2019.04.18

美術館に乾杯! ウフィツィ美 その五

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     ヴェロッキオの‘キリストの洗礼’(1472~75年)

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     ダ・ヴィンチの‘受胎告知’(1472~75年)

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     ラファエロの‘ひわの聖母’(1506~07年)

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     ミケランジェロの‘聖家族’(1503~04年)

ウフィツィで感激することが多いのはここがルネサンス絵画の殿堂だから。
ダ・ヴィンチ(1452~1519)はヴェロッキオ(1435~
1488)の工房の一人として部分的に描いた‘キリストの洗礼’と20歳頃
の作品‘受胎告知’が目を楽しませてくれる。

ヴェロッキオはドナテッロ亡き後のフィレンツェ彫刻界の大親方。大きな
工房を構え彫刻や壁画の注文を多く引き受けていた。‘キリストの洗礼’の見
どころは洗礼をうけるキリストとヨハネの川につかる足。そのまわりに流
れる水の渦ができ水中の足がリアルに透けてみえる。洗礼の儀式がこうい
う風に足の指先まで細かく描かれているのは珍しい。

そして、注目の的はダ・ヴィンチが描いた左端の天使。後の作品でダ・
ヴィンチの魅力のひとつとなる精緻に表現された頭の金髪のくるくる巻き。
こちら向きの天使の髪と較べると軍配は即ダ・ヴィンチに上がる。ヴェ
ロッキオはこの描き方をみて‘もう絵を描くのは止めるよ!’と言ったとか。
天才ダ・ヴィンチに追い越されたのだから本望かもしれない。

日本に12年前やって来た‘受胎告知’で異様な感じがするほどリアリテイが
あるのが大天使ガブリエルの羽、なんと自然史博物館に展示してある鳥の
標本の羽とそっくり。数多くある‘受胎告知’でこれほど羽の質感にこだわっ
た画家はほかにいない。はじめてみたときはこの羽で頭がいっぱいになり、
空気遠近法で描かれた遠くの風景には気が回らなかった。

ラファエロ(1483~1520)がある部屋は通りを挟んで反対側の
建物。数は自画像など7点くらい。もっとも有名なのは‘ひわの聖母’、昔一
度みたが、そのあとでかけたときは飾ってなかった。10年もの歳月をか
けた修復は2009年にようやく終わった。美しい色彩が蘇ったらしいの
でまたみる機会があれば癒しの聖母と対面したい。

ラファエロの隣の部屋にはミケランジェロ(1475~1564)の有名
な円形画‘聖家族’が展示されている。彫刻家の絵だから人体表現は動きが
あり立体的。3体の彫像をみているようでとくに上半身をひねって幼子
イエスを慈愛にあふれたまなざしでみつめる聖母に魅了される。システィ
―ナ礼拝堂の天井画にでてくる巫女の姿がふと思い出された。

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2019.04.16

美術館に乾杯! ウフィツィ美 その四

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     ボッティチェリの‘ヴィーナスの誕生’(1485年)

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     ‘春’(1482年)

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     ‘柘榴の聖母’(1487年)

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     ‘マニフィカトの聖母’(1482年)

ウフィツィで最も感激する絵というとボッティチェリ(1445~
1510)の‘ヴィーナスの誕生’と‘春’。はじめてフィレンツェを訪問し
この絵の前に立ったときは天にも昇る気持だった。美術の教科書に載って
いるあの‘ヴィーナス’を今見ているのだからワクワクする。この美術館の
主役はダ・ヴィンチでもラファエロでもなくこの2点をはじめ10数点が
ドーンと飾られているボッティチェリ!

この大きな2つの傑作に日本人が親近感を覚えるのはどちらにも花がたく
さんでてくるからかもしれない。‘ヴィーナスの誕生’では帆立貝に乗った
裸体のヴィーナスを風を吹いて上陸させようとしているゼフュロスが薔薇
の花を波の上にまき散らしている。そのピンク色とふぐ刺しを連想させる
白いさざ波が見事に溶け合っていい気持にさせてくれる。そして、これを
バックにして移動してきたアンニュイな顔立ちのヴィーナスがホーラに
マントをかけてもらおうとしている。風にたなびく長い金髪が美しい!

