写楽 幻の肉筆画 その二



浮世絵で一番夢中になるのは風景画と美人画。今回最も見たかったのは写楽の肉筆ではなく、チラシに載っている歌麿の絵。上の‘風流六玉川’と‘歌撰恋之部 深く忍恋’。7点ある歌麿のなかで、この2点がとびっきりすばらしい。
‘風流六玉川’は6枚続きのワイド画面。画像は右の2つで、山城と近江の玉川。山城では綺麗な着物を着た3人の女が川のなかに入っているが、ほかは画面手前に人物を配し、その後ろを玉川が一つの川として左右に折れ曲がりながら、右下に向かって流れていく構図になっている。
水流の描き方が実に巧みで、ゆったり流れるところと山城のように水面が揺れ複雑な流れになっているところを描き分けている。目が点になるのが女の白い足が水中で透けてみえるところ。そして、たくし上げる着物の裾の曲がる部分が水面に呼応して立体的なフォルムになっているところもサプライズ。歌麿はこういうところの描写が天才的に上手い!
大首絵美人画‘深く忍恋’は東博蔵(拙ブログ07/12/23)に比べると倍くらい摺りの状態がいい。ベストといわれるギメ美蔵と遜色ない摺りとお墨付きのものが目の前にあるのだから、これ以上の幸せはない。息を呑んで見た。
菊川英山の美人画もチラシで気になってしょうがなかった。真ん中は‘風流夕涼三美人’。これまで見た英山のなかでは一番かもしれない。左に描かれた立ち姿の女の着物の柄は中央、右の座っている女のものより格段に目を引く。うすピンクの地に映える斜めの観世水文がとても洒落た感じなので、女が引き立つ。
2年前、太田記念美でみたギメ美にある英山の絵でも心拍数があがったが、とにかく英山の描く女の肌や顔はロシアの女性のように白い。欧米のコレクターが英山を集めたくなる気持ちがよくわかる。隣にある‘松坂屋店前美人画’にもグッと惹きこまれた。
歌麿や英山のこうした6枚あるいは3枚続きのワイド画面に200%KOされたが、ほかにもいいのがあった。はじめてお目にかかった歌川豊国の‘新吉原桜之景色’、一度みたことのある‘やつし妹背山’と‘両国花火之図’。いずれも摺りのいい横長画だから見ごたえがある。
春信は下の‘見立菊慈童’、‘母と子と猫’、‘唐子と布袋’の3点。菊を背景にして、すっと立つ少女に見惚れていた。‘唐子と布袋’はユーモラスな絵。水浴びをする布袋は見たことがない。可笑しいのが桶のなかの水。どうして海面みたいに大きく波立っているの?
江戸東博は毎年、いい浮世絵展を開催してくれる。06年のボストン美肉筆浮世絵展、07年の北斎展、08年のボストン美蔵の名品展、そして今年のマノスコレクション。流石、北斎が生まれたところにある博物館である。来年もまたワクワクするような里帰り展を期待したい。
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