2020.11.28

美術館に乾杯! 平木浮世絵財団 その三

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     葛飾北斎の‘富嶽百景 登龍の不二’(1834年)

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     小川芋銭の‘反照’(1933年)

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     前田青邨の‘鯉’(1963年)

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     福田平八郎の‘鯉’(1954年)

人気の浮世絵師がいろいろいる中で斬新な構図でみる者の心を鷲づかみにす
るのは葛飾北斎(1760~1849)、歌川広重、歌川国芳の3人。その
先鞭をつけたのはやはり天才、北斎。これに広重も国芳も大きな影響をうけ
た。‘富嶽三十六景 神奈川沖浪裏’の構図の刺激があったからこそのちに
広重の‘名所江戸百景’の傑作の数々や国芳のワイドスクリーンを使って描い
た鯉や鯨の絵が生まれたといっても過言でない。

‘富嶽三十六景’の数年後に描かれた‘富嶽百景’のも強く印象に残る一枚がある。
不二を仰ぎ見る龍のポジションが絶妙に決まっている‘登龍の不二’。そして
龍のパワーと勢いを演出しているのが水玉模様を連想させるような雲。こん
な雲が富士山を囲む絵はみたことがない。みればみるほどおもしろい。

平木コレクションには明治以降に活躍した日本画家の作品もある。小川芋銭
(1868~1938)の‘反照’で描かれているのは川合玉堂がよくてがけ
た山々や農村の風景。でも、芋銭には浦上玉堂風の神秘的な空気な流れてい
る。手前にひとりの樵の姿がみえる。

前田青邨(1885~1977)の‘鯉’に魅了され続けている。水の表現に
たらし込みという琳派の描き方を使い泳ぎまわる鯉の群れがリズミカルに描
かれている。装飾性に富む鯉の絵というのは華やかな桜の表現以上に心を打つ。
これに対し福田平八郎(1892~1974)の二匹の鯉はデザイン的な要素
が強く、現代的な感覚のする花鳥画である。

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2020.11.27

美術館に乾杯! 平木浮世絵財団 その二

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         喜多川歌麿の‘庭中の涼み’(1788~90年)

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         歌川国芳の‘禽獣図会 獅子’(1839~41年)

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    伊藤若冲の‘花鳥版画 雪竹に錦鶏図’(1771年)

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    伊藤若冲の‘花鳥版画 薔薇に鸚哥図’(1771年)

浮世絵関連の図録が数多くあるので2年前から大整理をしており、8割方で
きあがった。いろんなところに分散している美人画や役者絵、風景画を絵師
ごとに図録に作品を積み重ねていくとダブりのないMy図録が完成する。
図録の数が一番多いのは喜多川歌麿(1753~1806)で5冊もある。

国内の浮世絵コレクションだけでなく海外の美術館から里帰りしたものなど
をずらっと集めると歌麿は一体全部で何枚描いたのか?というほどいろいろ
な美人画がでてくる。内外問わずどこの美術館もほかにはない歌麿があると
おおいに胸をはりたくなるだろう。平木コレクションの‘庭中の涼み’はほかで
はみないもの。鳥居清長にも女性に混じって男性が登場するが歌麿ほど男女
はくだけてない。だから、同じみるなら歌麿の方がおもしろい。

歌川国芳(1797~1861)は2週間前ようやく2回目の編集が終了し
た。全部で3冊。なにか大仕事をしたような感じ。こういう作業は意外に手
間取るもので何度もみているのに同じ絵あることに気がつかない。それは摺
りの状態が違い色が変わっているため。よくみると同じ絵じゃないか!とい
うのはたびたびでてくる。でも、ほかとは絵柄がちがうものはヴァリエーシ
ョンのひとつとして存在感を増していく。‘禽獣図会 獅子’は貴重な絵。
国芳はこんな獅子の子落しの絵を描いていたとは!