一方、‘春’は画面全体が花園によう。花の名前については隣の方にアシス
トしてもらわないとひとつ々特定できないが、とにかくスミレやヒナギク、
薔薇など花尽くし。研究者によると花の種類は190以上あり500本も
の植物が忠実に再現されているという。そこに役者たちが勢揃い。中央に
首をちょっと右に傾けたヴィーナス、その右に立っているのは花の女神
フローラ、花をばらまこうとする姿は成田山で豆まきをする白鵬とかぶる。

円形の画面に描かれた‘柘榴の聖母’と‘マニフィカトの聖母’にもぞっこん参
っている。ここで視線が向かうのが美少年の天使たち。‘柘榴’は6人、
‘マニフィカト’は5人。話が横にそれるが黒澤明監督の映画にはどの作品に
も必ず可愛い幼子とか美少年が登場する。それと同じことをボッティチェ
リも考えたのだろうか。

聖母をくらべると、‘マニフィカトの聖母’はびっくりするほど時代を突き
抜けており、まるで化粧品会社のCMにでてくる超美形のトップモデルを
みているよう。その聖母の頭の上に2人の天使が精緻な細い金の線で描か
れた宝冠をかかげている。頭がクラクラしてくる。

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2019.04.15

美術館に乾杯! ウフィツィ美 その三

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     リッピの‘聖母子と二天使’(1457年)

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     カスターニョの‘女預言者クマ―ナ’(15世紀)

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   フランチェスカの‘ウルビーノ公・公妃の肖像’(1474年)

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   ポライウォーロの‘ヒュドラと戦うヘラクレス’(1460年)

ボッティチェリ(1445~1510)が若い頃描いた女性の絵は師匠の
描き方とよく似ている。その師匠リッピ(1406~1469)の最も
有名な作品がウフィツィにある‘聖母子と二天使’。手を合わせる聖母マリア
がとても魅力的なのはその清々しくシンプルな顔立ちが今イタリアの街を
歩いたらすぐに見つかりそうな現実感があるから。どうでもいいことだが、
散歩の途中によく出会うバレエのレッスン帰りの少女はこんなイメージ。

ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画を見上げると天地創造の物語
のほかに預言者や巫女のポーズにも目が釘づけになる。カスターニョ
(1421~1457)の有名人の肖像のなかにも女預言者が登場する。
その姿は預言者にはもったいないほど綺麗。お告げをもらったら即‘ハイ―、
わかりました!’と深々と頭を下げるのは間違いない。

ピエロ・デッラ・フランチェスカ(1416~1492)に関心をもち続
けているが、画家とのつきあいはこの横向きの肖像画‘ウルビーノ公
フェデリーゴ・ダ・モンテフェルトロ’と‘公妃バッティスタ・スフォルツァ’
からはじまった。目に焼きつくのはやはりモンテフェルトロの特徴のある
鼻。東洋人の大きくない鼻を見慣れているとこういう鼻が主張している
人物には唖然とする。

バルジェッロ美でも遭遇したポライウォーロ(1431~1498)は
彫刻だけでなく絵画でも同じように激しく戦うギリシャ神話の英雄ヘラク
レスを描いている。‘ヒュドラと戦うヘラクレス’と‘アンタイオスと戦うヘラ
クレス’はとても小品。これはメディチ宮のために描かれた大作の小さな
コピー。絵のサイズは小さいがヘラクレスの強靭な体と敵を倒すアクロ
バット的な姿勢を息を呑んでみてしまう。

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2019.04.14

期待の‘備前展’!

