8月を表している。ウィーン美術史美に行かな
くてもこんな名画はみられるのだからメトロポリタンは本当に楽しい。

| | コメント (0)

2022.01.09

メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(5)

Img_0003_20220109220801
  ベリーニの‘聖母子’(1480年代 メトロポリタン美)

Img_0002_20220109220801
  ベリーニの‘神々の祝宴’(1514~29年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0001_20220109220801
 ティツィアーノの‘鏡の前のヴィーナス’(1555年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_20220109220801
 ティツィアーノの‘ヴィーナスとアドニス’(1550年代 メトロポリタン美)

Img_0005_20220109220901
 ヴェロネーゼの‘愛で結ばれたマルスとヴィーナス’(1570年代 メトロポリタン美)

ヴェネツィアで美術館巡りをするとき真っ先に出かけるのはアカデミア美、
ここでは14世紀から18世紀までのヴェネツィア派の名画が目を楽しませ
てくれる。主役をつとめるのはジョヴァン二・ベリーニ(1434~
1516)、ジョルジョーネ(1476~1510)、ティツィアーノ
(1488~1576)、ティントレット(1519~1594)、ヴェロ
ネーゼ(1528~1588)の面々。煌くような色彩や光の効果、動きの
ある構図のとり方により描かれたヴェネツィア派の様式は新しい流れをもた
らした。

プラドやロンドンのナショナルギャラリーでもヴェネツィア派は楽しめるが、
アメリカとなるとワシントン・ナショナルギャラリーとメトロポリタンにと
ても惹かれる絵がある。ヴェネツィア派の生みの親みたいな存在であるベリ
ーニはMETの‘聖母子’に思わず足がとまる。顔立ちのスッキリした聖母は
すごく生感覚があり親しみを覚える。ワシントンにある‘神々の祝宴’は画集に
必ず載っている主要作品のひとつ。ワインの神、バッカスにちなんだ古代
バッコス祭りの主題を描いている。

国立新美の‘メトロポリタン美展’に登場するヴェネツィア派は手元の情報で
はティツィアーノの‘ヴィーナスとアドニス’。猪に殺されることも知らずに
運命の狩りに出かけようとしているアドニスにヴィーナスが抱きついてい
るところが描かれている。この主題はいくつかのヴァージョンがあり、
プラドとウフィツィでもお目にかかった。背景の虹が印象深い。ナショナル
ギャラリー蔵の‘鏡の前のヴィーナス’にぞっこん参っている。横顔のヴィー
ナスをみていると古い映画にでてくる美人女優を連想する。

メトロポリタンにあるヴェロネーゼの‘愛で結ばれたマルスとヴィーナス’は
大変な傑作でプラハの皇帝ルドルフ2世が所有していた5点のうちのひとつ。
この絵はルーヴルの超大画面の‘カナの婚宴’、ロンドンのナショナルギャラ
リーにある天井装飾画‘愛の寓意’とともにアカデミア美以外の美術館で感動
した絵だから、特別な思い入れがある。

| | コメント (0)

«メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(4)