伊藤若冲(1716~1800)の‘花鳥版画’(6点)を全部みるのにだい
ぶ時間がかかった。絵の存在を知ってからみたくてしょうがなかったが、その
機会がなかなか訪れなかった。ららぽーと豊洲にUKIYO-e TOKYOができこれ
は運がむいてきたと思ったが、そうは問屋が卸さない。‘美術館はいい絵は
簡単にはみせてくれない’の法則がきいているのである、そうこうしてい
るうちに若冲展が連続で開催されたので思いの丈が叶えられ、‘雪竹に錦鶏図’
や‘薔薇に鸚哥図’が目の中に入った。みるたびに200%KOされている。

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2020.11.26

美術館に乾杯! 平木浮世絵財団 その一

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         鳥居清倍の‘初代市川團十郎の暫’(重文 1701年)

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         石川豊信の‘花下美人’(重文 1744~48年)

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         鈴木春信の‘座鋪八景 あんとうの夕照’(1766年)

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     鳥居清長の‘六郷の渡し’(1784年)

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  歌川広重の‘江戸近郊八景之内 芝浦晴嵐’(重文 1838年)

平木浮世絵財団が所蔵する浮世絵コレクションは数の多さと質の高さでつと
に知られている。2006~13年まで豊洲のららぽーと豊洲のなかで展示
されていたときはよくでかけたが、現在は美術館としての場所は存在しない。
もうひとつ、このコレクションと縁があったのは2009年渋谷にあった
たばこと塩の博物館で開かれた‘平木コレクション展’。主要作品がどっと公開
され目を楽しませてくれた。

鳥居清倍(1697~1722)の‘初代市川團十郎の暫’はあの蜀山人大田
南畝が所蔵していた名品で重文に指定されている。派手な‘暫’の演技は歌舞伎
の醍醐味、これぞ團十郎という感じ。石川豊信(1711~1785)の
‘花下美人’にも魅了される。豊信の描く女性や子どもは丸ぽちゃの顔でとても
愛嬌があるので親しみが沸く。満開の桜に和歌を書いた短冊を結ぶ姿に動き
があるのもちょっと浮き浮きさせる。

浮世絵美人画で一生付き合っていこうと思っている絵師のひとりが鈴木春信
(1725~1770)。‘座鋪八景 あんとうの夕照’は中国の瀟湘八景図の
見立て絵で丸行燈の灯りを夕照に変えている。描かれている二人の女性は遊女
と禿、左奥の紅葉と流水にも風情がある。春信のあと人気を集めた美人画絵師
鳥居清長(1752~1815)のワイドスクリーン‘六郷の渡し’も自慢のコレ
クション、2007年千葉市美で開催された大規模な鳥居清長展に出品された。
背景に富士山を入れたこの美人風景画が心をとらえて離さない。

歌川広重(1797~1858)の‘江戸八景之内 芝浦晴嵐’で目が点になっ
たのは海の波しぶきが小さな白い点々で表現されたところ。藍のグラデーショ
ンも上々で息を呑んでみた。これまでこのシリーズは見る機会はあったが、
これほど摺りがいいものではなかった。だから、重文指定というのが即合点が
いった。

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2020.11.25

美術館に乾杯! 東京富士美術館 その三

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     ターナーの‘嵐の近づく海景’(1804年)

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     クールベの‘水平線上のスコール’(1873年)

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         モネの‘海辺の船’(1881年)

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     カイユボットの‘トルーヴィルの別荘’(1882年)

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         マグリットの‘観念’(1966年)

印象派やポスト印象派の絵が日本の美術館にあってもそう驚くことはない。
モネは結構な数の美術館が所蔵しているし、マネ、ルノワールやセザンヌ
らはアーチゾン美(旧ブリジストン美)へ行けばみれるし、ゴッホやゴー
ギャンは損保ジャパン、大原へ足を運ぶと楽しめる。だが、それ以前の
作品となるともし美術館で出会うとちょっとびっくりする。

東京富士美にはターナー(1775~1851)が2点ある。若い頃描か
れた‘嵐の近づく海景’と脂がのりきった50代の‘ヘイヴーツリュイスから
出航するユトレヒトシティ64号’。ターナーらしい緊張感のある海景画が
ここでみれるというのは大原のエル・グレコの絵と同じようにヨーロッパ
で美術館巡りをしているような気分になる。

2008年、パリでクールベ(1819~1877)の大規模な回顧展に
遭遇したのは生涯の思い出。そこに数多く描いた波の絵が9点集結してい
た。このシリーズは大原にある作品で目が慣れていたが、‘水平線上のスコ
ール’はこれらと波のパワーに遜色なく砂浜にドドーンと打ち寄せている。

モネ(1840~1926)の‘海辺の船’はなかなかいい絵だが、国内で
開かれるモネ展にはあまりでてこない。また、カイユボット(1848~
1894)の‘トルーヴィルの別荘’は2013年ブリジストン美であった
回顧展ではじめてお目にかかった。この展覧会でカイユボットの画業全体
がわかりこの画家の才能に惚れ直したが、この絵もそれに一役買っている。

予想外だったのがマグリット(1898~1967)の‘観念’。スーツ姿の
男性の頭が林檎に変わっている。マグリットの作品にちょくちょく登場す
る林檎が頭に変容するところが意表を突かれる。でも、のけぞるほどの
怪奇さはないからニヤニヤしてみてしまう。これぞマグリットマジック!