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     ‘三角花入’(桃山時代16~17世紀)

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     金重陶陽の‘緋襷茶盌’(1957年)

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     隠崎隆一の‘混淆花器’(2016年)

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     伊勢崎晃一朗の‘畝壺’(2017年)

東近美工芸館で開催されている‘備前―土と炎から生まれる造形美’(2/22
~5/6)をみてきた。以前広島にいたときクルマで備前焼の窯がある備前市
伊部へ出かけた。以来、釉薬を使わない備前焼の魅力にとりつかれている。
広島のデパートで金重陶陽以降の作家の作品をずらっと揃えた備前焼展をみ
たが、東京ではトータルで備前焼を楽しめる展覧会にでくわす機会がなかっ
た。ようやく実現したのは東近美、となると期待値はどうしても高くなる。

なかに入って展示室を進んでいくこれ以上望めないほど充実した作品
が並んでいた。流石、東近美!古備前の茶道具にいいのがたくさんあったが、
思わず足がとまったのが‘三角花入’、三角の形がユニークなので桃山陶器とか
織部展では定番のように出品される。備前焼の中興の祖である金重陶陽
(1896~1967)の緋襷(ひだすき)をぐっと感じさせる‘緋襷茶盌’
も名品。

今回人間国宝になっている作家をはじめ備前焼といえばこの人という面々は
全部登場している。まさに備前のオールスターが勢揃い。そのなかで伊部の
外からやってきた隠崎隆一(1950~)は現代アート風の備前を生み出し
た先駆者のひとり。金重陶陽の息子、金重晃介(1943~)の‘聖衣’
(1994年)が備前の貴公子がつくった備前アヴァン・ギャルドなら、
鬼才隠崎隆一の‘混淆花器’は自然と大地から生まれてきた原始の美という感
じ。魂を強く揺すぶられる。

これまで縁がなかった作家で大変魅了されたのは今年45歳の伊勢崎晃一朗
(1974~)。父親の伊勢崎淳(1936~)も大胆な造形で新しい備前
の形をつくってきたが、そのチャレンジ精神は晃一朗にもしっかり受け継が
れており圧倒的な存在感のある‘畝壺’に驚愕した。そして、矢部俊一
(1968~)のステルス戦闘機を連想させる切れ味鋭いフォルムが目を惹
く‘光風’にもぐさっとやられた。

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2019.04.13

久しぶりの‘千住博展’!

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  ‘高野山金剛峰寺奉納襖絵 断崖図’(部分 2018年)

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  ‘高野山金剛峰寺奉納襖絵 瀧図’(部分 2018年)

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  ‘龍神Ⅰ(上)、龍神Ⅱ(下)’(2014年 軽井沢千住博美)

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  ‘四季瀧図(冬)’(1999年 軽井沢千住博美)

横浜そごうで開かれている‘千住博展’をみてきた。会期は明日14日まで、
すべりこみセーフだった。過去に2回くらい千住博の回顧展をみたが、関心
の的はいつも‘瀧図’、今回の目玉は昨年完成し高野山金剛峰寺に奉納され
る襖絵。‘茶の間’に‘断崖図’、‘囲炉裏の間’に‘瀧図’が夫々飾られることになっ
ている。

‘断崖図’は崖の部分だけをみるとひびや割れ目がとてもリアルに描かれて
いるので一瞬写真かなと思ってしまう。この断崖に覆いかぶさるように木々
が白く漂う霞のなかを下のほうに角度をつけてのびていく。深い山中でしか
出くわさない幽玄的な世界がここにある。

一方、お得意の‘瀧図’はいつものように小さなしぶきをとばし湯気が湧き立
つような繊細きわまる幾筋もの水がどこまでも横に広がる滝となって神秘的
に流れ落ちている。何作も仕上げている瀧図だが、どれも滝の形にはヴァリ
エーションの変化があり、この奉納‘瀧図’もすばらしい出来映え、息を呑ん
でみていた。千住の瀧図はある種のアクション・ペインテイング、もとに
ある好みの滝のイメージが高野山金剛峰寺の霊気を吹きこまれ見事に変奏
した。これまでとはちがったフォルムがある新鮮な瀧図に驚くばかり。

軽井沢にある千住博美はまだ縁がない。だから、‘龍神’と‘四季瀧図’とは
幸運なめぐり逢いだった。会場では青く輝く‘龍神’にテンションが一気に上
がった。2015年のヴェネツィアビエンナーㇾに出品され話題になったこ
とがよくわかる。そして、‘四季瀧図’では季節ごとに変わる滝の表情を深く
味わった。

 

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2019.04.12

三菱一号館美の‘ラファエロ前派の軌跡展’!

Img_0001_22 ロセッティの‘魔性のヴィーナス’(1863~68年 ラッセル=コーツ美)

 

Img_25 ロセッティの‘廃墟の礼拝堂のガラハッド卿’(1859年 バーミンガム美)

 

Img_0003_20    バーン=ジョーンズの‘赦しの樹’(1882年 リヴァプール国立美)

 

Img_0002_23     ヒューズの‘クリスマス・キャロル’(1879年 バーミンガム美)

 

7年前、すばらしいバーン=ジョーンズ展を開催した三菱一号館美では
現在‘ラファエロ前派の軌跡展’(3/14~6/9)が行われている。入館し
てラスキンの絵が続くがこれには興味がないのでお目当ての作品をめざし
てどんどん進む。美術館のなかで最も広い部屋に着くとラファエロ前派の
大スター、ロセッティ(1828~1882)が何点も並んでいた。これ
は心が踊る。ここは‘ラファエロ前派ならお任せ下さい!’の美術館だから、
作品の見せ方が本当に上手い!

お目当てはチラシに大きく載っている‘魔性のヴィーナス’、じつはこの絵
はどこだったか記憶が戻ってこないのだが一度みている。でもそんなこと
はどうでもよくはじめて対面する気持ちでじっくりみた。ロセッティの描
く女性は歌麿のようにみな同じような顔立ち。このヴィーナスも目鼻立ち
の整った美形で顔全体の圧がとても強い。

そのため、みるのを途中でたじろいでしまうのだが、それでも画面に惹き
つけられるのはヴィーナスがまわりをバラやスイカズラで取り囲みまれ
その魔性が花の装飾性によって引き立てられているから。ヴィーナスは愛
や美人を意味する持ち物にも抜かりない。右手には黄金の矢、左手には
リンゴをもっている。ロセッティに乾杯!

初見の収穫はバーミンガム美から出品された‘廃墟の礼拝堂のガラハッド
卿’、これは初期の作品で以前手に入れたテート美が出版したロセッティ本
にしっかり載っている。こういうのを展示してくれると嬉しく反応する。

もう一点チラシで気になっていたのがラファエロ前派第二世代のバーン=
ジョーズ(1833~1898)が描いた‘赦しの樹’、このモチーフには
数点のヴァージョンがあるが、これははじめてお目にかかった。印象深い
のは互いに顔をみつめる裸の男女の異常とも思える体の密着度。そして、
じっとみているとミケランジェロ彫刻の筋肉人体が目の前をかすめる。
女性だって胸の下は脂肪を搾り取った筋肉がよくついている。

ハント、ブラウン、ミレイにはグッとくるのがなかったが、そのかわり
ヒューズ(1832~1915)が目を楽しませてくれた。思わず足がと
まったのが‘音楽会’とどうしてこんなに可愛くて綺麗なのとびっくりする
‘ブラッケン・ディーンのクリスマス・キャロルージェイムズ・リサート
家’。子どもたちの幸せが一番!

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2019.04.11

モローの‘出現’と再会!

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     モローの‘出現’(1876年)

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     ‘一角獣’(1885年)

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     ‘エウロペの誘拐’(1868年)

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     ‘セイレーン’(19世紀)

4月1日からパナソニック汐留ミュージアムが‘パナソニック汐留美術館’
に変わった。これを知ったのは昨日、休館日が水曜だったか木曜だった
確認するためHPをみたら汐留美になっていた。新しい名前になって最初
の企画展は先週の4日からはじまった‘モロー展’(~6/23)。

パリのモロー美の作品を公開するのは14年ぶりとのことだが、今回は
なんとあの‘出現’がやってきた。これは見逃せない。だから、一ヶ月前
罹った帯状疱疹が治っておらず腹のあたりがチクチクするのに出かけて
きた。

モロー(1826~1898)の最も有名な‘出現’をみるのは28年ぶり。
パリではみたが、数回行われ皆勤した日本でのモロー展ではお目にかか
ってない。すると初来日?でもそうだったら‘日本初公開’とチラシに書く
はずだから、ずいぶん前にやって来たのかもしれない。