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2020.11.24

美術館に乾杯! 東京富士美術館 その二

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     川合玉堂の‘朝雪’(1952年)

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     上村松園の‘菊寿’(1939年)

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     鏑木清方の‘春宵’(1935年)

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       福田平八郎の‘春光’(1942年)

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     堂本印象の‘パリの小路’(1953年)

川合玉堂(1873~1957)には水車を描いた作品が何点かあり、‘朝雪’
は冬の水車の光景。今、地方の農村や山里を旅して実際に使われている水車
に遭遇することがあるだろうか。以前広島にいたとき岡山県の北部で観光名
所となっている大きな水車に出会ったが、生活用のものだとかなり山奥まで
行かないと目にすることはできない?それとも、もう残っていない?

富士美は上村松園(1875~1949)と鏑木清方(1878~1972)
のとてもいい美人画を所蔵していることで知られている。‘菊寿’は松園展の欠
かせないピースで図録に何度も登場する。ここ数年足が遠ざかっている鎌倉の
鏑木清方記念美でミニ清方展が10数年前、定期的に開催され、ほかの美術館
がもっている作品が集まった。‘春宵’はそのとき見惚れた絵。富士美蔵のもの
は数回に分けて7点くらい展示された。これでこの美術館は赤丸つきになった。

福田平八郎(1892~1974)のカラフルな花鳥画‘春光’は記憶をたどれ
ば、どこかの美術館で開かれた‘富士美蔵日本画名品展’でみたのかもしれない。
図録を整理し平八郎展のものに集約して張り付けたのだから、強く印象づけら
れた作品であることはまちがいない。2回体験した回顧展に出品されなかった
ので余計に思い入れがある。

堂本印象(1891~1975)の‘パリの小路’は日本画家の作品とは思えな
い絵。ここには藤田嗣治とも佐伯祐三ともちがうパリの街並みがある。おも
しろいことに甥っ子の堂本尚郎(1928~2013)も1951年に‘蔦のあ
る白い家’という似たような風景画を描いている。

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2020.11.23

美術館に乾杯! 東京富士美術館 その一

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         池大雅の‘渓上高隠図’(19世紀)

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    鈴木其一の‘萩月図襖’(19世紀)

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         橋本雅邦の‘三保松原図’(1902年)

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     横山大観の‘聳砂丘’(1956年)

八王子にある東京富士美へは2度出かけた。国道16号線をどんどん中央
自動車にむかって北上したが、2時間くらいかかったような記憶がある。
でも、今は東名の横浜町田ICのところの渋滞が解消されたから30分くら
い早く着くかもしれない。思い出深い展覧会は2013年のちょうど今頃
みた‘光の賛歌 印象派展’。目玉の絵画、ルノワールの‘ブージヴァルの
ダンス’(ボストン美)の効果もあり大賑わいだった。

ここの所蔵作品はモネやターナーなどの西洋絵画が多いという印象がある
が、どっこい日本画もいいのが揃っている。江戸絵画では池大雅
(1723~1776)が妻の玉瀾の絵と対になった‘渓上高隠図’がある。
どこかであった企画展に展示されたときは富士美は大雅ももっているのか、
と感心した。

琳派が好きな人なら鈴木其一(1796~1858)の‘萩月図襖’と‘風神
雷神図’にはすぐ反応するだろう。富士美の存在を知ったのはかなり前行わ
れた琳派展で琴線にふれる萩と月の絵をみたとき。隣りの方もこの絵がお
気に入りである。

明治以降に描かれた日本画のコレクションも充実している。橋本雅邦
(1835~1908)の‘三保松原図’はかなり横に傾いている松の木々の
お陰で雄大な富士の安定感がより強く感じられる。これに対し、横山大観
(1868~1958)の‘聳砂丘’は冠雪の富士、濃い墨で表現された松原、
手前のうねる海原が夫々存在感があり響き合っている。