宙に浮かぶヨハネの首、この発想がスゴイ。殺されたヨハネが突然現れ、
‘サロメよ、私の首がそんなに欲しかったのか’とサロメを睨みつける。
だが、ヨハネに恋したサロメはたじろぐどころか、‘そうよヨハネ、私は
ね欲しいものは絶対手に入れる女なのよ!’と驚いたそぶりはみじんもみ
せない。まさに筋金入りのファムファタル(宿命の女)。

このエキゾチックで幻想的な絵をみたら、ロマン派の作家や音楽家は前
のめりになってとびつく。絵画の力を強く感じたエポック的な鑑賞体験
だった。再会できミューズに感謝!

ほかで目を惹いたのは再登場の‘一角獣’と‘エウロペの誘拐’、そして‘セイ
レーン’にも足がとまった。ラファエロにも‘一角獣を抱く貴婦人’(150
5年 ボルゲーゼ美)があるがタイトルの割には一角獣が目立たない。
これに比べればモローの絵には3頭も描かれ、しかも美形で衣装やキラ
キラ輝く飾り物をつけている女性と戯れているのだからファンタジック
な世界に誘い込まれる。何度見てもふわっとする。

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2019.04.10

美術館に乾杯! ウフィツィ美 その二

Img_0001_20      ファブリアーノの‘東方三博士の礼拝’(1423年)

 

Img_0002_21      アンジェリコの‘聖母戴冠’(1435年)

 

Img_23      マザッチオの‘聖アンナと聖母子’(1424~25年)

 

Img_0003_18      ウッチェロの‘サン・ロマーノの戦い’(1456~60年)

初期ルネサンスに描かれた絵には画面全体に金の装飾が施されたものが多い。
その輝きが一際目立つのがファブリアーノ(1370~1427)の‘東方
三博士の礼拝’。

手前の三博士のなかで視線が一番向かう立ち姿の人物はモダンな香りのする
赤いソックスを履き黄金で埋め尽くされた衣装で身をつつんでいる。そして、
まわりは足の踏み場がないほど従者で一杯。そして、奥行きの背景にも長
い行列ができている。黄金の魔力は絶大でこの前にとどまる時間がついつい
長くなる。

サン・マルコ美で黄金の効果を使い荘厳なキリスト教の世界を表現した
アンジェリコ(1395~1455)の宗教画に数多く遭遇したが、ここに
ある‘聖母戴冠’も金箔をふんだんに塗り重ね聖母マリアが被昇天後の天上界
の輝きを荘厳に描いている。マリアの後ろから放射状にでる光は宇宙で星が
誕生するとき見られるジェットを連想させる。

フィレンツへ行くとマザッチオ(1401~1428)は済みマークがつけ
られるかもしれない。サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂では‘聖三位一体’、
サンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂に足を運ぶと写実性豊かに描かれた
‘聖ペテロの生涯’、そしてウフィツィには堂々とした‘聖アンナと聖母子’と
対面する。とにかくマザッチオの絵は一見の価値がある。

ウッチェロ(1397~1475)は異才の画家。遠近法を徹底的に研究
し、これを戦いの絵で表現した。‘サン・ロマーノの戦い’はフィレンツェ軍
がシエナ軍に勝利した1432年の戦いを記念して描かれたもの。垂直に
立ったり地面に落ちた長槍の配置、槍の傾き加減や短縮法の馬をみると確
かに遠近法の描き方になっており、奥行きのある画面を生み出している。

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2019.04.09

美術館に乾杯! ウフィツィ美 その一

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     ヴェッキオ宮殿の横にあるウフィツィ美

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     チマブーエの‘荘厳の聖母’(1285年)

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     ドゥッチオの‘荘厳の聖母’(1285年)

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     ジョットの‘荘厳の聖母’(1305~10年)

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     マルティーニの‘受胎告知’(1333年)

美術への関心が人並みという観光客でもパリへ行けばルーブル美に入館す
るのは大きな楽しみであり、フィレンツェへ出かければウフィツィ美の
ルネサンス絵画に心がときめく。この前ウフィツィへ行ったのは2010
年だが、そのときはすでに時間予約制になっていた。今は前よりもっと
混雑してそうだから旅行会社は予約の確保が大変かもしれない。

ルネサンス芸術が花開いたのはフィレンツェ、そのためウフィツィには
初期のルネサンス絵画からボッティチェリ、ダ・ヴィンチ、ラファエロと
いった盛期ルネサンスのビッグネームの名画がずらっと並んでおり、館内
をまわっている間はテンションが上がりっぱなし。じっくりみたら俄か
ルネサンス評論家になれることは請け合い。

最初の部屋でに立ち尽くしてみてしまうのはチマブーエ(1240~
1302)、ドゥッチオ(1255~1319)、ジョット(1267~
1337)によって同じテーマ‘荘厳の聖母’で描かれた大きな祭壇画。ジョ
ットの師匠チマブーエとシエナ派の祖とされるドゥッチオの絵は聖母の顔
の描き方がとても似ている。ともにゴシックの香りがまだ幾分残っており
硬い感じはいなめないが、きりっとしたまじめそうな表情はなかなかいい。

一方、ジョットの聖母となるとがらっと雰囲気が変わる。全体的に金色を
中心に明るい色彩になり存在感をぐんと増した聖母子が目に強烈に焼き
つく。まわりの天使たちも生き生きと描かれており革新的なルネサンス
絵画がまさに誕生したという感じ。この絵をみて天才ジョットをだいぶ感
じられるようになった。

ドゥッチオとともにシエナ派の代表画家となったマルティー二(1284
~1344)の‘受胎告知’に描かれた聖母マリアのみたときは西洋の女性と
いうよりはアジア系の女性という印象が強かった。そう思わせるのはあま
りにも目が細いから。おもしろいのは大天使ガブリエルから神の子の懐妊
を告げられたマリアのリアクション、なんだか嫌々受け入れたようにみ
える。

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2019.04.07

美術館に乾杯! ドゥオーモ付属美

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     ドゥオーモ付属美

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     ギベルティの‘天国の門’(1425~52年)

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     ‘アダムとイヴの物語’(部分 1425~52年)

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     ミケランジェロの‘ピエタ’(1547~55年)

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     ドナテッロの‘マグダラのマリア’(1450年代前半)

フィレンツェを象徴する建築物ドゥオーモ(大聖堂)の後ろにあるの
が付属の美術館。ジュネーブをクルマで出発しフィレツェへ出かけた
ときは2日滞在した。時間的に余裕があったので大聖堂を堪能した
あと、付属美術館にも足を運んだ。

こじんまりした展示室なのだが、展示してあるのはスゴイものが並んで
いる。200%KOされるのがギベルティ(1378~1455)が1人
で何年もかけて制作したサン・ジョヴァンニ洗礼堂の東側門扉、‘天国
の門’。洗礼堂にあるのはレプリカでここにあるのが本物。10枚の浮彫
りパネルからなり、左上の‘アダムとイヴ’から物語が下へと続いていく。

浮彫りは平らなブロンズ板から少し盛り上がったものというイメージが
できているが、この天国の門のひとつ々のパネルの立体感は尋常では
ない。厚みのある人物表現やこちらに飛び出してきそうな3Dのような
女性のポーズ、究極のリアルさを追及する高い技量にほとほと感心させ
られる。

もう一つの見どころがミケランジェロ(1475~1564)の未完の
‘ピエタ’、これはミケランジェロが70代のとき自分の墓のために彫刻
したもの。途中で大理石にひびが入ったので未完成のまま放置された。
キリストの体を支えるニコデモはミケランジェロの自刻像。

そして、ひと目見たら忘れることができないのがドナテッロ(1386
~1466)の‘マグダラのマリア’、ぱっとみると伸びた髪の長さが
半端でないので男性の立像かと思ってしまう。だが、これは改心した
マグダラのマリア。髪が足の膝の下まで垂れ下がっているのは長い期間
祈りを続けてきたことの証。これほどギョッとする彫刻像はほかにみた
ことがない。

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