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2020.11.22

美術館に乾杯! 横山大観記念館

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    横山大観の‘霊峰飛鶴’(1953年)

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    横山大観の‘四時山水’(部分 1947年)

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    冨田渓仙の‘祗園夜桜’(1921年)

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    菱田春草の‘秋の夜美人’(1902年)

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    小川芋銭の‘蓬莱山’(1928年)

ヨーロッパやアメリカにある邸宅美術館へでかけると、例えばNYのフリッ
ク美では大きな美術館とはちがうこじんまりした展示室でくつろいだ気分
で名画や調度品を楽しめる。日本でも画家の住んでいた屋敷が○○記念館
となって公開されているところへいくと同じことがおこる。上野の不忍池
のそばにある横山大観記念館もそんな美術館。

これまで3回くらい足を運んだことがあるが、ここで忘れられない作品が
‘霊峰飛鶴’。横山大観(1868~1958)が数多く描いた富士山のなか
では一番気に入っている。富士を背景に鶴の群れが飛んでいくという着想
は奇才長澤芦雪にもみられるが、大観の鶴の飛ばせ方はじつにオーソドック
スでまさに吉祥画。そして、大観が80歳になったのを機に描いた絵巻
‘四時山水’に遭遇したのも大きな収穫。紅葉がきれいな今この絵をみると
心が相当ハイになるにちがいない。

冨田渓仙(1879~1936)の‘祗園夜桜’は大観の傑作‘夜桜’につなが
る作品。現在はこういう篝火をたいて夜桜をみるということはないので、
この幻想的な桜イベントの現場にタイムスリップしたくなる。夜つながり
で菱田春草(1874~1911)の‘秋の夜美人’にも思わず足がとまる。

同じ茨城県出身の小川芋銭(1868~1938)は大観と同い年。大観
は独学で日本画を学んだ芋銭を高く評価しており、1917年芋銭は日本
美術院の同人になった。記念館にも‘蓬莱山’などが飾ってある。

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2020.11.21

美術館に乾杯! 泉屋博古館分館

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     橋本雅邦の‘深山猛虎図’(1885~89年)

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    モネの‘モンソー公園’(1876年)

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    藤島武二の‘幸ある朝’(1908年)

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    板谷波山の‘彩磁更紗花鳥文花瓶’(1919年)

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    宮川香山の‘青華紅彩桃樹文耳付花瓶’(20世紀)

行きつけの美術館へ出かけるのは毎日の散歩と同じで毎日を楽しく生きてい
くためのルーチンワークのようなもの。だから、広い東京を西へ東へと動い
ても体が疲れるということはない。でも、ときどき美術館に到着するまで
傾斜のある坂道を歩いたりエスカレーターに乗って深い谷底から上がってく
るようなこともある。六本木にある泉屋博古館分館はそれを経験する美術館
のひとつ。

泉屋博古館を訪問するときは近くにある大倉集古館と連チャンすることがよ
くあった。分館ができたのは2002年。何度か通っているうちに住友の
コレクションの特徴がつかめてきたが、絵画で嬉しいのが日本画の橋本雅邦
(1835~1908)と狩野芳崖がみれること。作品の数は雅邦の方が
多く(5点くらい)、‘深山猛虎図’や‘春秋山水’など見ごたえのある作品が目
を楽しませてくれる。

ここにはモネ(1840~1926)の若い頃の作品が2点ある。回顧展に
お呼びがかかる‘モンソー公園’と‘サン=シメオン農場の道’。モネとはね
んごろなつきあいをしているから、国内の美術館にはどの絵があるかはだい
たいインプットされている。モネに関連した展覧会がアーチゾン美である。
タイトルが‘琳派と印象派’とくれば感動二段重ねは間違いないが、コロナ感染
がまた多くなっているので行けそうにない。
藤島武二(1867~1943)の図録の大整理を2ヶ月前行った。そのな
かに‘幸ある朝’もしっかり入っている。

板谷波山のやきものも住友コレクションのお宝のひとつ。波山をたくさん所蔵
しているのは出光、泉屋博古、新潟の敦井美、MOA,そして地元の茨城県
陶芸美。分館でも2009年に回顧展が開催された。‘彩磁更紗花鳥文花瓶’は
お気に入りの一つ。また、初代宮川香山(1842~1916)についても
‘青華紅彩桃樹文耳付花瓶’など優品が揃っている。流石である。

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2020.11.20

美術館に乾杯! 松岡美術館 その五

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     ‘青花龍唐草文天球瓶’(明時代・15世紀)

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   ‘青花胭脂紅双鳳文扁壺’(清時代・18世紀)

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       ‘色絵唐人図大壺’(江戸・17世紀後半)

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     ‘色絵芭蕉柳図輪花鉢’(江戸・17世紀後半)

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        エミリオ・グレコの‘腰かける女’(1969年)

松岡美は絵画のほかにもうひとつ大きな楽しみがある。それは私立の美術館
ではトップクラスの質を誇る東洋陶磁のコレクション。日本、中国、朝鮮、
ベトナムでやかれた名品がずらっと揃っている。都内ではここと渋谷の戸栗
美へよく通ったおかげでやきも鑑賞の幅が広がった。

たくさんある中国磁器のなかで大収穫は明時代初期に景徳鎮‘窯でつくられた
‘青花龍唐草文天球瓶’。台北の故宮博物館でこういう見事な天球瓶をみた覚え
があるが、日本では松岡と畠山でしかお目にかかったことがない。だから、
エポック的な体験だった。これは名古屋にいるとき遭遇した‘東洋陶器名品展’
(1994年 愛知県陶磁資料館)にも出品された。

清時代・乾隆帝のときの‘青花胭脂紅鳳文扁壺’もみててうっとりする一品。
リズミカルな花模様の地に紅で色づけられた2羽の鳳凰が浮かび上がっている。
こういうのが登場すると故宮にいるような気分になってくる。横に飾ってある
皿に桃をいくつも描いた粉彩にも魅了される。

日本のやきもので印象深いのは柿右衛門様式の‘色絵唐人物図大壺’と口径45
㎝もある古九谷様式の‘色絵芭蕉柳図輪花鉢’。古九谷は5,6点あったような
気がする。青や緑、黄色の圧が強い古九谷がみれる美術館は限られているから、
これと対面するだけでも出かける価値がある。

ここは1階のホールに西洋の近代彫刻作品が展示されている。ムーア、イタリ
アのマリーニ、そしてエミリオ・グレコ(1913~1995)。グレコは
‘腰かける女’、‘水浴の女’、‘エイコ’と3点もある。箱根にでかけなくてもグレコ
に会えるのはありがたい。

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2020.11.19

美術館に乾杯! 松岡美術館 その四

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      ミレイの‘聖テレジアの少女時代’(1893年)

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    藤田嗣治の‘二人の子どもと鳥かご’(1918年)

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        キスリングの‘シルヴィー嬢’(1927年)

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  シニャックの‘オレンジを積んだ船、マルセイユ’(1923年)

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     クロスの‘遊ぶ母と子’(1898年)

日本で数点したみたことのないラファエロ前派の作品が松岡美にある。
ミレイ(1829~1896)が晩年に描いた‘聖テレジアの少女時代’。小品
だがお弟と手をつないで歩く少女の凛々しい姿についみとれてしまう。西洋
美の‘あひるの子’とともにここはミレイを楽しめる貴重な美術館である。

日本が世界に誇る藤田嗣治(1886~1968)が‘二人の子どもと
鳥かご’と‘聖誕 於巴里’の2点、そして同じエコール・ド・パリのキスリン
グ(1891~1953)も‘シルヴィー嬢’と‘ブルターニュの女’、‘グレシー
城の庭園’を所蔵しているのも美術館の自慢かもしれない。画家の回顧展に
出品されるのをみるとコレクターの思い入れがよく伝わってくる。

日本は印象派が好きな人がたくさんいてモネを所蔵する美術館が多くあるが、
ここもその例にもれず‘サン=タドレスの断崖’をもっている。でも、展示室で
モネは分が悪く目を見張らせるのは点描で描かれた作品。スーラの相棒の
シニャック(1863~1935)の‘オレンジを積んだ船、マルセイユ’を
ちょっと離れてみると明るい色調で表現された港の光景に魅了される。

横に飾られているクロス(1856~1910)の‘遊ぶ母と子’にも癒され
る。同じように人物を点描で描いたスーラの場合、どこか感情移入がしずら
いところがあるが、この母と子は200%微笑ましく感じられる。二人を
大きく描き背景の奥行きを遠くまでとる構図がとても気に入っている。

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